ハイロイン(上瘾)第14話を本気で見た

さて、外出自粛の日々を送りながら「これから二週間」と「不要不急」という具体的なんだか曖昧なんだかよく分からない言葉に惑わされてまいりました。まあ私の性格は家の中にいることは全く苦にならず、何なら普段よりもかなり生き生きとしているわけなんですが、エンタメというエンタメが息をひそめるとなれば話は別でした。
いやはや楽しみにしていた公演や映画は軒並み延期や中止、ドラマも撮影ができなくなって、ついには朝ドラと大河もストックが底をついて休止に。
心に潤いもないのに感染リスクを伴って満員電車で出勤し、不要不急な仕事をしなければならず、ただ突っ立てられてる総理大臣にリーダーシップも何もない社会に荒んだ私の心にスッとしみ込んだのは、ほかでもないこのBLドラマでした。世界は広いです。アジアに感謝。

バイロインのお父さんとおばさんの結婚式は終わり、グーハイが酔いつぶれたバイロインを背負って一緒に帰る。
背負われていたバイロインが急に「マンションの屋上にいきたい」と言い出します。屋上?と思ったグーハイですが、バイロインの言うがまま階段を上っていく。するとバイロインはしくしくと泣き出すんですよね。祝いの席だからずっと我慢して、お酒を流し込んでごまかしていた寂しさがぽろぽろと涙になって零れ落ちる。グーハイは泣いていることに気付いても何も言わずにただ屋上までバイロインを運んでいく。
屋上で並んで座り、しゃくり上げて泣くバイロインの肩を抱きながら、まるでバイロインの気持ちとシンクロしているかのように切なげな顔をします。「インズ、泣くな」と言いながら頭を撫でて「お前の父親は、ずっとお前の父親だよ。何度結婚しても、お前のことを一番愛してる」。この言葉をバイロインに言えるのは、お父さん以外にグーハイしかいない。母親を亡くし、温かい家族からの愛を求め続けてきたグーハイだからこそ分かるバイロインの心の寂しさ。
「もういないんだ……あんなに俺にまずい飯を作る人……」「父さんの飯が食いたいのか」「俺のパンツを水たまりに落とす人も……」と泣いているバイロインの頭をグーハイが抱きよせて涙を流すのです。
「これからは俺が飯を作ってやるよ。多分、父さんよりもまずいと思う。それから俺が洗濯もする。パンツは洗っては落とすから、一箱買っておこう。……インズ、俺は約束する。お前の父親以外に、俺よりもお前の事を愛してるやつはいないって」
このグーハイのセリフは、このドラマで一番大事なセリフと言っても過言ではないと思います。私は泣いた。だってグーハイもずっと愛されたいと願ってきた人なわけですよ。そして、そんな寂しくてどこか満たされずにいたグーハイのことを変えたバイロイン。求めよさらば与えられん。グーハイには愛することを教えてくれたバイロインが、バイロインには愛されることを教えてくれたグーハイが目の前に現れた。そうなれば惹かれ合うのも当然のことで、相手が男同士であることなんて何の問題にもならないことです。自然の摂理だもん。

加湿器をかけまくってるグーハイ様の寝室。ベッドの上にはグーハイとバイロインの姿がある。先に目を覚ましたグーハイは、隣に寝ているバイロインがグーハイに寄り添うようにして寝ているのを見てちょっと驚いた顔をしたあと、それはもう慈しみにあふれた顔でバイロインのほっぺをつねる。湿度と愛でいっぱいの部屋。
そしてグーハイは「ちょっと出かけてくる」と言ってベッドから起き上がります。バイロインに「なにしにいくの」と聞かれて「帰国したばかりの兄貴のことを迎えに行くんだ」「兄貴って、実の?」「いや、従兄弟。ずっと海外にいて会う機会がなかったから。今日は仕事で帰国しててついでに顔を見に来るって。しばらく滞在してから帰ると思う」「じゃあ早く言ってあげないと……」「うん、いってくる」とグーハイは部屋を出ます。まだ眠いバイロインはベッドに逆戻り。

