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ピアノ技術に関すること

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技術といっても専門的なことじゃなく、いつもの仕事での出来事や思った事柄をだらだらと
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#ピアノ調律

手に伝わってくるもの

手に伝わってくるもの

ネジの溝にドライバーがしっくりとはまると 金属同士が触れ合う柔らかい音が聞こえる。
ドライバーを握る力をクッと強めると、木の部品は乾いた声で「締まりました」と合図する。
この瞬間が僕は好きだ。
特に古い良いピアノのそれは、手に伝わる感触と枯れた木の音がたまらない。
ピアノのアクション「打鍵機構」には400本くらいのネジがついているだろうか。
でもこの緩くなったネジを締めなおす「増し締め」はものの数

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四半世紀のお付き合い

四半世紀のお付き合い

りんごの花が風に揺れる頃、年に2度のピアノ調律、春の部に赴く。
かれこれ25年続いているので、50回以上この邸宅に通っていることになる。
長いお付き合いもここまでくると歴史だ。

 ピアノの持ち主の現役時代は大学病院の外科医だった。
今年85歳になられた。
趣味のピアノ演奏はどうも最近気力がなくなりつつあるとか。
それでも定期調律は欠かさない。

毎回、調律作業が終わると次回の訪問日を決める。

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