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米津玄師 HENSHINライブレポ 2022.09.24(土)ツアー二日目

ハイパーナーバスを乗り越え、無事ツアー二日目を迎えた東京体育館。ちょうど台風が熱帯低気圧に姿を変え、ぱらつく雨と轟く雷が会場を盛り上げるかのようだった。

雨足が強まりだす16時すぎ、身分証明書とQRコードを提示しながらここで始めて自分の座席の位置を知る。

会場内は浮ついた熱気の人人人、もちろんコロナ前に比べると幾分も少ないとは理解しつつ、久しぶりのライブということもあり、その異様な雰囲気に圧倒されてしまう。

人々の熱気。場内に立ち込めるスモーク。ちなみに照らされるライトの影響で左右で色が異なっており、遠くは水色こちらは桃色で、アイネクライネを彷彿とさせるカラーリング。キレーだね。

ほどなくして会場が真っ暗になるが今日の主役は未だは登場しない。
代わりにスクリーンに映るは懐かしい車と、けむくじゃらの身体、それから長い爪。かちりかちりとハンドルにあたっては、ほのかな焦りやいさみ足を表現するかのようなリズムを作っていた。
うたたねする警備員の横をすり抜け、地下の駐車場に滑り込んでいく。

途中まで狼くんかな?と思うフォルム

ちらとミラーに映るは黄色と赤のボタンの目に、陶器のお面がハマったモフモフの頭。今回いきなりグッズの至る所を飾っているnigiちゃんが満を辞して登場だ。

車のトランクを開けて漁るnigiちゃん。青鬼かな?

このモフモフな怪獣は巧みなドライビングテクニックで車はNo.311に駐車。静かに車から降り、続いてトランクをゴソゴソと漁ったかと思えば取り出したるは緑色のじょうろ。なぜじょうろ?
(ここまで全く喋らないnigiちゃん。薄暗い地下の雰囲気とライティングがホラー映画を彷彿とさせるくらいの不気味具合。正直可愛いとは言い難い。言葉を選ばないとすれば醜いと言って差し支えないない、それがnigiちゃんである)

さて、なんとなく満足げにじょうろを持って、怪獣は歩きだす。そして立ち止まったかと思いきや「チーン」という小気味の良い音とともにエレベーターが到着を告げていた。

米津玄師も最近エレベーターに挟まったとか?

乗り込む際に扉に挟まる小ネタも挟みつつ、無事じょうろを持って乗り込むnigiちゃん。徐々に狭まっていく扉とそして再び真っ暗になった会場にあらためて「チーン」と音がして、そして彼はようやく変身をはじめた。

HENSHINライブレポ 2022.09.24(土)ツアー二日目、ついに主役の登場。薄いエメラルドグリーンのシャツ、しなやかな素材が柔らかに上半身を包み、濃い色のスキニーが元々長い足をより長く見せていた。
そして手にはグリーンのじょうろ。

  1. POPSONG
    ちゃらけてんなよーー。米津玄師!ダンサー集団を引き連れて記念すべき一曲目はPOPSONG。とりあえず生きてる。初手大号泣からはじまる予定調和。左右のでかいモニターではおもちゃの兵隊やら、猫足のバスタブが踊っている。いや手に持っているじょうろはなに?歌い出しは少し歌いにくそうにしている印象からだんだんと声が伸びていく。

  2. 感電
    前の曲のテンションそのままに空を飛ぶMVが話題になった感電が二番手に。背景のビル群のようなライティングがビカビカのMVの雰囲気再現で熱い。でもちなみにワンワンワンとにゃんにゃんにゃんでは犬と猫の絵文字がスクリーン上で縦に並んだ信号のように三つ点滅する様子を確認できる。なんだお茶目かよ。「肺に睡蓮…」の際は少し雰囲気が変わって雨降る窓に映像が変化。一点してシティライクなクールな印象。あまり意図まで汲みくれず、ライブの演出まで難解だぜ。

  3. PLACEBO
    はい、野田洋次郎。洋次郎はでてこなかったけど。でも成立しているのが個人的には感動した。この曲熱烈な恋愛ソングと思っているので、湿っぽくて、熱っぽくて、でも軽やかな掛け合いがたまらない。会場内のランウェイでこちらを見ながら歌ってくれる米津玄師。あとは特にいうことがありません。ダンサーさんがぐにゃぐにゃと骨入ってるんか?ってくらい崩れていく演出がすごくマッチして素敵だった。あと背景によく使われている絵具が混じっていく様子が受精のようにも、挿入のようにも思えてまざっていくんやなー、と。

  4. 迷える羊
    うわ!サンタマリアって言った!って思ってしまった。サンタマリア教に信仰が乗っ取られている…。背景で流れている映像がモヤのかかった地図のようにも砂漠や岩場のような写真を編集したように見え、「千年後に未来には僕らは生きていない」というようにラスサビで粉々に三角形の粒になって霧散していったのが印象的だった。曲調の優しさと演奏の厳かさのアンバランスさがライブだとより一層強調される不思議な曲だった。

  5. カナリヤ
    これくるんかー。の5曲目。カナリヤ。黄色の光と頭上から降り注ぐ白く細い無数の光がオリのように米津玄師を取り囲む。彼を逃さないように、そこに留めておきたいという欲望がそのまま具現化したような綺麗な監獄。そんな様子が変わるのは二番のサビから。今まで彼を取り囲んでいた白い線が少しずつ開き、会場中を照らしていく。そして現れるのは一つの窓と2羽の黄色いカナリヤ。ふと目を離した刹那の間に彼らの姿は跡形もなく消えていたけれど。

