あぁ越乃寒梅
先月のこと。近所のディカウントショップで特売だった「越乃寒梅」の普通酒、720mlを購入。冷蔵庫で冷やし、その晩さっそく一杯いただく。これがなかなかうまい。おいしい。好みだ。ついつい二杯目三杯目とすすむすすむ。夕飯では隣に座る妻。睨む。妻は呑んでも一杯程度だ。僕にもそれを強要する。一杯ぐらいでやめておけと。しかしこっちはそうはいかない。大酒呑みというわけではないけど呑まないわけではない。けれどもそんな妻が睨んでいる状況で無理に呑んでも後はどうなるかは目に見えている。楽しくない。めちゃくちゃ葛藤もあったが、その日はそこそこで我慢した。そしてまた日を改めて。翌日、そして翌々日も。呑む。やっぱりうまい。しかし720mlだ。すぐに底をつく。
ならばと妻の目を盗んで近所のディスカウントショップへ直行。こういうことは行動が早い。もう特売はしてなかった。残念。けど我慢できずに購入。今度は一升瓶だ。さすがにこの大きさだと冷蔵庫には入らない。それに妻に内緒で買ってきたもの。そもそも冷蔵庫には入れられない。数分間、熟考を重ねた後に妙案が浮かぶ。一升瓶は薄暗い倉庫の隅っこで保管だ。というよりここで待機だ。ここから毎日、妻の目を盗んでは一升瓶から冷蔵庫の小瓶へ。継ぎ足す日々がはじまる。グッドアイデア。妻には大事そうに呑んでるふりをしながら、少なくなった分は深夜、妻が寝静まった頃か、もしくは妻が仕事とか買い物に出かけた隙を狙って実行。しかしそんな幸せな日々もそうそう長く続くわけがない。やっぱし。昨夜は遂に。妻の強い視線が「越乃寒梅」に降り注がれた。ピンチ。
妻「長くあるわね」僕「そうかな。大事に呑んでるからね」妻「おかしい!」僕「何が?」妻「増えてない?」僕「何が?」妻「昨日より増えてない?」僕「そんなわけないやろー」といって話題をコロナに変えた。セーフ。危なかった。
しかし一升瓶の方も残りわずかになってきた。また妻の留守に買い足しに行かねばなるまい。 830文字
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