日本BLドラマ「インディゴの気分」第6話を本気で見た

さて、インディゴ気分もついに最終話までやってまいりました。
6話って早いですよね。6回しか放送されないってことですから。……なんか急に当たり前のことを改めて言って恥ずかしくなってきたので本編にいきましょう。

副題は「存在することの彼方へ」。

蒲生田先生の葬儀はひっそりと行われている。蒲生田先生の親族は遠方に住む妹のみだったので、ほとんど木島が執り行っていた。
葬儀に訪れた女性二人が「財産目当てなんでしょ?」「急に弟子とか言って世話しだしたのよ」と木島の噂をしているところに城戸が居合わせたりして、なんとも言えない感じ。
財産目当てだと噂されていたものの、蒲生田先生が遺したものはそう多くはなく借金が残っていて家と土地は売却する予定だったり、著作も離婚した元妻のものになる。
遺言で木島に遺されたものはこれから出版予定だった遺作の権利だけという。

先生の遺影の前で向き合う二人。遺作を見て城戸は「正直、もう完成は無理だと思ってた。よくあの状況で仕上げたよ。さすが先生だ」
木島が重い口を開き「……無理だったんだ。無理だったんだよ、先生は完成させられなかった。8割方先生の遺稿だけど、僕が加筆して完成させた。もちろん先生の許可をもらったうえで、だよ」
衝撃の事実に驚く城戸。
木島は続けて「公表はしない方がいいと思う。僕も一生誰にも言わないから。さ、それを持って君はどこへでも好きなところへ行けよ。先生だけじゃなく、君のために仕上げたんだから」
いや、もうやばい。早くもやばいです。
君のために仕上げた……この理由を考えるだけで1ヶ月は持ちます。
ここで立ち上がって外をみる木島は、もうある意味悟りを開いたというかなんというか。
木島の背中に向かって城戸が「木島、あのな」と声をかけると「何?」とちょっと堅い声色で答える。
城戸「俺、会社やめない。続けることにした」「え?」「結婚話もパア。もともとおかしな話だったんだ。どうせうまく行かなかった気がする。……これでよかったんだ」

5話で城戸は転職を断ったわけなんですけど、なんかこう、まず木島は城戸に救われて、蒲生田先生に出会った木島、また木島に出会った蒲生田先生も最後までお互いを大切に思うまでになり、城戸はそんな木島と先生によって生き方を変えられていくという。
やっぱり、人生の岐路に立ったとき、自分が思い描いていた生き方を大きく変えるのってすっごく怖いことだと思うんですよ。それでも、無視できないくらい大きな存在になっていたっていうのが超グッとくるというか。

城戸の話を聞いた木島は「そうなのか。……それじゃあ、君が今後も担当なんだね」
「……それだけか」「それだけってなんだよ。君は僕といると苦しいんだろ。前にそう言ってたじゃないか」
あ~~~~~多分だけど、ここの時点ですでにバレてんのよ~~~~城戸の気持ちがさ~~~~!!!
城戸が木島、と名前を呼び言葉をつづけようとすると「君って実は、すごくまともなやつなんだよなあ。だから僕みたいに好き勝手生きてる阿呆を見ると、時々羨ましく見えてるのかもしれないけど……まともってつまり、周りの人間に優しいってことさ。君のそういうとこ、僕は、好きだよ」
……あ、死。死んだ。そういうところなのよ……もう、城戸が悪いとか木島が悪いとかそういうんじゃない……お互いがお互いに……。
そして城戸が木島を押し倒す。
「ごちゃごちゃうるせえんだよ!分かった風なこと言いやがって!俺は、お前と……」

そこで木島はネクタイに手をかけて「喪服ってジャンルあるよなぁ……確かにムラムラするかも」
恐ろし……恐ろしいよ……色気の化身の本気……城戸が「お前といると自分が嫌になる」って言ってましたように、城戸の中にある「嫌な自分」の部分を引きずりだしてやろうとするような感じ……。
この男、頭が回る分だけ性格の悪さが出ている(褒めの極み)。

