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Pairsで1ヶ月に100件マッチングして見えた世界について(一話完結編)

人生最大のモテ期をマッチングアプリに使い込んだ男のお話、適宜noteに追加します。
(当時の思い出の青臭さを体感してほしいので、BGMとして銀杏BOYZを選びました。駆け抜けて性春、大森靖子さんよりYUKIさん推しです。)

1.序

Twitterアカウントで、上記のツイートをプロフィールがわりに固定しているのだけれど、これは実の所Pairsでの経験である。
正味な話、人生一度は激しく傷ついてみるもので、数々の挫折した経験の中でも、今の所一番綺麗な思い出なので、挨拶がわりに載せている。
一瞬の儚い幸せというものは、長続きする安穏な幸せより、時としてかけがえのない思い出となるらしい。
いつかは思いっきり塗り替えてみせたいけど、暫くは色褪せそうにない出来事の数々。

もうあれから2年くらいが経つだろうか、まだまだ蒸し暑さの残る秋口くらいのお話。
もう少し季節に応じた格好をしなきゃと、patagoniaの名作ばりに短いバギーパンツや真夏用のアロハ達をしまい始めて、Tシャツ一枚で映えるように、ギャルソンのボンテージパンツやソロイストのジャージなんかを引っ張り出してきた頃合いの出来事である。

第一印象として、アートの趣味や物事の感じ方/考え方がここまで自分と似通っている人がいるということに驚きを持った。
自分と近い人間がこの世にいると分かる嬉しさを、あの時もっと大切にすべきだったなと振り返ってみる。

出会った時に話が尽きないくらい盛り上がったのは勿論のこと、たまたま流れで貸切となった川沿いのイタリアン(今はもう潰れてしまった)でひたすら一緒に飲んだくれたこと、別れ際の駅のホームで、僕の乗った電車が動くまでずっとずっと手を振ってくれたこと、どんなに言葉を尽くしても身体を身体で結ぶことでしか贖えない傷があること、不器用さや心に負った傷痕の持つ美醜を超えた愛おしさ、羊毛フェルトみたいな雲から差し込んだ薄明るい太陽の光、ぐずつきがちな空模様と雨上がりの匂い、鳴き始めの鈴虫の音。

和らぎ始めた蒸し暑さが心地よくて、僅かに生温かい風が頬を撫でる。

何はともなく世界から祝福されたような気でいて、そろそろ二人で思い出を紡ぎ出していければと思っていた矢先、これから先思い出の中でしか彼女を見つけられないということを知るのは、そう時間はかからなかった。

お互いがお互いにいい所を見せあうだけの関係に終わってしまったらしい。

本当は嫉妬も喧嘩もその後の仲直りのキスも、全部してみたかったけど、そういう気持ちが芽生えた時にはもうすでに2人の関係は事切れてしまって、結局はインスタントで稚拙な関係しか切り結べなかった。
今思えば好きと伝える覚悟の問題だったのかもしれないけど、結局のところ口には出せなかった。気迫のない人間に産まれてしまった宿命ということで、仕方のない事だと思うことにする。
きっと元から実るはずのない色事だったのかもしれない。なんというか、踏み入れちゃいけないはずの心のサンクチュアリを犯したのは、無知な僕の方だったと思うので。

そうそう。
感情は言葉にして吐き出さないと勝手に出口を見つけてしまう。

職場でPCの青い背景を見ていると、涙がツーと流れて全く作業にならなかった日があった。
毎日毎日、辛うじて繋がったLINEのメッセージに一喜一憂し、夜は夜で過呼吸になり、出張時の飛行機内で泣き崩れて、泣き腫らした目を見せるまいと飲み物を配るCAさんに怯えていたのを思い出すと、時折大きく笑ってしまう。
傷ついている時の方がまだ思い出に浸れるような気がして、忘れてしまうことがほんとうにほんとうに怖かった。

因みに、過去のLINEのやりとりは今はもう見ることはできない。

いつの間にか今までのLINEのメッセージが消えていて、よくよく考えると自分が寝ぼけなまこにメッセージを削除していたらしいのだけれども、ともかく当の本人に全く記憶がないのだ。

