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も~っと!! 帰宅RTA~Caligula2 感想~


ネタバレ無し 帰宅まで7か月かかりました

 自分は気になった作品は原作まで履修したいし、ナンバリングは出来るだけ制覇したい派の人間である。この作品に関しても例外ではない。
 と言うのも、自分がカリギュラという作品を知るきっかけになったのは2だった。しかし、購入する際に1の存在も知り、折角遊べるなら1からやってみようか、と軽い気持ちで手を出した訳なのである。
 忙しくて全く進められなかった時期も挟んで、1と2両方クリアする──つまり帰宅する──のに購入してから7か月、約80時間かかった。大変だったが、非常に充実した帰路を辿ることが出来た。というわけで今回は「Caligula2」を紹介していく。

 「Caligula2」は2021年にPS4/Switch、2022年にPCで発売されたRPGゲームである。早速ざっとストーリーを紹介しよう。

 バーチャドール(VOCALOIDのようなものである)のμと彼女が創造した「メビウス」にまつわる事件から5年。詳細不明のバーチャドール、「リグレット」が人気を集め、仮想空間を作り出した。
 その空間「リドゥ」では、深い後悔を持つ人々が集められ、後悔をやり直した姿で高校生活を楽しんでいる。
 とあることをきっかけに、主人公は世界の違和感に気づき、カタルシス・エフェクトの力を得る。同じくカタルシス・エフェクトに目覚めた友人たちと共に「二代目・帰宅部」を設立。もう一人のバーチャドール・キィの助力を得ながら、リグレットと彼女に楽曲提供を行う「オブリガードの楽士」との戦いが始まる。

 本作は続編ではあるが、登場するメンバーが一新されている。そのため、前作の知識が無くても、ゲーム中に登場する知識だけで十分楽しめる作りとなっているのだ。2単品でも十分楽しめるのは大前提として、個人的には前作のプレイもおすすめしたい。μとメビウス、帰宅部に何があったのか知ることができる。
 自分がプレイした時は、先代帰宅部の話題が出るたびに、俺が部長だったんだぜ……顔をする二代目部長という構図がたびたび発生していた。部員にはさぞ不思議がられたことだろう。

 前回遊びにくく感じた戦闘が、シンプルかつ遊びやすく改良されていた。痒い所に手が届くとはこのことだろうか。1ターン最大3行動システム、アイテムなしの戦闘に慣れ切っていたが、1ターン1行動システム、アイテムありの戦闘に変わり、よりシンプルに独自の戦闘システムの良さが伝わるようになっていたように思う。
 アイテムが使えるようになったからと言って戦闘が楽になったかと言えば、個人的にはそうでもなかった。アイテムを使うにも行動を消費するため、切りどころが案外難しいのである。スキルか、アイテムか、回復ひとつとっても、その判断で後の戦況が異なってくる。
 戦闘のハラハラ感も、よりスリリングかつエキサイティングにブラッシュアップされていた。と言っても、自分の場合は毎ボス戦ハラハラし通しだったのだが、それもまた楽しかった思い出となっている。

 Caligulaと言えば音楽だが、今回も豪華なメンバーがそろい踏みだ。プレイ中は公式HPも薄目で見ていたので、本記事の執筆に当たり改めて見返してきたのだが、個人的にはYOASOBIのコンポーサーであるayase氏や、「フォニイ」で自身最速の300万再生を遂げたツミキ氏が参加しているのがアツい。
 彼らによる楽曲をリグレット役の香里有佐氏、キィ役の峯田茉優氏が華麗に歌い上げる様は圧巻である。人の心を理解したリグレット、まだそういった機微に疎いキィ、双方の歌い方の違いがふんだんに楽しめる。
 今回は戦闘中にバリバリかっこいいMVまで流れるようになったので、より歌詞や音楽が染み入る。Remixも相変わらず最高だ。ありがとう。

 そしてCaligulaシリーズ最大の特徴として、キャラクターの秘密に立ち入れる点が挙げられるだろう。前回からあるシステムではあるが、今回も続投している。
 人の痛みや後悔を、真に理解することはできない。心の痛みには指標がない。だから、同じ刺激を受けたとしても、感じる痛みは人それぞれ。翌日平気にしている人もいれば、二度と立ち上がれず、それこそリドゥに頼らざるを得ないほどに打ちのめされる人も確かに存在するのだ。
 だからこそ、理解しようと務めることが大事なのだと思う。どん底にいると忘れがちだが、人は独りではないし、独りでは生きていけない生き物なのだ。彼らのテリトリーに土足で入り込んだ自分を正当化したいわけでは無いのだが、それでも、たとえこの持論が言い訳でしかないとしても、彼らの事を理解したい、支え合って生きていきたいと、強く思った。

 同じように、個性豊かな楽士の面々について、もっと彼らのみている世界を知りたいと思った。OverDoseのように、リマスター版で楽士ルートが追加されたりしないだろうか……。設定を考えると少し難しそうだが、なんとかならないものかと天井を見上げるオタクである。なんとかよろしくおねがいします。

 プレイ時間はnormalで40時間程度。ストーリーをゆっくり読んでいたので、もっと早く読めれば時間も短くなると思われる。やり直したいことへ立ち向かうための帰路が、どうか楽しいものでありますように。


サムネに使ったキィ。我ながらいい出来だと思う。



ネタバレアリ 例えそれが絶望だとしても

 前回のネタが(初見でもわかる知識は入れつつ)バンバン使われているところを見て、1をやっていてよかったな……と痛感した。小説版はまだ読んでいなかったが、大体の概要はネタバレを踏んで把握していた。後で買おうと思っている。
 やはり、”特異点”について語らずにはいられない。検索除けの為名前を書くのは避けるが、”特異点”にまつわる選択はかなり迷った。どちらの選択も正しい。間違っていて欲しくない。だからこそ、仲間たちの言葉が染みたし、キィの言葉がなにより温かく背中を押してくれた。
 どれだけ絶望的でも、どれだけ0に近い可能性でも、諦めたくなかった。あなたを苦痛のどん底に叩きこむような選択であることは承知の上で、あなたが望んでいないのかもしれなくても、ただ、ただ生きていて欲しかった。

 過去の所業は、苦しめられた経験があるからよく知っている。全てをあざ笑う様は楽し気でめちゃくちゃだったが、どこか寂しそうだった。それはきっと、疎んでいたものを何より渇望していたからではないだろうか。ようやく与えられた機会の中で、”特異点”は何を感じ、何を思ったのだろう。
 いつか直接聞いてみたいと思った。選択の決め手はそんなものだったと思う。もちろんゲームなのだから、最終目的である現実への帰還を果たしてしまえばその後は語られることはないのだが、その先を望む欲をかいた。
 

 リドゥは崩壊し、人々は地獄へ舞い戻った。起きて、改めて見据える世界が、目覚めるということが絶望の始まりに過ぎなかったのだとしても、あの場所から持ち帰れたものはWIREのログだけではなかったはずだ。そう信じてやまない。

 さあ、後悔と恥にまみれた人生を。


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