「そういや、あの日も葬式帰りだったなあ……」と言いながらネクタイを引っ張る。
「君が、僕を拾ってくれた日だよ」という、嫌な自分を引きずり出された挙句、断崖絶壁に突き落としにくる一言。城戸はそのまま木島にキスをする。
そこから行為に及び、城戸が「お前、開発しすぎだろ……」とか言っちゃったりする。
マジ城戸の感情を考えたらもうめちゃくちゃでしょ……一見、城戸が木島をめちゃくちゃにしてはいますけども、これはめちゃくちゃにされてる側では……あと城戸の腕に手を回す木島の「生きて帰れると思うなよ」みたいな情念がマジ……。
「(真新しい遺影の前で木島を犯すのはヤバいほど興奮した。弔いがてら俺と一発ハメろというのは、あの悪趣味な爺さんの最後のリクエストだったらしい)」

まあ案の定、城戸の気持ちは蒲生田先生にも透けて見えていたわけでした。
畳の上で裸のまま寝ている二人。木島が城戸にすり寄るんですけど、この手とかが超ヤバイ。なんならあからさまな行為のシーンなんかより全然ヤバイと思う。
そして城戸が気付いて目を開ける……。

書店に並ぶ蒲生田先生の遺作。なんかポップがシンプルが故にやばさ醸し出してるし、買っていく男性もまた妙な説得力を持たせてて笑った。
「(先生の遺作は病床で書かれたとは思えない筆致が各方面から絶賛され、話題作となった。木島は結局、先生から貰った鬼島蓮二郎という名前で再デビューした。デビュー作の評判は上々。他社からの依頼も受け、名前の通り鬼のように仕事をこなしていった)」
ここで煙草を片手に書いてく木島にとってもクリエイティブを感じました。なんかあの……地味さの上にあるクリエイティブっていうか……課題の提出期限前の感じを思い出す……。
「(俺はというと……)」
木島からの着信を切って編集部を出る城戸。「(木島との微妙な関係はありつつも、)」
部屋では電話に出ない城戸に、木島「なんだよ、クソ……!」と苦しみ、もがく姿があった……つらい……。
「(今思えば、木島の作家としてのピークはこのあたりだった気がする)」

場面は変わって、晴れた日の公園でベンチに座り、あくびをしている城戸。
「(結局、俺は何もできなかったのだけど)」
城戸の元に木島から「久しぶり。今日、東京にいるよ。よかったら飲まない?」というメールが届く。これでバッチリ一話冒頭につながった。
パパ~と駆け寄ってくる女児ににっこにこで抱き上げる。そして奥で手を振るママ……。
「(適当に誘われて行った合コンで出会った彼女と付き合って1年で結婚した。今は穏やかな生活を送っている)」

いやあ……これ……言ってしまえば城戸に木島が裏切られた結末なんだけど、そんな単純な話ってことでもない……。
バーにいる二人。木島が「娘は元気?名前なんだっけ」「あやかだよ。何回言ったら覚えんだよ」「あんまり覚える気ないから」「ふふ、何だよそれ」
ここのやり取り、別に木島が無理して言ってるわけじゃないけどまだかつての微妙な蟠りを残すような感じして震えた。
城戸「お前はいいよなぁ」「何が」「久住くん、高給取りの広告マンだろ?大人しく養ってもらえば」
木島「そういう訳にはいかないさ。いつも帰りは遅いし、よく仕事の事で悩んでるみたいだし。お荷物にならないように僕も仕事を頑張らないとね。僕だって彼を支えてやりたいんだ」

……これは、城戸が木島にできなかったこと。結局木島を拾い上げるだけで、木島を支えるところまではたどり着けなかった。それをまざまざと見せつけられた瞬間だった。

そして帰りのタクシーの中。
木島「ちょっと飲みすぎちゃったかなあ……」「大丈夫かよ」
ここから一話の冒頭をもう一度って感じで、これまでの二人の軌跡をたどった後に見ると味わい深過ぎて胸焼けしそう。あの木島の「ごめん」にどういう意味があったのかが分かって白目剥きそうになったよね。
最終的にめちゃくちゃに狂わされたのは城戸。