  6. Lemon
    特にいうことなし。紅白の記憶に乗っ取られている、いい曲だよね。

  7. 海の幽霊
    私的涙腺崩壊ソング。歌の進行によって浅瀬から深海まで変化していくアニメーションがあまりに綺麗だった。光の粒を集めたような映像で、雨の日の街中をガラス越しに眺めたようでもあり、万華鏡を除いたようでもあり、変化していくカラーと歌の盛り上がりがマッチしてほんと最高以外いうことがなかった。サビ時にでてくる鯨のシルエットもまた印象的。でけー。ちなみにサビ前の溜めから音が爆発するような進行がオーケストラというか、ライブらしくない感覚があったりする。(オーケストラよく知らないのに…)

  8. まちがいさがし
    「友達のためにつくった曲です」っていうから勘違いしてしまったけど、こっちだった。こっちだったーーーー。って正直思ってしまった。いい曲だよね。脳内では菅田将暉ボイスと重なって聴こえていた。

  9. アイネクライネ
    聴きすぎてイントロで絶対にわかる。でも最強。何回聴いたっていいですからね。いつかはガンにも効く。でも今回は背景がお花らしきもので、基本はすごく綺麗な形なのにサビになるとぐちゃぐちゃになって、分け目が曖昧になる。そしてその瞬間はどこか女性器のような淫靡さを感じる。この映像の変化が、この曲にある「人間はどこまでいっても一つになんかなれない悲しみ」と「それを諦めて二人で生きていく」ことを表しているのではないかと考えていて、ほのぐらいハッピーさが大好きで大好きでほんとたまらん。(多分この考察そこそこしてるから過去も言ってるかも)

  10. Pale Blue
    記憶なし。って書いたけどあれ?この曲でなんかひらひら飛んできたっけ?あとダンサーさんが抱きついていた気がする。シャボン玉いつ?これ?ひらひらの時に米津があたまにひらひら載せて歌っていたのしか覚えてない。。。

  11. パプリカ
    米津玄師が高い奴に乗ってた!!!そんでなんか座ってた!!!背景が真っ赤に燃える夕焼けみたいで、夕焼けを背景に座り込んでパプリカを歌うよねがあまりにもエモくて死んだ!!!!!!

  12. ひまわり
    「友達に作った」っていう期待してしまっていた方も結局やるのかよ…アンハッピーリフレインもやってくれ。海に行ってくれ。そして海に入らず永遠に二人でお話ししてほしい、本当にマジで。そしてまた演奏をしてくれリーダー。もちろんライブの演出もかっこよかったよ。黒と黄色って感じで。でもそれ以上にこれをここで歌ってくれたことが嬉しくて、それ以上はあんまりなにもないや。ありがとう。

  13. アンビリーバーズ
    もうかなり古い曲になってしまったアンビリーバーズ。正直めっちゃかっこい。ライブ慣れしている感じがビンビンに伝わってきてとても良い。ここでの光の色は白なんだなと、いつも思う。ライブの非日常を、「現実はクソだ」と表現してしまえる彼の特別を演出する特別な一曲なんじゃないかとずっと思っている。

  14. ゴーゴー幽霊船
    最高に楽しい、縦横無尽に走るライトが目に眩しく、背景の砂嵐がどこか懐かしい。

  15. ‪爱丽丝‬
    過去ライブとかと背景一緒な気がする、どこかに迷い込んだようなそこかしこをあてもなく歩いているようなアニメーションが毎度目に残る。あと今回ステージまでひかる感じもよかった。

  16. ピースサイン
    漫画のコマ割りっぽい感じで演者さん達が変わるがわる切り替わっていく様子が斬新で可愛かった。カラーリングもどこかアメコミを彷彿とさせる感じでたまらない。ヒロアカ最高!ヒロアカ最高!もちろん米津玄師が掲げたピースサインがデカデカとモニターに映し出される瞬間は、胸熱。みんなで一緒にピース。さらに胸熱です。

  17. KICK BACK
    やっちゃったやん。なに?ほんま……。もちろんやったらいいなって思ってたけど、でもやるとは思わなかった。赤、赤、赤、そして反転した黒で演出される血飛沫がチェーンソーマンでしかない。がなり立てる一歩手前みたいな無茶な歌い方が身を削って戦うデンジだし、カメラに向かって自撮りかましながら歌っちゃう感じとか自意識過剰っぽくて、自分に注目を集めたい思春期のデンジって感じだし、ベロとか出しちゃうし、両目見えてるし、ほんまありがとうございます、悔いとかないです、自分顔ファンいっすか?いやそもそも一生ファンです。キャラが憑依したようなその歌い方、作品への没入度がその悪魔とも評される解釈を生んでるんだなとすごく納得させられる時間だった。

アンコールはかけたら書きます。。。

ともかくnigiちゃんというのは「幼い頃の自己認知」なのではないかと思っている。幼少期自分を怪獣だと思っていた彼。他の人の話を理解できなかった彼が音楽を通して変身し、今の彼になっていくのだ。

(左右でボタンの色が違うのも左右で視力が違う彼自身を暗示しているのかなと。確か米津玄師の視力は0.15くらいで不同視だったはず、確か転けてそうなったとか?いやこれは唇の話だっけ…?)

物語は終幕を迎え、nigiちゃんに戻った怪獣の彼は車に乗って地下駐車場を後にする。

ライブという最高の非日常を終えて、日常の中に溶けていく。
アンビリーバーズの狼のように。

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