泡沫っていう言葉が非情なまでにしっくりくる訳で、思い起こせば楽しいだけの”都合の良い”思い出になってしまった。

今彼女が何をしているか、僕にはわかりようもない。

2.本タイトルの経緯と書きたいこと

長々と書いてしまった。
こういう青臭い経験は、学生の間にさっさと済ませておきたかったけども、あるだけいいのかも知れない。

結論として、所詮マッチングアプリでの出来事だけど、僕は今ほんとうに幸せ者だと思っていて、そして今後もっともっと幸せになりたいと願えるようになった。

しかしながら、総評してPairsをやってみてどうでしたかと聞かれると、正味な話、結構気力を消耗していたように思う。
複数回お会いした方々も入れて、半年近くがっつり活動して総計で20~30人くらいは軽く会っていた、モテ期の無駄遣い。
コロナ警報が出ていた時期は流石に会わなかったけれども、活動期の財布事情はほんとうに自転車操業で、なんというかとてもビジーな年だった。
どこから金が沸いてきたのだか、さっぱり訳のわからない、ピーキーなラインで生活をしていた。

そういえば最初の頃なんか、マッチング後のやり取りをするたびに目眩がしてたし、えも言われぬ罪悪感にかられることは、大なり小なり日課の一つだった。
やめた当日の清々しい朝の空気を今でも思い出す。

だいたい、マッチングアプリがもはや当たり前になっている昨今、いくら地方都市に住んでいるとはいえ、課金機能やブースト機能を使わず、一ヶ月間の男性のマッチング数が100件というのは、それほど大した件数ではないのだ。
現に僕と似たような職種で、おそらく同じ大学を卒業した、同じくらい学歴(院卒)の人間が、300件をゆうに越していたのを確認している。

以上を踏まえて、今回僕が書こうとしているのは、あくまでもPairsでの経験の振り返りと反省、これからどうするかについてである。
モテテクを語るだけに終始したくないし、決して自身の体験を武勇伝として語り継ぎたい訳ではない。

本当はもっともっと大風呂敷を広げて、最近流行りのフェミニズムなり、"性"そのものが持つ原罪~sin~としての暴力性なり、Twitterとかnoteとかhatenablogで時折見かけるような論調と結びつけながら、さながらマーラーやブラームスの壮大な交響曲のように、尊大かつ雄弁に語って見せたかったけれど、残念ながら今の僕にそんな技量はない。
ただ個人的に好きな話題なので、それなりの見識と自信がついたらチャレンジする予定である。

難しいことは後回しとして、当時の思い出と今考えていることを、つらつらと書き連ねてみる。

3.戦略

先程の文章で”マッチ数100件/月なんか大した数じゃねえよ”と言っておきながら、Pairsを含め、男性で1ヶ月あたりのマッチング数100件(Max)というのは、ネットを見る限り、目指すべき登竜門とされている。

自身の経験を踏まえて考えると、これだけのマッチング数を稼ぐと、アプローチされる率がこちらからアプローチする率を大きく上回る。
事実、初回の顔合わせのお誘いは、9割方、向こう様からの打診だった。
(※50件以上のマッチング数を維持していれば、だいたいなんとかなると思います。100件は維持が大変…。)

そう考えると、”会いたい”とか”電話したい”という意思決定のワードは基本、女性に言わせた方が良いのかもしれない。

兎も角Pairs上の女性達は、こちらが考えていたラインを大きく超えて積極的だった。

<経緯>
Pairsは確かお盆休みに、社会人だと言うのに大して金がなかったのと、そこそこのコロナ禍ということもあって実家に帰れず、暇つぶしに丁度いいやということで手にとってしまった。
正味な話、過去お付き合いしていた人や当時ビミョーな関係にあった方々が、どんどん結婚して子供を産んで、じゃあ自分はと言うと、別段女っ気のない日常を送りそうで、でも積極的に友人の伝で出会いを探すのは嫌で、やる方なしで、無性にムシャクシャしていて、結局は満たされなくて寂しいということで、始めた。