突然現れたものすんごいシャープなイケメン。そこへ歩いてやってきたのはグーハイとバイロイン。そのイケメンはグーハイの従兄弟、グーヤン。グーヤン、一目見ただけで分かったけどマジで目の演技が強い。
バイロインを紹介するグーハイに、グーヤンは何も反応せずにいる。それを見て「何だこいつ……」っていう顔してるバイロイン。尋常じゃない気まずい空気に料理を持ってきてくれというグーハイ様。まさかあのグーハイ様が人との仲を取り持つ日が来ようとは。
無言で食べ始めるグーヤンと、フォークを置くバイロイン。グーハイは「どうした?食べたくなかったか?」と様子を伺い、バイロインは「いや……」とだけつぶやくと、グーヤンは唐突に「ハイ・ロイン(ヘロイン)」という。グーハイは「そうなんだよ、俺たちの名前をくっつけるとヘロインって毒薬になるんだ」とすかさず反応し、空気が止まらないようにするけど「何だこいつ」というバイロインからの視線も気になる。雰囲気がすごいことになってるのでとりあえず笑うしかないグーハイ様。困った時に頼るのは酒。中間管理職か?二人のグラスにワインを注ぎ、俺たちと乾杯しようと持ち掛けます。一応乾杯はするものの、バイロインとはグラスを当てない。「何だこいつ」の極み。

部屋に戻り、楽しそうに雑誌を読んでいるバイロイン。するとまさかのグーヤンが来訪します。警戒の目を向けられつつ二人で部屋の中に入ると、グーヤンは部屋を見まわして「テレビが小さすぎる。明日大きいのに変えよう。絨毯と机の色があってない。この壁紙は気分が落ち込む。カーテンは派手過ぎる。照明は地味だ。最後はこんないいテーブルと合わせるなんてどこのデザイナーを雇ったんだ?こんなセンスの無い改装して」と激辛ルームチェック。「いやだから何なんだこいつ」という顔をしつつソファーに座るバイロインさん。
この内装はあのヨーチーに天津に誘われたとき、そこに被せるようにグーハイが家具を一緒に見に行くという約束をしておりますのでそこで全部チョイスされたものではないかと思います。完全に当てこすられている件。
マジで何なんだ……という顔のバイロインさん。このタイミングでグーハイが「インズ、パジャマ持ってきて!」と呼ぶ。「タオル巻いて出てきたら?」というバイロインに、そそくさと忠犬のごとく出てきたグーハイ様、当然部屋にいるグーヤンとばったり。「兄さん?!?何でいるの!?!?」「お前に会いに来た」と言われて引っ込みます。「彼には遠慮しないのに、俺には遠慮するのか」と聞かれて「兄さんみたいに立派な人は俺のバカな行動は受け付けないでしょ?」とかうまいこと言ってしっかりパジャマ着て出てくるグーハイ様。
バイロインの隣に座り小声で「なんでアニキが来てるって教えてくれなかったんだよ!意地悪だな……帰った後仕返ししてやるからな」「多分、しばらく帰んないよ」というバイロイン。その間も部屋の隅々まで見て回るグーヤン。
部屋にあったワインを開け、バイロインの予想通りに全然帰る気配がない。くるくると神経質そうに歩くグーヤンに「何なの……?」という目線をよこすバイロインに仕方なく「兄さん、なんでまだ帰らないの」と聞くグーハイ。「何で追い出すんだ?邪魔なのか。したいことすればいいだろ」と、二人の心の中を読んだのか的確過ぎるグーヤン。したいこと……。「俺たちもう寝ようと思って」「こんなに早く寝るのか?お前たちぐらいの年代はもっと遅くまで起きてるんじゃないのか。まだ8時だ」と言われて困るグーハイ様。「お前たちが寝るなら邪魔はしない。ちゃんと布団をかぶって寝ろよ。風邪ひかないようにな」と言って意外とあっさり帰るグーヤン。
