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【日がさ雨がさ】日本最強飲み放題!マニアックな店主の日本酒フルコース(四谷三丁目)

「飲み放題」のお店というと、とにかくビールやサワーを「たくさん飲める」、大衆的なお店のイメージ。20代のころよくお世話になっていました。

そんな、従来の飲み放題のイメージを変える地酒居酒屋さんが「日がさ雨がさ」です。2008年の開店時から「国内最強飲み放題(自称)」を標榜し、量・質・さらに提供方法までこだわった日本酒提供で人気を集めています。

今回、噂の「日本最強飲み放題」を体験してきました。お酒番である店主・宮澤さんの世界観が、とにかくすごいです。「ここでしか飲めない変わったお酒」などの言葉に惹かれる方、おすすめです。

ジェットコースターのような起伏に富んだ日本酒コース、一気に紹介します!

※お店の持つお酒のこだわりや芸があまりに多いため、細かい説明は省きます。「こんなところにお酒好きは興奮するのか」と思っていただければ。

長野を中心とした日本酒と料理を楽しめる

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店主の宮澤さんです。カメラを向いてくれていますが、手は高速でペットボトルをシャカシャカしています(1杯目のお酒を作っているところ)。クールで知的な職人さんに見えますが、注文が同時に殺到してテンパると「ワンワンワン!」と飼い犬の鳴き声を真似る愛犬家です。

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(とりあえずビールで検討)

日本酒は宮澤さんの出身地である長野県を中心に約30種ほど。ビールや焼酎、ジンにノンアルコールドリンクも豊富です。

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(噂の飲み放題。通常プランが写真の『プレミアム』で、さらに無敵になれるミラクル飲み放題もあります)

メニューから選ぶこともできますが、宮澤さんの世界を堪能したく、完全おまかせ(も可能です)でいってみました。では、スタート!

1杯目:木曽路三割麹(湯川酒造店)

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(いろいろ飲めるように60mlで提供してくださいました)

木曽路の限定酒からスタート。「山廃・麹比率3割、直汲み」と、日本酒好きが喜ぶ言葉が3つも入っています。

「通常は加水火入して商品化するお酒なんですよ。信州地酒を愛するめんどくさい(=こだわりの強い)お店同士の横の繋がりでわけてもらったんです」という限定品。しかも「お店でガスを注入してチューニングしています」とのこと。

日がさ雨がさPOINT:自分で日本酒にガスを注入する

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「ビールサーバーのガスボンベがあるじゃないですか。あれにこの器具をつないで、ペットボトルいれた日本酒にガスを加えるんです。ビールサーバーのあるお店ならどこでもできます」(宮澤さん)

日本酒は自然なもの信仰が強く、発泡のあるお酒でもガス注入したお酒にはさほどいい評価を聞きません。でも、日がさ雨かさでは面白いと思ったらガンガンやるそうです。

飲むと、これが本当に美味しい。甘酸っぱく、ガスは直汲みの開栓したてと感じられるくらいの微発泡。

「ネクスト?」と宮澤さん。「はい」というと、次のお酒へ。ストップというまでどんどん出てきます。

2杯目:こんな夜に(黒松仙醸)

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2杯目、「こんな夜に」。1杯目よりちょっと濃くてボリュームがあります。ちょうど注文していたつまみ「コチのてんぷら」と一緒に楽しむとぴったりです。

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「基本的には料理を見つつ、お客さんの好みにあわせてお酒を出して行っています。もちろんそれだけじゃつまらないので、緩急をつけたり、変わったものもはさんだり。トータルでおいしかったと思ってもらえたら」(宮澤さん)

うん。あいます。純粋においしいです。「ネクスト?」おねがいします!

