一般に言われることだが、会社にとって都合のいい社員というのは、「自分は今の部署において唯一無二の存在だ」と考えながら、実際は誰がやっても成立する仕事をしている社員である。唯一無二の存在と自覚しているから、熱意をもって仕事をしてくれる一方で、その社員に異動してもらわなければならない時でも、そのポストはポストとして成立するから、困らないというわけである。 公務員でも事情は同じで、基本的にその人でないと成立しないという業務は存在しない。特に1、2年スパンと、民間企業と比べ(恐
新年度が始まった。自分の部署でも半分くらいの人が入れ替わり、新入職員も配属された。 自然と自分が新入職員の時が思い返されたが、当時はthe体育会系の上司で、その先の公務員生活に暗い影が落とされたような気がしたものである。結果的にその上司は7月には異動することになり、7月までの間はほとんど研修だったということもありメンタルはキープできたが、それでもきつかったのを覚えている。 当時の自分への戒めとしても、新入職員が頭に留めておくとよいことを述べてみようと思う。 ①上司
先日、学生向けのワークショップに講師として参加してきた。採用活動の一環で、国家公務員の政策立案プロセスを追体験し、実際の仕事に近い経験をしてもらうのが目的である。 自分も学生時代に参加したことがあるが、その手の採用イベントでは必ずと言っていいほど「若い皆さんの柔軟な発想力に期待しています」と言われたものである。当時は、「知識も経験もある現役職員のほうがよっぽど優れた政策を思いつくはずなのに」と思っていたものだが、逆の立場に立ってみると、本当に学生の発想に期待しているから
国家公務員の仕事に“問取り”というものがある。 国会での審議では、議員が予め質問事項を政府側に伝達するが、その詳細を確認するために議員に話を聞く、という仕事である。 国会で議員が政府側に質問するのは国会調査権の一部なので、それ自体を否定するわけではない。とはいえ、議員から質問されたことに対して答弁するための準備にはそれなりのコストがかかる。 まず、質問事項が伝達されるタイミングが遅すぎる場合がある。朝から国会が開かれるとして、その前日の夕方頃に送られてくるこ
学生時代に家庭教師のアルバイトをしていた時、教えていた小学生から「東大とハーバードってどっちが難しいの?」と聞かれたことがある。 その瞬間、ある時飛行機に乗っていて、隣とその向こうに座っていた親子のことを思い出してしまった。 その時は、子供が父親に、窓を指さして、「どうして空は青いの?」と尋ねていた。正確な内容は覚えていないが、父親は困ったような雰囲気を出しながらも、何かしら答えていたと思う。少なくとも「青色の波長の領域の光は他の色よりも拡散しやすくて・・・」ではなか
最近、国家公務員界隈では、人材の流動性が高まっている。 そう言うとなんとなく聞こえがいい気もするが、要は転職する人が増えてきているということだ。 自分は、「今すぐにでも転職したい」と思っているわけではないが、自分の市場価値を確かめたいという自己満足のために転職サービスには登録している。たまに流れている求人を眺めていると、「世の中にはこんな仕事もあるのか」と勉強になるのは盲点だったが。 転職活動の準備としてよく言われるのが(というか新卒の就活であってもそうだと思うが
国家公務員として働いていると、意外と訴訟対応なるものも業務として存在する。 訴訟対応とは、行政サービスの受け手たる国民(個人、法人)から、国、地方部局が訴訟を起こされたときに、裁判に参加し書面作成や弁論を行うことである。正確に言えば、各省庁に対して提起された訴えの訴訟活動は法務省が中心となって行うため、それ以外の省庁については、必要な情報の整理等を行うことになる。 訴えの根拠となる法律は、行政事件訴訟法はもちろんのこと、国家賠償法や民法の場合もあるため、学生時代に学
最近世界史にはまっている。というか、世界史学びたい欲が高まっている。 本屋に行けば世界史コーナーに必ず立ち寄って本をいくつか手に取ってしまうし、テレビ番組や動画配信サービスでそれっぽいものがあればついつい手に取ってしまう。職場の昼休みなんかでも電子書籍アプリで世界史の本を読んでいる。 ただ、特に本屋で自分が興味を惹かれるジャンルの書籍を思い返してみると、ゴリゴリのハードカバーの深堀系専門書というよりは、広く浅く、初心者にも受け入れられやすそうなライトな本が好みなよう
