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夜はカーテンを開けて眠る。

なんとなく、月を眺めながら床に着いた。

柔らかい明かりが型板ガラスの模様をなぞる。静けさが地表を覆っている夜だ。初夏だというのに、カエルの声も聞こえない。少し欠けた丸い月が前を通る雲に遮られて闇が戻って来た。退屈な猫が鈴を鳴らして廊下を走っている。雲が退いて月明かりが部屋に差し込んだ。
明るくて暗い夜は水底に住んでいるようで心地がいい。生まれ変わったら、渓流で泳ぐ魚になりたい。人で生きるのにはまだ修行が足りなかったようだから。

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