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読書日記167【Winny 天才プログラマー金子勇との7年半】

 壇俊光さんの作品。ノンフィクションであり、職業は弁護士として働いている。「金子勇」という天才プログラマーが「Winny」というファイル共有ソフトを匿名でしかも無料で作った。P2Pファイル共有ソフトというiTunes や YouTube もない時代で、その意味さえも知らない時代に「2ちゃんねる」で匿名で開発宣言をする。

 当時流行っていたWinMXというソフトから1文字ずらしてWinnyとなったらしい。人の持っているソフトや音楽を自動でダウンロードできるとして、専用のパソコンを作ったりする人が、その当時大量にいた。「2ちゃんねる」では「47氏」と名乗っていた「金子勇」が京都県警に逮捕される。その前に京都県警の警察官が「Winny」を警察のパソコンに入れてウイルスに感染して情報漏洩した事件の後の逮捕だったらしい。容疑は「著作権法違反幇助」だった。

 YouTubeとかでも違法ダウンロードは溢れている。しかし、海外の会社だからだろうか?捕まる気配はまるっきりない。そういうコンテンツが出る前の実験的段階で、捕まってしまったという感じだったらしい。著者も書いてあるけれど、起訴はないだろうというのが最初の感想だったらしい。

 しかし、ここから、作者である壇俊光さんが弁護に入り、7年半という長い期間、裁判で争うことになる。本の内容は裁判の記録と「金子勇」の印象だった。その当時、世界の最先端をいっていた天才プログラマーとはと、ネットの知識のある著者がその印象やこれからのネットの未来のことなど、色々な話をしたことなども書かれている。

 後、衝撃なのはこの裁判が終わった後、半年後に金子勇さんは亡くなってしまう。裁判中はプログラムをできないので、金子勇さんの天才的な頭脳から生み出されたあろう世界はなくなってしまう。

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 そんなことをしている間に、コンテンツ配信の世界は、iTunes YouTube に席巻された。P2Pの技術開発は日本から失われた。日本が海外のサービスを模倣するだけになってずいぶん経つような気がする。
 結局、裁判に7年半を費やした金子に残されたのは、プログラマーとしてのほんの小さな名誉だけであった。

 日本は20年前ぐらいはITの世界では本当に最先端にいた。プログラムの天才たちとかパソコンなどのハードウェアでも本当に凄かった。なんでこんな風になっていったのか?それを覗ける意味でも面白い内容だった。

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