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出る杭

 「試験勉強の時には、偏差値は目標たり得ない」という記事の中で、「ただ公務員は相対的な立ち位置が重要だ」という話をした。

 これはまず、役所の基本的な姿勢として、時間的・政策的に一貫したものとするということである。つまり、ある施策が、過去に講じた同様のものと一貫したものであるか、またはほかの自治体・省庁と足並みがそろっているか、ということを非常に気にするということだ(この確認のことをしばしば「並びをとる」と呼んでいる)。

 これは、役所ではできることが法令上明確に定まっており(法令上定まっていること以外のことをすると違法となる)、かつ、その業務の目的が利益の実現ではなく説明責任の完遂であることに起因している。

 行政の活動は必ず法律に基づかなければならないという原則を「法律による行政の原理」というが、自分がこれから取り組もうとしていることが法律に根拠を有しているかを毎回厳格に確認できるわけではないので、過去の事例で同じようなものがあれば、それでよしとすることが多い。(過去の行為が知らず知らずのうちに違法であった場合はどうしようもないが) 

 並びを取るのも、ほかの役所が同じことをしているのであれば一定の合理性はあるだろうということだ。また、説明責任というのは目立った者に求められがちなので、大多数と同じことをしていれば、説明に窮する場面が発生するリスクそのものを回避できる。

 そういった意味では、役所の中ではとがった意見は好まれないといっていいだろう。ただ、意見がとがっていることと主張が強いことはまた別である。説明責任が重要という前提は変わらないので、自分の意見を持つことは大事だ。

 そうはいっても、どのような意見がとがっているというのは経験によるところもある。公務員を目指す若い人にとっては、臆せず革新的なアイデアも持っているとよいと思う。バランス感覚を見せる姿勢さえあれば、ポジティブな主張はウェルカムである。

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