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役所の空気を変える

 一般に言われることだが、会社にとって都合のいい社員というのは、「自分は今の部署において唯一無二の存在だ」と考えながら、実際は誰がやっても成立する仕事をしている社員である。唯一無二の存在と自覚しているから、熱意をもって仕事をしてくれる一方で、その社員に異動してもらわなければならない時でも、そのポストはポストとして成立するから、困らないというわけである。

 公務員でも事情は同じで、基本的にその人でないと成立しないという業務は存在しない。特に1、2年スパンと、民間企業と比べ(恐らく)かなり短いサイクルで異動が発生するから、属人的な業務が存在するとたちまち立ち行かなくなってしまう。

 ただし、業務にもある程度フェーズはあって、各フェーズにおいて適材適所になるような人材配置が実施されることはもちろんある。政策立ち上げ→検討→制度改正→運用というようなフェーズをたどっていくため、例えば検討フェーズでは、過去に経験していて検討業務に精通しているような人材が充てられるということはありうる。

 そうはいっても、いずれのフェーズにおいても、一人で完結することはほぼなく、いずれにしても何人かの担当を経て、数年かけて作り上げていくことがほとんどである。そうすると、重要なのは「引継ぎ」ということになる。

 ある業務が引き継がれていくと、その部署におけるそのポストの立ち位置というのが自然と形成されていく。立ち位置が決まるポストが寄り集まって課なり局なりといったより大きな組織ができあがっていき、最終的には「文化」となる。

 この文化は、いいものも悪いものもあって、いいものは継承していけばいいのだが、悪いものはやっかいである。それまでの積み上げがあるだけに、変えるのには結構なパワーを要する。

 ゆえに、そうした流れを打ち砕く改革の能力と、そもそも初めの段階からみんながやりやすいような仕組みを作り上げる能力が大事なのだ。

 公務員を目指す人の中でも、学生時代に周囲の学生が過ごしやすいような環境づくりを頑張ったとか、周りの環境改善に腐心した、という人がいるだろう。今の役所の空気を変えるために、大変貴重な経験であり、ストロングポイントとして磨き上げていってほしいなと思う。

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