見出し画像

読書日記197 【絶滅危惧職、講談師を生きる】

 講談師の神田伯山さんの本。まだ、真打ちになる前の松之丞さんの時代の本で、語りを杉江松恋さんが書くという感じで書かれている。講談師という全国に80人しかいない絶滅しかけている「語りべ」で人気講談師として活躍する松之丞さんの半生から話ははじまっていく。

 小さいときに父親をなくし、そして父親の先祖は今でいう柔術家で南米で生活をしていたという。(父親は柔道家)商社勤めをして忙しい父親が小さい頃にいなくなってしまったために、少し性格がひねくれたと語っている。

 神田伯山さんは毒舌でも知られている。そのおかげであまり友達がいないというのをラジオでネタでやっている。TBSラジオクラウドで聞いているんだけど、面白い。ただ人の悪口が多く、伊集院光さんはそれで完全に神田伯山さんを嫌っている(笑)

 講談に自信があるのはわかるし、生で聞いたことがあったりするのだけど、正直にいえば好き嫌いがはっきりとわかれると思う。落語もそうだけど滑舌が悪くて何言ってるかわからない時とかあるし、上手い人でも気分がのらないと、だだスベリしていることなんてしょっちゅうな世界なので、神田伯山さんがラジオでいうほどにというのはある。今はYouTubeに講談をご自分でアップしているので聞いてみると面白いかもしれない。

 若い頃の修行時代へと語りは続いていく。中高一貫の男子校へと進み、そして浪人をして大学へと進む。落語を聞き始めて、落語が好きな同級性ができる。六代目の三遊亭圓生に惚れこみ、そして立川談志に夢中になる。音源はYouTubeにあるので聞いてほしいけど、晩年の圓生は聞いていてももたもたしている(笑)。若い時代の録音がないらしく僕らは上手いとされるこの落語を聞いていた。

 古今亭 志ん朝という天才がいた。はきはきとして滑舌がよくて子供である僕らが聞いてもわかる落語をしていた。僕は「芝浜」という落語は談志や5代目圓楽より上手いと思っている(話が脱線しました)志ん朝の落語を聞いていると正直うまく聞き取れなくて、「ほんとうに名人?」なんて失礼なことを思ったこともあった。時代的に生前の圓生は聞いている世代ではないから音源で聞いたと書いてあるけど、よく良さがわかったなと感心する。大学も落研がなくひたすらに個人で落語を聞いていたというから落語愛は本物だ。そうしているうちに、談志が講談が好きということを知る。

画像1

 そして、談志を尊敬して、落語家になるかとおもいきや「講談師」の道へと進む。大学時代に寄席に通って生の落語を聞きまくる。そのなかで講談を知って深みにはまっていく。大学をでているために落語だと他の弟子より出遅れるというのもあったと、同級生で落語仲間の植松さんは取材で語っている。芸人ってしたたかでなくてもいけないから、目のつけたかもよかったのかもしれない。

 そして特に好きでもない講談師の神田松鯉の門をたたく。何も習ったことがないというのが神田松鯉の条件だったというのは驚く。作法を習っていたら弟子入りは難しかったらしい。そして松之丞という名前へをもらう。そこらへんからは若い方なので知っている人も多いと思うし、「今一番チケットのとれない講談師」としても有名だし、ラジオのリスナーも多い。寄席というちいさな囲いの中で格闘する落語家の話は多いし、漫画でも『昭和元禄落語心中』という有名な漫画がある。それに比べて確かに講談師の話ってすくない。

 ただ、つい最近には『ひらばのひと』という講談師の漫画も始まっているし、なんなら伯山さんが監修もしているらしい。講談師という明治や大正の芸事とか、昭和40年ぐらいのレトロさを味わいたい人は、面白いかもしれない。この本もおもしろく読ませてもらった。


 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?