やるからには本気でやるかということで、プロフィール作成時には、就活で使用した履歴書の自作テンプレートを引っ張り出して、夜中の3時くらいから4時間かけて、セルフブランディング案を構築した。
8月真っ盛りの朝方ということでナンバーガールをかけ流し、時折よくわからない芋焼酎のロックを傾けながら筆を進めた。

以下を意識してプロフィールを作成した。

・キャラデザ
過去の履歴書を振り返って「性格」の欄を見ていると、往々にして”相談しやすい雰囲気がある"と書いていた。
なんというか、見た目以上に頼られるんだゾ!ということが主張したくて、このように書いた気がする。具体的なエピソードが思い浮かぶ訳ではない。
実際、口が比較的堅い(自己評価)こと、ぬぼーっとしてるけど話を聞いてくれそうと言われることが多いので、pairs上ではこのペルソナで進めることにした。

次に、なるべく多くの人の目にとまりたい、ということで、できるだけ”日常がキラキラしていそうな”人種を目指した。
単純に僕自身が多少なりともバブリーで食い道楽で着道楽なだけなのだけど、”経験にお金を使えるタイプ”であることを、パブリックイメージとしてきちんと伝えたかった。

その点は写真選びでどうにかなるような気がしたので、iPhoneに溜まった画像を選別してみると、幸いグルメというタグで、今まで食べたご飯をなるべくフォトジェニックに撮りまとめたものが500件ほど出てきた。
他に過去の写真を振り返ると、実家で飼っているワンワン達の写真や、旅行中の映えてる写真、カフェ中にお友達に他撮りしてもらった神写真が出てきて、グルメ写真も含めて適度にピックアップした。
この他撮りアイコンは結局アイコンに利用した。セピア色に加工した自身の上半身像で、まさかの4年ものである。実際、"詐欺やんけ!"と指摘されることもままあり、そこそこ反省している。
良識ある皆様はなるべく最新の写真を使いましょう。
パネマジは本当に悪の権化なので、それ相応に恨まれる。

そして、詐欺の写真使っておいて…という話になるけども、なるたけお会いした人には”誠実に”あろうとした。

人付き合いにおいて、僕達は基本的に、これはできて当たり前と言われる行動ができないものである。
元々できなかったり、気分のムラで出来なかったりするけども、これは男女限らずそうだと思っていて、特に他人に対して常に誠実であるというのは、非常に難しいことだと思う。

そもそも誠実であるというのは、個人的な解釈として”言葉と態度を尽くす”という意味じゃないかと考えている。
自分のスタンスについて考えると、婚活・恋活というほどには本腰を入れていないし、どちらかというと会うことそのものに楽しみを抱くタイプだったけれど、できる限り一緒にいる時が楽しくいられるよう、店の予約やデートコースの設定や下見、2回目のデートコースの打診からはじめ、デート終了後のお礼や労いに至るまでの基本的な行動様式には、それなりの注意を払ってきた。

実際に会う前は、落ち着いた話し方を、文章上でも通話上でも意識していた。
落ち着いたというのは言うなれば、感情の上がり具合を一定の度合いに保つという意味である。
男性ベースの話ではあるけれども、普段より低めの声で、相手より少しだけゆっくりのペースで話を進めることを意識してみると良い。
もちろんこちらのテンションが上がっているのであれば、それを声の抑揚や話すスピードに表しても良いと思う。
余裕がある人間に見られるということは、これからのペース配分を我々自身が掴みやすいということである。

最後に、当たり前のことかもしれないけれども、少なくとも相手を尊敬する、という点は忘れないようにしてきた。
なんとなくこれは自尊心を守ることに繋がると思っている。人様に振る舞う自尊心というものは、相手に対する尊敬があってこそなんじゃないかと思う日々である。

・写真について
やや強めに道徳の話をしてしまった。
Pairsには確か10枚程度を載せることができる。(それ以上載せても人は見ないらしいので、これくらいが上限値ではないだろうか。)
と言うわけで、以下の写真を載せた。