タクシーを降りた木島が城戸に「城戸くん、またね」と言って、目を見開く城戸。
そして「ま・た・ね」と言い直す木島!!!!!!!ああ!!!!!蘇る「ここから生きて帰れると思うなよ」感!!!!!
城戸「何かあったら、いつでも連絡しろよ」「うん」「無理はするなよ。体に気をつけて……元気で、また」「うん」
ここの城戸が、あの時に支えてあげられなかった罪滅ぼしをしているようでなんとも言えなかった。それと同時に、あの時はこんな言葉すらかけてやれなかったんだけど、今ならできる……みたいな未練がましいものもある。

運転手が出発しますね、というと城戸は「ちょっと待って」と言ってタクシーを降りる。そして、部屋に入っていく木島を見上げるわけ……。
ここで木島がちょっと髪の毛を整えてからアパートのインターホンを押すところ!!!!健気の化身出してきたんですけど!!!いや可愛さがすごくない??
マジもったいないことしたよなあ城戸……離れてみて、人のものになって初めて気付いちゃう愚かな城戸……それも木島から離れるのも、木島が人のもの(一度目は蒲生田先生)になるのも二度目だかんね……。

インターホンを押して「はあい」からの久住くん……と思ったらドアあけっぱであついハグしたのでびっくりしちゃった。……いやだから!!!!あなたたちは!!!!とりあえず何をするにしてもドアと窓は閉めようって言ってるじゃん!!!!!?ねえ!?!!
「会いたかったぁ」「僕も」
そんな二人を見た城戸の何とも言えない顔よ。逃がした魚は大きいってこのことだよマジで……。
「寒いんで入りましょ」「うん」
にっこにこの久住くんが招き入れてやっと扉を閉める。
全てを若さで超えた久住くんと、「まとも」が邪魔をしてあと一歩が超えられなかった城戸。ちなみに木島はどちらの世界も行き来しようと思えば出来てしまうと思います。
「(俺の心のどこかに、小さな炎が燻っているのだ。あの頃、あの日々に燃やしつくせなかったから。多分その炎は一生消えないだろう)」
~木島に狂わされた男たちは、誰一人として生きて帰ることはないのだった~
という最終話でした。

いやエンドロールがエモすぎ……と思って油断してたら、久住くんとのアフターストーリー。
久住「城戸さん、どうでした?」「うん、変わらず」「唯一の友達ですもんね」
久住くん分かりやすい釘の差し方してきて思わずにっこりしてしまいました。
若いっていいよね。
そんな久住くんを知ってか知らずか木島「城戸?城戸は友達っていうか……まあ、そうだね。あいつくらいかも」
何もなかったくせに……とは言い切れないけど、思わせぶる木島にたいして素直に「今、絶対なんか思い出してた。あやしい……」「ふふふ」「何ですか」
嬉しそうに笑って立ち上がり「腐れ縁ってやつだよね」と言いながら煙草を取り出す。
「誤魔化した……」と拗ねる久住くんにめっちゃ笑う木島。
さ~~~て、これはどっちの笑みなんでしょうか。久住くんに嫉妬されて嬉しいの笑みなのか、あの動揺しまくってた城戸の様子を思い出しての笑みなのか……はあ、どっちもかな……。
不服そうな久住くん、思わず木島を後ろからハグ。
「どうしたの?」「先生……やっぱり、一緒に住みませんか」

これは正解。なんというか、離れ離れになっちゃいけない人っていますよね。
まさに木島のようにどっちの世界にも行き来できるような危うさと、気を許した相手に向ける純粋な健気さを持ってる人なんですけど。
しかしまぁ、君ってやつはいつでも木島的正解を選んでいくよな……いつも間違いを選んでいた城戸とは違ってさ……正義(若さ)は必ず勝つのかな……。
久住「俺にとって先生は特別な人だから。これまでも、これからもずっと」
木島「言葉ってすごいね。分かってなかったな、作家のくせに」
いや~~お見事。ありがとうございました。

