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今日もごはんを食べよう。【読書】12

父さん「父さんは今日で父さんを辞めようと思う」

佐和子(私)「何それ?」

直ちゃん(兄)「あらまあ」

父さん「今日からは父さんじゃなく、弘さんとでも呼んでくれたらいいよ」

佐和子「弘さん?」

直ちゃん「それでいいんじゃない?」

佐和子「父さんが父さん辞める話聞いた?」

離れて住む母さん「父さんを辞めるんだっけ?教師を辞めるとは聞いたけど…」

佐和子「教師も辞めるし、父さんも辞めるんだって」

母さん「あらまあ。忙しいのね」

冒頭の、たったの数ページで、なんだかよくわかんない父さんの申し出がそれなりに受け入れられて、胸がざわざわするんかと思いきや何故か安心感があって、不思議だけど不自然じゃない家族の展開に、少しクスリとさえした。
父さんは父さんを辞めるし、母さんは離れて暮らしてるけど、みんなお互いをいたわりあって尊重しあって暮らしている、優しい家族の話。
別に家族だからといって何かに縛られてなくて、ひとりの人間同士として、毎日を自分の好きなように過ごしていく。

「家族って作るのは大変だけど滅多に無くなるもんじゃないから安心して甘えなさい」とか、
「人はその人が気がつかないところで色々守られてる」とか、

表面上の話じゃなくて本当に大切で温かくて意味のあるものが根底に流れて進んでいく物語がとても心地よかったし、この世界観にずっと浸っていたくてページをめくっていくのが少し寂しかった。

食卓に並ぶ、生クリーム蕎麦も、たっぷりの春野菜に卵の黄身とカリカリに焼いたベーコンをかけたサラダも、野菜とひき肉を何重にも重ねて上にチーズを乗っけて焼いたグラタンも、手作りのシュークリーム(卵の殻入り)も、全部美味しそうで、カラダにいい物が食べたくなった。

絶交しちゃった時に、直ちゃんみたいに謝れたらいいのにな。

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