日がさ雨がさPOINT:料理にあう&好みのお酒を勝手にセレクトしてくれる

3杯目:優勝 本醸造無濾過生原酒(田辺酒造)

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続いては「本醸造」。なのですが、精米60%(掛65%)、袋吊り、斗瓶囲い、氷温半年熟成と、スペックがいろいろすごくてよくわからないです。

「実はこのお酒は、革命君※のオリジナル。店主の齋藤さんと蔵元さんとで『最強本醸造を造ろう!』って話して造られたものです」

※故・齋藤哲雄さんの地酒専門店。小さな蔵を発掘し、育てるスタイルで、多くのヒット日本酒を生み出した人物。私も好きな酒屋さんでした。

日がさ雨がさPOINT:来年以降ないかもしれない、変なスペックの日本酒がある

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(裏ラベル。販売者:革命君のラベルは、もうこの世にでません)

4杯目:菊正宗 すだち冷酒(菊正宗酒造)

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続いては…なんとパック酒。それを凍らせてシャーベット状にしたものです。びっくりしました。すっきりでめちゃくちゃおいしい。4杯目でちょうど口の中がリセットされます。

「パック酒ですが、本当においしいんですよ。何がすごいって、これがAmazonで1パック1000円ちょっとだというところ。3年くらい前から布教活動をしています」(宮澤さん)

日がさ雨かさPOINT:パック酒もすごくおいしい!

5杯目:鳴海(東灘醸造)

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(出していただくお酒のラインナップが私の好みの真ん中すぎて恐ろしいです)

5杯目は千葉県・東灘醸造の「鳴海」。辛口・うすにごりです。

「実は、こちらも少しガスを加えています。うすにごりのオリを軽くしたくて」と宮澤さん。飲んでみると、甘みは少なく、苦味のあるドライな切れ味。ビールっぽい飲み口です。これまでの流れとは逆の味わいで楽しいです。

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珍味3点盛りは、左からホヤ塩辛・カツオ酒盗、唐千寿。

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信州名物という「しょうゆ豆」。地味ですが、どのお酒にもあう万能おつまみでした。食事メニューには「信州のつまみ」が多く、はじめて味わう味わいによりお酒が進みます。ちなみに、鳴海のドライさともぴったりでした。

日がさ雨がさPOINT:長野の「土地の味」で酒がすすむ

6杯目:豊賀(高沢酒造)

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(お酒だけの写真撮り忘れました)

「このお酒は、先ほどの『革命君』齋藤さんが、鈴傳番頭時代※に見出して、じわじわ取り扱うお店も増えてきた、そんな蔵のお酒です。『生原酒』というとしぼりたてすぐの新しいお酒が主流ですが、丈夫な造りのお酒なら、私はそれを『熟成』しても、おいしいと感じます」

※四谷の老舗地酒店。齋藤さんが独立前に所属していたお店です。

という「氷温熟成」です。飲むと…すごい、これはおいしい。甘み旨みボリュームがあわさっていて、舌についたその瞬間にもう美味しいです。

「大久保さんの細めの目が『カッ』と見開きましたね。ええ、これはおいしいんです」(宮澤さん)

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宮澤店主のもとには次々とお酒のオーダーが飛び込みます。それぞれ対応し、提供時にはお酒の説明をするため、常に大忙し。しかしその間も、客席の様子に目を光らせています。

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他の席のお客さんのお酒を選ぶ最中にちらっとこちらを確認。まさに、ちょうどあと2口で「ネクスト」でした。

この日、カウンターに並んだのは6名。ほぼ同時にお酒を飲み始めたのですが、出てくるお酒がすべて違う(2人組の場合は同じ場合もあり)こと。料理や好みに合わせているとは聞いてたものの、本当にひとりひとりに合わせているのです。

日がさ雨がさPOINT:ガチでひとりひとりにあったお酒を出してくれる(飲み放題で)

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(つまみが珍味ばかりになったため野菜をと、「店主実家産」と書かれていた「きゅうり味噌」を追加。角切りの小鉢かと思っていたら2本分ありました)

7杯目:十二六(武重本家酒造)×アブサン

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(これは???)

