美徳

25歳。本が好き。

美徳

25歳。本が好き。

最近の記事

【雑感】映画『かづゑ的』を観て

 著書『長い道』は愛読していた。  だが、この映画で記録されているかづゑさんの姿を観て、文章を読んだときの自分の想像は未熟だったと痛感した。そんなものを遥かに超えるほど生命力に満ちた人だと思った。  指を失った手でも、スープを作り、文字を書き、買い物をする。昔に書いた自分の文章を読んで恥ずかしさ混じりに大笑いする。夫の孝行さんと手を繋いだり戯れ合ったりする。母の墓跡に抱きついて離れずにいる。だが、孝行さんの骨壷を抱えて涙することもある。  喜怒哀楽。生命のほとばしり。自分を大

    • 【書評】ドストエフスキー『虐げられた人びと』

      『虐げられた人びと』を読んでいたとき、知人の生活上の世話をしていた。そのためだろうか、病床に伏せた少女ネリーの物語がとりわけ印象に残った。  元々は富豪だったネリーの祖父。しかし彼の財産を、ネリーの母の恋人が持ち逃げしてしまい、その結果、祖父は貧困に陥った。彼はネリーの母を勘当し、やがて貧困の末に彼女は逝去する。孤立したネリーは乞食になったり、意地悪な養母に養子に出されて虐待を受けたりと、救われない末路を辿る。  他のドストエフスキー作品に漏れず、この祖父も、金銭という資本

      • 【雑感】何度も行きたい書店「モクレン文庫」

         これまで様々な書店に足を運んだ。しかし定期的に行きたくなる書店、行かずにはいられない書店というのはそれほど多くはない。  そのうちのひとつが、下北沢駅から徒歩五分の場所にある古書店・モクレン文庫だ。現時点では、作家の若松英輔氏が講師を務める講座「読むと書く」の会員のみ入店できることになっている。  僭越ながら、僕は「いい書店」を判断するための個人的な条件を持っている。以下がその条件だが、モクレン文庫はこれらの全てが満点といっていい。  その1、いやな匂いがせず清潔なこと

      【雑感】映画『かづゑ的』を観て