本をつんだ小舟によせて 10

~宮本 輝著 青が散る~

 学生時代の甘酸っぱい思い出の本、といえば“青が散る”なくして語れまい。
 暮らした土地が小説内に出てくるとうれしい。大阪はもちろん三重も出てくるのでなおさらである。
 
 この小説の主人公はテニスに打ち込んでいる(ちなみに宮本輝氏も学生時代はテニス部であったらしい)。

 ふりかえってみて自身の学生時代を思い起こしてみると、もっといろいろできたのではと思ってしまう。
 
 しかしどうだろう。中島らも氏の言葉に、現在は必然の積み重ね、という言葉がある。
 過去を振り返ると、もう少し頑張れたかなと思うこともあるがきっとそれは錯覚なので、当時の私を無条件で肯定するのが粋というものであろう。

 最後のシーン主人公は夏子をなぜ、追いかけなかったのか。答えは“それの方が甘酸っぱいから”だと私は思う。