城戸に圧倒的に足りなかった「言葉」を、惜しげもなく木島に注いでいく久住くん。
そしてキス……ということで、最終的に久住くんと木島のハッピーエンド。
どうですか?この、最後の最後で天国と地獄みたいな結末を見せてくるみたいなやつ。私個人としては爽快でした。

急に今更な話になるんですけど、このストーリー展開、果たしてBLである必要があるか?というのをよく考えたりします。
今回のインディゴの気分を見ていると、男と男じゃなきゃ見えてこない「葛藤」がこのドラマの核としてしっかりできている。男のプライド、男の義理、男の中での「譲れない部分」をすごく強く描き出してると思います。
城戸が彼女との結婚や安定した生活と天秤にかけるあたりなんか特に絶妙でした。
男同士なのに…というところから、むしろ男同士だからこそ揺らぐみたいな。
よって、このストーリーはBLである必要性がある。そして見れば見るほど無駄がないし、作り手の自己満足じゃね?って思うような部分がマジでない。
あ~~~~~面白かった!!原作も是非。

この物語の面白いところって、登場人物の視点をずらすことで見え方がめちゃくちゃ変わるということかなと思うんですよね。
マジでどこをとっても「対極」っていう奇跡。城戸と木島、城戸と蒲生田先生、蒲生田先生と木島、そして久住くんと城戸、久住くんと木島。どの組み合わせも正反対の人間っていう。
私が思うに男性は城戸に感情移入しやすくて、女性は木島に感情移入しやすいのかなと思います。なんとなく。
かくいう私は女性ですが、どうやら圧倒的な男性脳(根拠:指の長さとネット診断)らしいんで、ちょいちょい城戸の感情を読む方にいきがちだったな……。
視点を変えて何度でも見返したくなる良作ドラマでございました。
あーありがとうフジテレビ!!!!!どうか令和もこのまま攻めの姿勢崩さずに!!!!ありがとう!!!!

そして、何と言ってもここまでお付き合いいただきありがとうございました……。

今回ブログからこのnoteに引っ張ってきた理由は「映画化おめでとう!!」という祝いの気持ちと「3部作ならポルノグラファーから復習しなきゃでしょ!!」という祭りの気持ちからです。本当これはすごいことです。
当時はドラマが円盤化されただけでもすごうれしくて、まさか映画になるなんて思いもしませんでした。日本のみならず、アジアを中心に各国でもファンがいて愛されていて、観た人の心に刺さる作品だったなあと今回再確認したところであります。

ただ作品を観た時に考えたことや感じたことをノリと勢いの文章でアウトプットしているだけでありながら、作品のファンの方々よりたくさんのあたたかいコメントやメッセージをいただきまして大変恐縮です。感謝。
しかも今回ものすごいことになりまして、俳優ご本人様からリアクションをいただき「いやもう……これじゃどっちが祝われてんだか分からないんですけど……」みたいな状態になって死にそうでした。
本当もう私このまま死ぬのか?くらい嬉しかったんですが、特に私はどう考えても木島の顔の可愛さについて熱心にやりすぎてるので、すごい数々の無礼に申し訳なさ……竹財輝之助様の寛大な心に深く感謝いたします……。

映画も期待を裏切らない。これは超楽しみ。
ちなみに映画の原作はこちら。

これまで作品の中にある要素をどうすれば全て拾えるんだろうかと思って、あくまでも自分用にと書き始めたものですが、作品をより楽しんでいただけるためのものとなれば、これほど嬉しいことはありません。
観た人の心を動かす素敵な作品がたくさん生まれていくことを祈りつつ、こういうご時世だからこそエンタメの持つ力がもっと評価されるといいなと思っているオタクでした。
改めてお付き合いいただきありがとうございました!

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