ほっとする二人……からのヨーイドン!で部屋に引っ込むバイロインさん。なにせさっきの仕返しが待ってるんで。一歩遅れたグーハイはしまったドアに向かって「この悪ガキ!出て来いよ!まだ終わってないぞ」と吠えます。身の安全を確保したバイロインさんはベッドに座って「窓なら開いてる!できるもんなら上ってくれば!」と挑発。いやダメだって……グーハイ様はマジでSASUKEをやる男だよ……???と思ったら「いいぞ、待っとけ」とどっかに行ってしまう。ドアが閉まった音を聞いて……あれ?マジで出てった?とちょっと不安になるバイロイン、そーっとドアに近づいて耳を澄ませますが、しんと静まり返っている。一応窓の外も見てみるバイロイン。あれ?マジで行った?あれ?と思わず携帯に電話を掛けます。ドアの前で待ち伏せしてるかも……とは思いつつ、電話がつながらないので心配で部屋を飛びだすとグーハイの姿が………いた~~~!ということで、ひょいと担がれて寝室へ連行。担がれたままで「今日は何言ったって無駄だぞ!」と言われつつ「グーハイ!おろして!おろしてよ!」と尻を叩いて抵抗するバイロインさん。「ダーリンって呼んでみろ。そしたら下ろしてやる」と急にカワイイ条件を提示してくるグーハイ様。ベッドに放り投げられたバイロインに覆いかぶさるグーハイ、もみくちゃになりながら「一緒にここに来なきゃよかった!」「なんだよ、また俺に階段を上らせるのかよ?」とか「その気になってきた?なあダーリンって呼ぶか?」「呼ばねえ!」とすごいじゃれまくる二人。この人たち、色んな意味で遠慮がなくていいですよね。
そして気だるい事後。フィギュアをこねくり回すバイロインさん、振り向いた拍子に角に頭をぶつけてしまうグーハイのことを撫でてあげる。やっぱり事後だと人は優しくなりますよね。そしてバイロインは「お前の腰にある傷、どうしたの」と聞くと「子供の時に兄貴に切られた」「何でお前を?」「二人でスイカの取り合いになって、俺が勝ったから兄貴が果物ナイフで刺した」なんて物騒な兄……。
「だからお前は、お兄さんがお金をくれるのが当然だって思ってるの?お前によくするのが当然だって」「俺は何も。兄貴がしたいからしてるだけだ」そして急にキラッキラの顔で「でも普通に、お兄さんってお前よりかっこいい」と言い出すバイロインさん。さっきまで抱かれたと思ったら別の男褒めてくる嫁にはっ……!?てなるグーハイ様。私ずっとバイロインは「何だこいつ」の顔してると思ったけど「顔がいいな」の顔だったの??ねえ??
にこにこしながら「度胸ではお前に負けてないし?」というバイロインに「子供の頃、一緒に凧揚げしてたら紐が切れて、二人で追いかけたんだよ。俺は泣きながら追いかけてて、兄貴は笑いながら追いかけてた」「……どういう意味?」「ここまで言って分かんないのか?俺の心は善、兄貴は悪だ」「そうじゃない。俺が聞きたいのは。紐が切れた凧は追いかけて拾えば済むことなのに、なんで泣くのかってこと。お前、バカなんじゃないの?」と言って笑う。このシーンとりとめのない事後の会話って感じだけど、二人の価値観の違い?物事の捉え方が違っていてとてもいいと思った。違う視点を持つ人と一緒にいれば、いくら難しい問題も打開できる糸口を見つけることができるので。

