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助手席からみた東京の夜景

思い出して泣いているのか、泣きたいから思い出すのか。眠る前に過去のことをふと考えることがある、時々。


昨日買い物に行った時にクリスマスを目前にアクセサリー店にひとりで買い物に来ている若い男性を見つけた。きっと彼女へのサプライズプレゼントなのだろう。

店員さんがキラキラとしたピンク色の紙袋に大きなリボンをかけて手渡していた。その彼は持ち歩くには照れくさいピンク色の紙袋を持って店を出てゆく。


そんなキラキライベントには無縁になってしまったし、もともと物には興味はないけどあんな風に照れくさいことを平然といや照れながらしてくれる意気込みが微笑ましく羨ましい。



昨日、思い出し泣きしてしまったのはタクシーの運転手のこと。過去の不倫相手。職業はタクシーの運転手。
彼のタクシーに1度だけ乗ったことがある。
しかも助手席に。


『同業者がみたらおかしいと思うから後部座席に乗れ』


と怒られたけど譲らず助手席に乗った。
高価なプレゼントもレストランも何も無かった関係だけどその助手席に乗った夜は特別な気分だったな。


ナビで私の泊まるホテルを目的地に設定。
なのにナビの教えてくれる道と違う道を彼は通る。


『ここが〇〇という場所だよ』


道を間違えたのではない。(一応)プロなので。
わざと遠回りして東京の夜景を私に見せてくれたのを知っている。


その日の前までの逢瀬はホテルで待ち合わせ。ホテルで会ってホテルで別れる、昭和歌謡曲。

夜からの勤務の彼をひとり、ホテルの部屋でデパ地下のお弁当を食べながら待つこと、彼がお金に困窮していること、全てが嫌になってしまって、嫌になったのは自分の不純さなんだけど途中からは気持ちを紛らわすために出会い系サイトで約束をした男性と夕食を共にし、その後に彼と会うようになっていた。


出会い系サイトで見つけるのは裕福な人ばかり。


彼の助手席に乗ったあの日だって、夜通し彼がタクシーを運転し続けて得られる日当ほどの金額の食事をたった2時間で済ましたばかり。


出会い系サイトの食事の相手はなんの躊躇いもなく黒のカードで支払いをしてくれた。当たり前に。かっこいいんだ、金払いが。


なのに眠れない夜に思い出すのはもう行けそうにもないレストランの料理じゃなく彼が横で運転する助手席に乗って見上げた夜景。何も貰ってないわけじゃない。彼には色々と貰ったのよ。


そう人に言ったらダメな男好きの刻印が押されそうだ、くっきりとおでこに。

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