  1. 自分の写真→カフェで撮った他撮りの写真が一番望ましいらしい。普段の自分が出ているような写真がベストとのことで、他撮りが一番とのことです。ネットでよく書いてあるよね。

  2. メンズノンノに載ったスナップ→ウワーこれでめちゃくちゃ顔ばれしそうだ…。趣味を楽しんでる写真を載せるのが一番みたいです。カメラとバンドとフットサル最強説。

  3. MYKITAのサングラス→初回ブログに載せたやつ

  4. ペットの写真→家族旅行中に撮ったもの

  5. 観光地→自分の金で遠出して撮ったもの

  6. 観光地→友人との旅行や出張先で撮ったもの

  7. グルメの写真(7〜9枚目)→食い道楽を自称するくらいなので、厳選してみました。スパイスカレー、パスタ、フレンチ、肉系(焼き鳥、鴨肉、ハンバーグetc)、エスニック…この辺りから選んでました。なるべく茶色くない食べ物を選ぶとフォトジェニックになります。

  8. デザート・お酒の写真(10枚目)→盛り盛りのパンケーキとかパフェとかベターなんじゃないでしょうか。ロケーションの良いワインバーやフルーツをたくさん使ったカクテルなどが良いようです。

言うことがあるとするならば、自分の写真を載せるなら写真を撮った時の体型が維持された状態にしておくことくらいだろうか。

因みに写真の撮り方については、PredatorRatを展開し、自身も際どいグラビアモデルとして活動しているうしじまいい肉氏が、Twitterで示唆していたような気がするけど(元サイトを探す気力はないです。)、ケータイをiPhone 11 proにしてからと言うもの、かなり調子が良いように思う。
個人的な意見として、グルメ関連は、大体斜め45度の角度で、接写・遠角・通常の3パターンで撮ると、いい図が取れる。長々と撮っていると印象が悪いので、20秒以内に撮り終えるのが理想的だ。

目安として。ポートレートモードが優秀で使い勝手が良いです。

・載せる情報について
最後に文章の構成について触れてみる。

少しネットの海を調べてみると分かるのだけど、とかく恋愛において、男性には”清潔さ、誠実さ、優しさ”を強く求められがちである。
個人的に誠実さというvalueは、その人が使う言葉にあると考えている。
という訳で、なるべく誠実な性格に見せるため、以下の構成とした。

pairsの始めた経緯の説明(2文程度)を前書きとして、あとは[性格]、[仕事]、[趣味]と、50〜100字程度でそれぞれ項目を立てて設定し、そして[最後に]と銘打って、好きなタイプ、恋愛で求めている関係性、アイキャッチとして「ご縁を大切にしたいので、いただいたいいねは必ずお返ししております。」と入れて、どうぞよしなにで締めて完成とした。

内容としては、性格について書くなら「他人からの評価+自分の感想」、仕事・趣味について書くなら「内容+やりがいor楽しいと思っている理由/」、「内容+スペック」としておくのがわかりやすくて宜しいと思う。なるべく短い言葉で多くの情報を書くのが良いだろう。文章の"喉越し"についても強めに意識して、キャッチーな文章を心がけたい。

因みにこの項立てする書き方、テンプレすぎてよろしくないらしい。
マッチングアプリの攻略サイトなんかでよく勧められる構文で、見易さ重視でこの書き方にしたけれど、後々Pairsにいる市井のガールズに評価を聞いてみると、この書き方はウブでおカタく見えるとのことだった。
改行するだけにとどめておくのが最適解のようだ。

ちなみに文字数については、原稿用紙1枚ちょい(400〜500字)のボリュームにした。1000字で書いてみて、削って削ってこの字数にしたのだけれど、体感として400字程度が丁度良い情報量のようである。

・その他
どのように結果に結びついているかはわからないが、色々な方とマッチするようにコミュニティには推定200件以上登録したし、コミュニティも作成した。
大好きな"Trevor Brown"でコミュニティを組んではみたものの、同性が4人だけと悲しい結果に終わった記録がある。

