【書評】ドストエフスキー『虐げられた人びと』
『虐げられた人びと』を読んでいたとき、知人の生活上の世話をしていた。そのためだろうか、病床に伏せた少女ネリーの物語がとりわけ印象に残った。
元々は富豪だったネリーの祖父。しかし彼の財産を、ネリーの母の恋人が持ち逃げしてしまい、その結果、祖父は貧困に陥った。彼はネリーの母を勘当し、やがて貧困の末に彼女は逝去する。孤立したネリーは乞食になったり、意地悪な養母に養子に出されて虐待を受けたりと、救われない末路を辿る。
他のドストエフスキー作品に漏れず、この祖父も、金銭という資本