新年が始まって1か月。新たな抱負を胸に日々過ごしている人もいれば、なかなかお正月気分が抜けなかった人もいるのではないだろうか。 国家公務員といえど、年始は休みを取る人も多く、自分のオフィスでは、今年は4日、5日ともに休暇を取得する人も珍しくなかったように思う。 しかし、年末年始が正念場の業務もある。法改正である。 通常国会への提出を1月~2月に控える法改正担当部局においては、最後の大詰め作業を迎えることとなる。時間との勝負になるため、年末年始もなかなかゆっくりし
政策の立案、見直しをする上では、マーケティングの考え方が重要である。 例えば、創設した制度の利用実績が芳しくない場合において、利用実績の向上のための施策を検討することとする。この場合において、まず組織内で起こる典型的な議論が、「もっと周知徹底を図ればよいのではないか」「ではHPや自治体の窓口などでわかりやすくPRしよう」というものである。 問題は、利用実績が伸び悩んでいる原因を特定しない、又は特定の密度(制度が対象としている人々、内容ごとの詳細なレベル)が薄いままに
民間企業から役所に出向で来ている人曰く、公務員の業務ではかなり論理的思考力が鍛えられるらしい。 もちろんどんな職業でも、論理的思考力は必要になるだろうし、特にバックオフィスで勤める方なら、むしろそれがメインスキルになるかもしれない。 ただ、ここで彼が言っていたのは、役所間の業務分担(ポジティブな言い方をすれば。ネガティブな言い方をすると縄張り争い、縦割り)の際の話のようだ。 以前言及したように、公務員の業務では各省庁間の役割分担を意識する場面が多々ある。制度や予
国家公務員の業務の大半は資料作成である。 まず挙げられるのはドキュメント。部署内での打合せ、上司への報告資料、会議資料はもちろん、政策集、審議会取りまとめ文書など、ドキュメント作成の機会はてんこ盛りである。 さらに、公務員特有のものとして、法令や国会答弁などもある。これらは文言に関する約束事も多く、法令に至ってはスペース、改行、インデントに至るまで”お作法”が存在する。 従って、ドキュメントの種類によって異なるこれらのルールを守りつつ、施策の内容やアピールしたい
(前回の記事) トラブルの細分化によるメリットとは、まず一番は、やることが明確になるため、問題解決を進めやすくなるということである。ごちゃごちゃとしていたカオスな状態から、課題がすっきりと整理されて、順番に片づけていけば最終的にはゴールに到達することができる。 また、一つ一つの課題をクリアしていく毎にプチ達成感を味わうことができる。果てしないフルマラソンを砂漠で走り続けるよりも、「今○キロ地点」のような目印が細かく立っていたほうが、元気が湧いて走り続けようと思えるもの
働いていても、日常生活でも、そして勉強でも、「課題が山積み」「壁にぶつかってどうすればいいかわからない」と、頭の中がこんがらがってしまうのはよくある。問題は、その時にどう立ち向かうか、である。 ただ右往左往しているだけでは時間があっという間に過ぎてしまう。一歩でも解決に向けて進むカギは、問題の「構造」を捉えることだと思う。 それはすなわち、複雑に絡み合っている様々な要素を、解きほぐしていくということである。 例えば、勉強で言えば、「模試で偏差値が下がり続けている
業務を進めるうえで重視している考え方のひとつとして、「クライアント・オリエンテッド」というものがある。 これは、自社の製品ありきの営業ではなく、顧客のニーズに応じた営業をしていこう、という考え方である。 「現業じゃあるまいし、公務員なんだから製品なんて売っていないだろう」と思われるかもしれない。もちろん目に見える製品は売っていないが、公務員は行政サービスを”売って”いる。その基になるのが法令等の制度であり、公務員が”製造”しているものである。 すなわち、ここでい
「君はどう思う?」 職場では、意外と自分の意見を求められる機会が多い。 「お役所」と聞くと、古い組織で上意下達、やることは決まっていて意見を述べる機会などない、と思われがちだが、入庁して自分の担当業務を持った瞬間から、業務に関する意見を求められるのだ。それが、たとえ1年生であっても。 もちろん、始めはわからないことだらけなので、周りの人に助けを求めるのは全く問題ない。ただ、その場合でも、自分だったらどう考えるかという意見を持っておくと、他の人との相違が分かって、