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成長と共に置き去りにされるもの。

新学期。日本では4月だけどスウェーデンは8月。

まだまだこれから夏本番という気持ちになってしまうが、スウェーデンの8月は日も短くなり、だんだん寒くなってくる。今年は例年より少しあたたかく、まだ25度を超える日がある。

娘の小学校生活がいよいよ始まった。娘はずっと心待ちにしていて、「あと何回寝たら小学生?」と何度も何度も聞いてきた。


日本における小学一年生はスウェーデンでは正確には小学校準備学年förskoleklassという。校舎は小学校を使うが、一年生は7歳から。

昔はいきなり7歳から小学校が始まったがあまりにも子どもたちのレベルに差がありすぎたので、準備学年が導入されたらしい。

こちらの小学校には入学式はない。初日はオリエンテーションだが、親たちは朝送り届けて終わり。午後のお迎え時にちょっとした親御さんたちと先生の交流会が催されるだけ。式典や形式にこだわりはなくあっさりしている。

初登校の朝、娘のテンションは高い。先週からFritidという学童保育のようなものに通っていたので学校の場所自体にはある程度慣れている。
また、同じ幼稚園だったお友達が複数いるので、みんなに会えるのも楽しみなようだ。

日本と違って、登校は親が送り迎えする。学校に到着すると既にたくさんの人達が校庭に集まっていた。その様子に娘は少し圧倒されたようだったが、校門前での記念撮影には応じてくれた。

先生に案内されて集合場所へ一緒に向かった。
そこでは娘が来るのを心待ちにしていた友達が出迎えてくれた。仲良しとの再開。
もう娘は親のことなんか見ていない。幼稚園のときは別れがさみしくて、

「ハグ、キス、ハグ、キス、ハイタッチ」

のルーティーンを毎朝していたが、小学生になった娘にとって友達と先生の前でこれはもう恥ずかしいらしい。

ハグすらせず、「バイバイ」と行ってしまった。残された親はさっさと帰るしかない。

家に帰って玄関をふと見ると、幼稚園のときに使っていたリュックサックが目に入った。スウェーデンに引っ越した4年前にJunibackenという屋内遊び場で買った「長くつ下のピッピ」リュックサック。4年間毎日ずっとお世話になった。

水筒、粗相があったとき用の着替え、日焼け止め、ハンドクリーム、防寒着、手袋や帽子を詰めた。

幼稚園から帰ってくると、どんぐり、葉っぱ、小石が詰まっていた。これらは幼い娘が集めた宝物で、勝手に出すと娘に怒られる。

どんぐりが詰まったポケットを開けると全てのどんぐりから青白い何かが伸びていて妻が悲鳴をあげたこともあった。(イモムシではなく芽が出てただけだった笑)

今朝娘が背負っていった小学校の校章が入ったリュックサックと比べると、とても小さく見えた。背負い始めた頃は後ろにひっくり返るんじゃないかと思うほどに大きかったのに。
今やすっかり使い込まれて、くたびれている。糸がほつれたり、すり減ったり、シミがついたり。


まだ残っていた、枯れ葉や小石、ヘアゴムなどを出して綺麗にしておいた。
もうこれを背負ってどこかに行くことはないだろう。娘の頭の中にもこのリュックのことなんて残っていないだろう。


娘は成長と共に必要のなくなったものを後ろに置いて、前進してゆく。

私自身がこのリュックのように置き去りにされる日を楽しみにしている。


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