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季節変動、オーストラリア、熊野詣で、関所

学生Q.観光客の数の季節変動は確かに実感します。ハワイほどのところでも変動を少なくするために様々な手法をとってきたのですね。私は夏は料金も高いし、観光客があまりいない時に沖縄に旅行に行こうと思っています。今年のゴールデンウィークはどこにも行かずに家でゆっくり過ごしました。
コクジーA.多くの人があなたと同様に思っていることでしょう。でもオフシーズンは観光地のサービス水準が落ちているかもしれません(たとえば観光施設の従業員が少なくなっていたり)。また、オフというのは言い換えると殆どの人が旅行に出にくい時のことですから、貴方だって様々な阻害条件下にあるでしょう。近年はサービス産業に従事する人の数が増加しているため、土日への人の集中度は以前ほどではないでしょうね。しかし、人間の感情って不思議なものでガラガラのテーマパークやアウトレットモールへ行っても面白くないんですよね。ちょっと混んでいたり、少し列で並んでいる、という光景を見て興奮する、そんな感覚ってありませんか? 浅草の仲見世なども人混みが楽しいのだし。また、観光地には「旬」というような言葉が似合うところがあります。たとえば、あじさいの咲く頃の鎌倉とか晩秋の砥峰高原とか・・これって究極のオンなんですよね。すべてが平準化してしまうのも善し悪しです。

学生Q.授業で観光地へ行きたいです。
コクジーA.君はどちらかというと「アホ」かな。でも大学の中にお寿司屋さんがあったり、中庭を池にして教室まで渡し船で行ったり、授業を受けるのに一日券でどんな授業も受けられたり、先生の部屋が夜は飲み屋になっていたり、廊下でウサギとか子羊が遊んでいたり、大学が観光地になってしまえば・・・そういうのもありかな。・・・なしか。

学生Q.観光事業のおもしろさってなんですか?
コクジーA.形のないものを売るんですよ。車なんか買ってから時間がたつにつれて価値は薄れていきますが、旅行という商品は時間がたつほど心の中で思い出が価値を拡大させていきます。こんな商売、ほかにはありません。

学生Q.月波動、曜日波動の話ですが、自分はTSUTAYAでバイトをしてるんです。私のいる店舗では毎週水曜日が半額なのでたくさんお客が来るって事が曜日波動なんだなと観光とは関係ないですが、思いました。質問ですが、やっぱりホテル関係の仕事につくには有名なホテルの方が給料などいいんでしょうか? 自分は英語がニガテでしかも私立大卒となると少し不安です。就職に有利な資格などあるのでしょうか?
コクジーA.TSUTAYAの件は「一週間のうち水曜は一番お客さんが少ない、ボトムの曜日である、その対策として水曜日を半額サービスにした、その結果お客さんは増えた」ということでしょう。つまり曜日波動を少なくするための努力の結果であるということです。ただし、半額という手段を採用している以上、お客さんが2倍になったとしても売り上げは変わりません。しかし、新規のファンを開拓できたり、従業員の労働密度が一定になるといった効果が期待できます。ただ、水曜日に半額にしたり、それを木曜日に移したり、サービスを乱発していると、「値頃感」が分からなくなり、普段の価格を「高い」と感じさせてしまう事になりかねません。
ホテルを職場に選ぶ人は学生の中にも結構多いです。大手企業の労働条件が良いというのは一般的にはいえるでしょうが、すべてがそうであるとは限りません。また、君達が給与水準や勤務時間や自宅通勤などにこだわっているようでは、おそらく就活は失敗すると思います。私のゼミでも大小のホテルに就職した学生は少なくないですが、最近は内定ゲットは簡単ではありません。語学面を気にする人は多いですが、もちろん英語ができればベストでしょう。しかし、むしろ日本語できちんとコミュニケーションがとれるかどうかを厳しくチェックされます。簡単にいえば会話術だし、敬語の使い方でもあるし、相手の目を見て話ができるか、相手の求めに的確に返事できるか、といったようなことです。もちろん普段から服装、姿勢などにも気配りしていなければなりません。面接の時さえ切り替えてピシッとすればいいや、なんてことでは通用しないと思います。ホテルの場合は旅行業のようにこれがあれば大きな武器になるというような資格は特にありません。繰り返しますが「休みは週に何日ですか?」とか「残業はありますか?」なんて質問をしたら、就活は即アウトです。数年前、金髪で自衛隊に面接を受けた成績の悪いチャラ男君がいました。もし、彼が内定をもらっていたら、日本は終わりでした。

学生Q.この間、友達とオーストラリアに10日間旅行に行ってきました。初めての海外なので不安でしたが、すごく楽しかったです。オーストラリアには友達の別荘があり、そこで釣りをしたり、プールで泳いだりして遊びました。オーストラリアは日差しが強いので肌が痛くなりました。海は凄く波が高いのでサーフィンをしました。しかし、友達は波に飲まれて深い所まで流されていました。オーストラリアの海は世界で一番サメが多いと聞くのでヤバイと思ったのですが、ライフセ・・・
コクジーA.感想が途中で終わってる。途中でチャイムが鳴ったからと言って、それはなかろう。さて、まず、オーストラリアに別荘を持っているような友達は失ったらいけなので、ご機嫌を取って大事にしましょう。オーストラリアは単に日差しが強いというよりオゾンホールが拡大して人々は強力な紫外線にさらされています。これは皮膚ガンの原因になるので小学生や幼稚園児は真夏でも長袖を着、帽子なしでは外出できません。ところで、君の大事な友達は波に飲まれて帰ってきていないのですか? もしそうなら大事件じゃないですか。こういう場合は、結論をちゃんと書かないといけません。・・・流されていました・・・・で終わるなんてあまりに冷淡です。

