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行政とコスト意識

 業務を進めるうえで重視している考え方のひとつとして、「クライアント・オリエンテッド」というものがある。

 これは、自社の製品ありきの営業ではなく、顧客のニーズに応じた営業をしていこう、という考え方である。

 「現業じゃあるまいし、公務員なんだから製品なんて売っていないだろう」と思われるかもしれない。もちろん目に見える製品は売っていないが、公務員は行政サービスを”売って”いる。その基になるのが法令等の制度であり、公務員が”製造”しているものである。

 すなわち、ここでいう「クライアント・オリエンテッド」というのは、行政サービスのユーザーたる国民のニーズに応じて、法令等の制度を作ったり見直したりするということである。

 国民に奉仕することが公務員の仕事なのだから、そんなの当たり前だろうと思われるかもしれない。しかしそれは、メーカーが作る製品にも同じことが言える。売り上げを増やすことが目的なのだから、消費者に手に取ってもらうものを作るのが、最大の使命のはずである。

 ここでイメージしているのは、とにかく自社の製品を売りまくればいい、という発想に立って営業を行うことである。公務員の場合で言えば、とにかく制度の適用実績、補助金の給付実績を稼ぐ、という考えで業務を行うということだ。もっとひどければ、とにかく制度を変えたいから、新しく予算を確保したいから、実際のニーズはさておき政策を考えろ、なんてこともありうる。

 だが、相手のニーズを考えず商品を売りまくろうとしても、結局空回りするだけである。売り上げを増やす近道は、潜在的なニーズも含めて顧客の求めているものを捉えることだと思う。

 特に制度に関しては、工場も原料も必要ないため、生み出すコストが小さいと考えられがちで、国民の求めるものと乖離するものが出来上がる危険性も大きい。しかし、コストがゼロなわけはなく、もちろん人件費という形でコストがかかっているため、そのコストをかけてでも生み出す価値があるかというのは、しっかりと見極める必要がある。

 国家公務員は、なかなか現場から遠い位置にはいるが、現場の声に基づき地に足の着いた考え方ができるよう、日々精進が必要だと再認識した今日この頃である。

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