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敢えて乗らなかった

 3番線の列車の到着を待つ後ろで、4番線の列車が発車して行った。乗り損ねたのではなくて、敢えて後発の列車に乗る。変な話じゃないだろ?どうせ、行き先は同じなんだし、7分急いだところで世界が救えるわけでもないし。

 思えば私の人生もずっとそんな感じだ。

 駅のホームに立ってさえいれば、列車は東西南北からひっきりなしにやってくる。その列車たちの行先はどれも同じ、だけれどそれぞれ経由地が異なる。陰惨な地獄を経由していく列車もあれば、停車駅もなくひたすら快走し続けるのだってあるのだ。

 刻々と時が過ぎ行くホームで立ち尽くしている。できるだけ停車駅が少なく、かつ、できるだけ長く座ることのできる列車を、私は待ち続けた。
 今もこうして、列車をまた1本見送っている。やがて、列車接近を知らせるこの耳障りなチャイムも鳴らなくなるのだろう。

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