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人肌ってこんなに温かいんだって思った。思えば人の手をしっかり握ったことって今まであんまりなかったんじゃないか。いつからか、人と手を繋ぐことを恥ずかしいと考えていたのかもしれない。その手の温度は自分の心の冷たさをそのまま教えてくれたような気がした。皮肉な話だ。

温度がそのまま色になったような、白く華奢な手はほんのりオレンジがかっている。シワのないさらりとした指に、自分の指が吸い込まれるように絡む。自分の手の温度が移っていくような。そんな気がした。
手は人を映す鏡らしい。爪は荒く切られ、ところどころ皮膚が裂けて破けて、干からびた艶のない自分の手の甲と比べて悲しくなった。鼈甲のようにつるりとした感触、自分の不細工な指とは違う細い指、人柄がそのまま手になったような。そんな気がした。

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