「どぶろくです。どぶろくって冬の新酒の時期にでるのですが、それを冷凍しておいたんです。そこに『アブサン』※ 、炭酸水を加えたものです」

※欧州を中心に作られる薬草系リキュール

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(ちなみにミントは、カウンターにあるこの観葉植物からむしりとりました)

すごいです。くせがすごい。だけどまろやかで飲みやすい。どぶろくの重いニュアンスが、がらっと変わります。完全に新しいお酒です。

「なんちゃってWAKAZEです(笑)」と宮澤さん。たしかに、WAKAZEでこういう味飲んだ気がします。

日がさ雨がさPOINT:未知の日本酒カクテルをいただける

7杯目:楽の世(丸井)

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ガツンと濃い味わいが人気の楽の世。こちらは得意の「店でガス注入」です。

「コーラって、炭酸抜けると甘く感じるでしょう?それと同じで、味が濃いものは炭酸があると甘みがとれてバランスが変わるんですよ」と店主。

お酒のパンチはあるけど「たるく」ないです。ガス注入、これ本当にすごい。もっと広がって欲しいです。

「では、少し加水して、そのまま熱燗にしてみますね」と宮澤さん。しゅわしゅわの楽の世を温めてくれます。温かくてまろやかなのにシュワシュワと軽め。軽いけど、楽の世(重いのが魅力)。矛盾するようで頭が追いついていませんが、とにかくおいしいです。

日がさ雨がさPOINT:同じお酒も冷酒・熱燗と比べさせてくれる

9杯目:女鳥羽の泉 (善哉酒造)

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「次は…驚きがなくて恐縮ですが」という言葉とともに熱燗が登場。長野・松本のお酒で、特徴はきれいな湧水。口あたりが本当にまろやかで、すーっと口に染み込みます。

ここ数杯、宮澤さんは「常温」「熱燗」両方だしてくれています。それも少量ずつ。熱燗は手間と時間がかかるため、一定量以上(2杯分〜が一般的)というお店が多いのに、飲み放題のごく少量の1杯も、わざわざお燗にしてくれるのです。

「自分の手間でできることはやろうと考えているんですよ。少量で熱燗にすることは、別に特別な設備が必要なわけじゃない。だったら、お客さんのためにやろうと(別のスタッフの方「○卓さまと○卓さまへお酒をお願いします。それぞれ別べつのお酒をご希望です」)……ワンワンワン!」

日がさ雨がさPOINT:ごく少量(60ml)でも熱燗をつくってくれる

10杯目:中乗さん(中善酒造店)
11杯目:岩清水 本醸造(伊賀屋酒造場)

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東京ではなかなかお目にかかれない「地元流通酒」シリーズです。特に「中乗さん」は常温で4年くらい熟成しているそうで、味がのっています。味がのるって、こういうことかと実感できました。

「『地元のお酒』ってよく聞きますが、長野は酒蔵が多く(稼働中は70くらい。日本で2位)ありますので、それぞれ個性があります。どうやって入手するかって? 私が長野に帰ったときに、地元のスーパーやショッピングセンターをまわっているのです(笑)」

日がさ雨がさPOINT:レアな地元流通酒もたくさんある!

12杯目(ラスト):ソガペールエフィス(小布施ワイナリー)

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ラストは、国内ワイナリーの小布施ワイナリーが、1年に1度つくる日本酒「ソガペールエフィス」です。それもセルフ火入れだそう。セルフ、火入れ?

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(商品の「生酒」表示を、自ら赤字で消しています)

生酒で出てくる商品ですが、火入れもおいしいかなと思って、私が自分で瓶をお湯につけて「火入れ」しました。瓶燗火入れって、実は結構難しいんですよ。慣れるまではバンバン瓶をわりました。

しかも、それを「熱燗」でいただきます。

果実味のある味わいですが、角がなく、口のなかにすごくスムーズに広がります。最後にぴったりで、おいしいです。

ジェットコースターのような日本酒コースがおもしろすぎる

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(カウンターの中央にある土偶フィギュア。長野は土偶の産出県だそうです)

お酒のラインナップの時点で従来の廉価な飲み放題とは別物。そして宮澤店主がオーダーメイドで出してくれる(さらにガス入れたり熱燗してくれる!)のは、本当に楽しかったです。

「自分としては、もう少し会話しながらまったりと合うお酒を出したかったです。2、3回きていただいてもネタは切れないストックがありますので、またご利用いただけましたら。しかし4回目はわからないです」

と宮澤店主。飄々とした雰囲気と、繰り出すマニアックなお酒のギャップが最高に面白いお店です。

次回は、料理もがっつりと楽しむつもりでのぞみます。
ありがとうございました。


 

もちろん、お酒を飲みます。