学生Q.先生のコメント返信がノリノリで楽しいです。あと高野山のような女人禁制は必要なしきたりだったのじゃないでしょうか。
コクジーA.古来、女性を忌避する傾向は不浄の存在であること、それは「血」にまつわる思いこみ、から来ているそうです。しかし、男も誰のおかげで生まれてきたのか、という想像力をかつての人たちはなぜ持てなかったのか不思議です。大相撲の土俵に女性は上がれない、なんてことも考えさせられますね。君もアホなことを言わずに口をつぐんでいた方が身のためです。でないと君の一生も女人禁制になるかもしれません。

学生Q.暑い。部屋狭い。授業始まる前からクーラーつけてほしい。
コクジーA.暑いのは太陽のせいです。教室が狭いのは学校法人のせいです。私が来る前に君たちのうち誰かが先に来ているのですから、冷房のスイッチを押して私を待つように。私が初めて沖縄の西表島に行き、民宿に泊まった時、部屋のドアは下1/3くらいが寸足らずで空いていました。これはなんじゃ? と思ったのですが、暑くてクーラーをつけようとしたら1時間いくら、というコイン方式でした。いくらお金をいれても一定以上涼しくなりません。ドアの下1/3が空いているからです。敵も然る者ですが、今の君よりも腹が立った。だから我慢しなさい・・・というわけにもいかないか。

学生Q.熊野詣でのしくみ聞いていて楽しかったです。江戸時代の旅行事情もおもしろかった。
コクジーA.確かに「飯盛り女」(女給?)とか「留め女」(客引き?)なんていうのはネーミングが抜群です。私のゼミ生の女子は殆ど「飯大盛り女」です。本学では「留年確定女子」を留め女と言うらしいです・・言いません。当時は旅なんてそうそうできませんから、一度泊まった旅館に再び泊まることはほとんどなかったでしょう。だから「恥もかき捨て」という意識で飯盛り女とともに風紀も乱れてしまったのだと思います。やはりリピーターより「一見さん」が多い観光地では気配り、目配りが欠かせません。

学生Q.女の人が関所を通るときに細かく調べられてたことにびっくりしました。それと修学旅行が昔からあったことも知らなかったです。
コクジーA.政治の世界といい、信仰の世界といい、社会生活上で女性の地位はずいぶん向上しました。でも世界ではまだまだ我々の常識とは違うことが多くあります。アフガニスタンのタリバンというイスラム原理主義のグループでは女性が仕事をしたり、学校へ行くことを禁じていました。またインドでも1,2年前にこんな事件がありました。北部で起きた「サティ」という殉教の風習がもたらした事件です。夫に先立たれた妻が、やはり夫の遺体を焼く火に身を投じて焼死するのです。本人はいやいやだろうと思うのですが、花嫁衣装をつけ、村人達は祈りの言葉を唱えながらこれを見守るということです。慣習に名を借りた圧力なんでしょう。事前にこんなことが行われるという情報が出回っていながら警察も含めて止めようとする人はいなかったらしいです。政府もこういう野蛮なことはやめさせようとして法律でも取り締まっていますが、社会では風習として生き残っているのです。まぁインドでも田舎の話でしょうが。ちょっと信じられません。関所や改め婆なんて可愛いものです。

学生Q.先生は観光中にTVのロケに遭遇したことや有名人に会ったことはありますか? 観光に行けば、その土地土地でたった一度の恋というのがあると思うのですが、そういうことはありましたか?
コクジーA.それは前々週に話したフィルム・ツーリズムの話からの連想かな? 残念ながらロケとかに遭遇、というのはありません。コケはアチコチにありました。観光地での恋?ありましたか?と言う聞き方だと「今はもうあるわけねぇ」という前提かなぁ。まぁ、あるわけないけど。諸君も旅先で恋したければ、まっすぐ、時速15km平均で歩きなさい。腰パンでヨタヨタ歩いていると世の中では見向きもされません。

学生Q.なぜ、江戸時代のころの女性には厳しい移動制限があったのでしょうか?
コクジーA.授業で説明したのにぃ・・・。もともとすべての人に移動制限のあった時代ですから、関所の場所もそこを通る人々もある程度限られています。江戸から地方に通ずる主要街道に関所は張り巡らされていたのですが、ここで江戸から出ようとする「女」を厳しくチェックしたのです。「出女と入り鉄砲」と言われるように関所の役目は江戸への武器の流入を防ぐこと、江戸詰めの大名の関係者を閉じこめておくことでした。この関係者で特に重要なのは大名やその家来の妻や娘であり、彼女たちを江戸に閉じこめておけば、幕府への反乱は起こせない、という「人質」的役割だったのです。

学生Q.私も江戸時代に生まれたかったと思った。
コクジーA.お愛想のような「Q」は不要です。コンビニもスマホもない世界で君はどう生きていくのかね。

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