カフェにて、グーヤンとグーハイ。「兄さん、いつ帰るの?」と聞いてくるグーハイに「決めてない。出かける前は一週間くらいで仕事が片付くと思ったけどこの辺の仕事のやり方じゃ、もう一週間延長しないといけないかもしれない」と言う。「片付いたら早めに帰ってね」というグーハイ様に「なんで俺を追い出そうとするんだ?前は何度も電話で帰ってきてって言ってたのに、今回は俺の事を避けてるみたいだ」「俺は時差ボケで体が大変なんじゃないかって心配なんだよ」「シャオハイ、今回帰ってきてお前の変化にびっくりしたんだ。どうやって人を愛することを知ったんだ?」おおおおお、突然の的確の鬼グーヤン様。
「変なこと言うのやめてよ」「じゃあ、あのお兄ちゃん(バイロイン)はどうした?」「何であいつの事聞くの?」「興味がある」……。
事後のバイロインには自分よりかっこいいって言われるし、グーヤンにはバイロインに興味があるって言われるしで、おいおい、もし俺いなかったら両想いになってんじゃねえか……?と穏やかでないグーハイ様。お疲れさまです。

制服で外を歩いているグーハイとバイロイン。「何か食べる?」というグーハイに「じゃあおこげの菓子でも買おうか」「何味?」「鶏肉味」と聞いてすぐ売店に入っていくグーハイ様。相変わらずの健気さです。すると売店でがっつり言い間違えてとんでもないド下ネタ味のお菓子を注文しちゃうグーハイ様。店員さんは苦笑い。気付いていて笑いが止まらないバイロイン。とんでもない大恥かいたので急いで買って店を出る。「グーハイ、これは報いだよ。一日中エロいことばっかり考えてるせいで間違えて言っちゃってんだ!」と爆笑。「俺はそれが食いたかったの!今夜お前の食ってやる」というグーハイ様。結構ヤバい予告を聞いてもまだツボから抜けられないバイロイン。「まだ笑うのか?やめろよ」といい加減恥ずかしいグーハイ様、共に家に帰ってくるとなぜか扉が開いている。
「カギ閉め忘れたのか?」「……?」恐る恐る部屋をのぞくと、花束とリンゴ。なんと母親がいたのです。グーハイは「何で来たんだよ」と不満丸出しの顔で聞くと「お父さんに様子を見てこいって言われたの。あなたたちのことを気にしてるのよ」「カギは」「お父さんがくれたわ。何かあった時のためにお父さんとあなたの分と二つ用意してあるから」「来るとしても一言断るべきだろ」「あなたの番号知らなかったから連絡できなくて……」
余裕でプライバシー侵害してくる母親にイライラして寝室に入っていくグーハイ様。母親はバイロインの腕を引いて座らせて、お父さんとおばさんとのことを聞き始めます。「あの人、自分の子供を連れてきたんでしょ?あの人があなたのことを気にしてくれると思う?お父さんだって結婚したからあなたのことを追い出したんでしょ」ととんでもない言いがかりをつけられ、「ここへは俺が自分で来たんだ。毎回俺に会うと父さんのこと悪く言うのやめろよ。父親を貶めれば自分が良く見えるとでも思ってんのか?」としっかり言い返す。バイロインがお父さんにいかに愛されていたかなど何も知らないので「お母さんはあなたがかわいそうだと思って……まだ子供なんだから放っておけないわ。今ならもう余裕もあるし、今までの穴埋めをさせて」と、ここまで鮮やかな手のひら返しを久々に見たよね。もう遅いとバッサリいくバイロインのもとにグーハイが風呂に誘う。
母親から逃げるチャンスなのであっさり応じるバイロインを見て、あなたたちはいつからそんなに仲良くなったのかしら……見てるだけで幸せ……とか言ってリンゴを剥きだす。その見てるだけ幸せっていう気持ちだけは分かります。
風呂から上がった二人に「随分と長風呂なのね」と言う母親。マジで空気を読みません。いくら勉強してもどうせ貧乏人は貧乏人でしかない的な持論を展開しまくる母親に、私が世の真理だと思っている福沢諭吉先生の「学問ノススメ」より「人は生まれながらにして貴賤貧富の別なし。唯学問を勤め、よく知る者は貴人となり富人となり、無学なる者は貧人となり下人となるなり」という言葉をお送りしたいと思います。学べば学ぶほど人は富みますし、学ばなかったら人は貧しくなる。これはマジ。
バイロインにドライヤーを掛けようとする母親からドライヤーを取り上げて俺がやるというグーハイ様。お父さんを蔑むような言い方をする母親に対し、結婚式の夜にバイロインに誓いを立てた身としては穏やかでない。
そして留学の話を持ち出す母親に「俺の事で時間を無駄にしないで。俺は両親に遠慮するっていう習慣はないし」と言って席を立つバイロイン。グーハイからもお引き取りくださいと言われ、やっと部屋を出ていく。
「うぜえ……」「何であいつがカギ持ってんだよ?毎日来たら生活できないんだけど!」「急いでカギ替えよう」と、何だかんだ母親のおかげで二人の結束が強まるのでした……というところで、終わり。

今回は、冒頭から愛についてすごく深く考える回でした。人を愛することだけじゃなくて、誰かに愛されるってどういうことなのかをこんなに考えようと思ったのは初めてです。貴重な経験をしました。
そして見る人はもちろんのこと、演じている人にとってもこの先の人生に大きく影響を及ぼすようなドラマだったんじゃないかなと思いました。あの数々のセリフの意図を理解して感情を乗せていくプロセスを考えると、一朝一夕で出来るようなものじゃない。……マジですごいドラマだ。本当に出会えてよかった。
最後みたいな空気を出しましたが、次の15話でラストになります!寂しい!お付き合いいただきありがとうございました!

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