あと、検索数upのために、正午ごろと21:00くらいに24字で呟きを投稿した。宇多田ヒカルや椎名林檎の歌詞をつぶやいてみたり、今日買うものや作った料理についてつぶやいてみたり、「鶏肉と半端野菜でこの恋が実りますよう煮を作ります。」に代表されるようなよくわからないポエムをつぶやいてみたり、何だかんだ暇が潰れてよかった。
こちらも効果の程は知らない。

<結果>
僕が会いたいなあとボンヤリ思っていたお相手の方から、だいたい一週間程度のやり取りで電話の打診をいただくことが、体感で80%くらいだったように記憶している。
また、だいたい初回の電話では、2時間くらいとりとめのない話をしていたように思う。
取り立てて薄い話しかしていないけど、「初めてあった気がしない」との評判で、比較的スムースに会うことができた。

ルックスが伴わなくても多少の印象操作は可能のようだ。
ただそのあとうまく行って逢瀬を重ねることは実はそうなくて、幸いうまくいって、これどうなのでは?という案件では、完膚なきまでにフラれてしまったこともあった。
多分原因は金の使い方、結婚に対する意識、体型、物理的な距離、車の運転する能力についてだろうな、そう思うことにする。

4.ふりかえり

20〜30人とお会いするにあたって、1ヶ月あたりでコンスタントに4人と会う計算で行くと、大体会うことが決まるのは新規でやり取りする方の中から20%程度、つまり1ヶ月で最低でも30名程度とメッセージをお互いに交換している結果となる(初回月以降のマッチング数はここから類推してもらいたい)。
なお、最も初回の月は100人近く1ヶ月でやり取りしていたことになるし、1日で10人以上やり取りする日も珍しくなかった。

これだけハードワークしていたので、本音を言うと恋愛を主とするマッチングアプリにはほとほと疲れた。
失礼なのは百も承知している。
自業自得なのだけれど、思っていたよりも性欲を酷使する作業で、汚い話、自慰の回数が自身の平均の1/3まで減って、10日間近く手付かずみたいなこともザラだった。
アドレナリンが出っぱなしで、些細なことにイライラしていた記憶があって、あの時はたぶん本格的な依存症だったと思う。
自分の血流が波打つ感覚を強く感じて、自己と世界との境界線が薄くなって、自分だけが時の流れから外れていって、孤独を感じて、自分の身体が消えていくような気がして、それなのに他人と会話だけは通じる気持ち悪さを、なかなか忘れることはできない。
兎も角あの夜は怖かった、ほんとうに怖かった。

因みに冒頭の出来事はPairsを使って2ヶ月後くらいの出来事で、あのような結果になってからは何故か頭がクールダウンして、それからは少しずつ少しづつ落ち着いて対処できるようになった。とはいえ、その後怒涛のように顔合わせやデートをすることになるのだけれども。

後は、以下のような感想を抱いた。

マッチングアプリや婚活市場は、一般的に"自分"を商品として売り出す場である。
自己をディスプレイする場自体は、鶯なり孔雀なり極楽鳥なり、人間以外にもそれなりにあるけれども、自分の値段を明確に自分でつけて、恋愛市場の動向を見ながら、プロパーな値段で買ってもらうようにあれこれ画策するのは、ここ最近の人間の営みにしかない行動だろう。
動物はきっとそんな他のこと構ったりしない、彼等は生きることに忙しいから。

そして、人間の恋愛について、しっかりとした絆を結ぶまでは、自分を知ってもらいたいという承認欲求を掲げて、相手の心の中を土足で掻き乱し、また相手にもその対価として自分の心を明け渡すという行為を経なければならない。
お互いがお互いに恋愛という関係を結ぶのは、甘い関係を引っ剥がしてしまうと、人間に唯一赦された一種の暴力-penetration-なのかもしれない。
「神の愛は血を流す」という言葉を知り合いの牧師から聞いたことがあるけれども、人間もまたそうなのだろう、程度の差こそあれ。

以上をもって、自分の立ち位置を考えるにつれ、また恋愛のもつ暴力性を考えるにつれ、気軽に関係を切り結べなくなってしまった。
”気軽な関係しか結びにくくなった”といった方がニュアンスが伝わるかもしれない。
マッチングアプリの登場でより恋愛の入り口が開かれたものになったというのに、皆が皆互いに愛されてたいはずなのに、全員が”選ぶ者”と化している時点で、この業界では僕も含めてどこかよそよそしい雰囲気があった。
確かに、ネトナンという言葉が生まれて久しくて、男女関係なしにワリキリが増えているとなると、これから先マッチングアプリ業界では”恋愛”という概念が古臭くなるのだろう。

それはそれで少し悲しい。

それでは出会いを求める我々子羊は一体どうすればいいのかという話になるのだけれど、単純にマッチングアプリだけで結婚相手や恋愛相手を探すのではなくて、友達や職場の紹介や飲み屋やサークルなどの多角的な手段で、恋愛の萌芽を探すと良いように思う。
外見を磨かなければいけないストレスは変わらないけど、少なくとも婚活・恋愛市場という訳の分からないものについて考えるストレスはなくなる。
そして、スキルアップや選定に労力をかけすぎて、模試で高得点を取る多浪生よろしく、"マッチングアプリ上級者"にならずに済む。

ただマッチングアプリにも、今まで知り得なかった人を沢山繋いでくれるという良さがあり、そこは良いツールとして純粋に使うと良い。そして個人的にマッチングアプリを"出会い"目的に一本化してしまうのは機会の損出であるように思う。
そういえば先月から、ビジネス系のマッチングアプリを始めた。ゼロベースからどうにか人脈を作って、転職先を探すためだ。
残念ながら目的の方は今しばらく果たせていないけれども、経営者や大企業の重役、そして何故か占い師とお話して(※タダで占ってもらいました)、純粋に話そのものが楽しいと感じた。
どうやら僕は他人との触れ合いに少し飢えているらしい。

そして伴侶を見つけるには、短期決戦ではなくて、”別にいつか見つかるやろw”と呑気に構えるのがいいだろう。
どうせ相手が見つかれば、互いの落とし所を見つけるまで殴り合うハメになるのだから、焦りを感じつつも、それはそれとして英気を養っていた方が気が楽だ。

とりあえず僕は婚活市場から少し距離を置くことにした。
一緒にいる幸せがあることが漸く分かって、それ故に出会いを求める手を緩めることはないけれども、ジャッジされる場所に身を置き続けるというのは、それなりの辛さがあった。
遅い遅い青春の代償である。

5.終わりに

割と当たり前な話に終結してしまった。

けちょんけちょんに貶してはしまったけれど、Pairs上で本当は大事な出会いはそれなりにあって、アプリを通して出会わなければ友人として関係が続いていたのに、と思うような方が何人か居た。

また、Pairsをやって良かった事を一つ挙げるとするなら、今後の人づきあいの仕方について、会いたい人・関係を続けたい人には自分からキチンとイニシアチブを取れるようになれた事であろう。
この点については非常に感謝している。
元々自分という人間は社交的だったということに気づかせてくれた。

実は今、今後の人生について、きちんと膝付き合わせて話をしたい人がいる。
童話の中の青い鳥のごとく見つかった、いつか馴れ初めを書く日が来るのかもしれない。
結婚して、家建てて、子供育てて、それからそれから…みたいなライフプランはまだ描いている途中で、でも結果は神のみぞ知ることである。
所詮マッチングアプリとはいえ、今回の経験を機に新しい世界が見えてきたので、後はしっかりと言葉を尽くして、その時に備えていきたい。

…という訳でCharlieへ。
君は元々Pairs内でのペンネームだったね。
実際にCharlieって呼んでくれる人もそれなりにいて、名付け親の僕としてはとても気に入ってたから、呼んでくれて嬉しかったっけ。
君のおかげで大変な時もあったけど、その分だけ色んな事に気付くことができたよ。
楽しかったよ、ありがとね。

あと一仕事だね、それまでは宜しくね。
それではまた。

(終)

<後書>
約1万字、読了お疲れ様でした。
アラが見つかり次第書き換えております。

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