【日本酒蔵ボードゲーム】体験!借金してコンサルやインフルエンサーを雇ったら…酒蔵経営は甘くない
「日本酒の酒蔵経営」をテーマにした発売前ボードゲームが体験できる。
こんな情報を得ました。ボドゲはほぼ素人ですが「軽くお酒を飲みながら遊ぶ」ことに憧れがあります。それも「日本酒のボドゲ」と聞くと、参加せずにはいられません。
結果、想像以上のマニアックな内容とシビアな現実に直面し、酒蔵さんのすごさをあらためて思い知りました。
熟成酒専門店「いにしえ酒店」へ!
会場は北品川にある熟成酒専門店「いにしえ酒店」さんです。自慢の熟成酒をたっぷり見学し、酒蔵ゲームへの気持ちを高めます。
「蔵咲」日本酒好きによる日本酒好きのためのゲーム
会場につくと、前の部(2部制でした)がまさにクライマックスのシーン。
「『桶貝い』だ!」「俺の取引先が潰れただと…?」など、剣呑な言葉が飛び交います。思っていたよりもシビアな感じです。(でも楽しそう)
こちらが酒蔵ボードゲーム「蔵咲」です。プロデュースは西新宿にある日本酒バル「どろん」さん。数年前から開発を続け(この最近の営業できなかった期間)、ついに完成にこぎつけたそうです。
意外と難しいボードゲームのルール
まずは「ルール説明」が30分程度。時間割を聞いた時は「長いな…」と思ったのですが、ぜんぜん短いです。使うアイテムやルールが多く、一通り把握するだけでやっと。ボードゲーム初心者だから尚更でした。
ちなみに今回は「素面で参加」がルール。「お酒をのみながら気軽に楽しむ」とは少し毛色が違うのですね。
では、次世代のスター酒蔵を目指してゲームスタートします!
1年目、未来を見据えて先行投資する作戦
まずは「酒蔵選び」からはじまります。私が選んだのは「最初にお金をもらえる」属性の蔵。実績もないのに、いきなり多額の出資を得られたようなものです。
私の戦略は「最初にお金をかけて蔵を大きくし、結果として多くの賞賛を得る」です。酒蔵ゲームって、もっと夢とか目指すお酒の味とか、そういうのだと思ってました。
酒蔵の1年は「秋」からスタート
まず秋のシーンでは、経営視点で「今年の造りを前にまずなにをするか」と検討します。各プレーヤーが行動を選ぶのですが…ここにも「先においた順」「蔵人よりオーナーが強い」などゲーム要素があります。相手の出方をみつつ、春の販売を見据えて「仕込み」をするのです。
ここで私は資金力を見せつけ、高額の「最高の杜氏」カードをゲット。スター選手を獲得してきたオーナーの気分です。このほか、蔵人も追加で雇いました。仲良くしろよ!
ここで重要だったのは、実は「米」の確保。米は数が限られていて、早めに確保していなければ「高くつく」「お酒がつくれない=お金を出して桶買いになる」になってしまうのです。しまった、一番大事なお米を見落としてた!
冬、スパークリングと熟成酒の2本柱とする
冬は、秋の動きにより得られたもの(杜氏とか人員とか、お米とかお金とか)を使って酒造りを行います。
私が「最高の杜氏」につくってもらうのは「スパークリング日本酒」です。
ごりごりの杜氏が、世の中に迎合するような「スパークリング」を醸す。この選択、どうなるか…。
さらに、「熟成酒カード」を使い、初年度から「熟成酒」を造ります。(普通は2年目以降じゃないとできない)。これは「まだ競合がいないから確実に売れるだろう」という考えです。
「スパークリング」と「熟成」で、天下を狙います!
春、日本酒を売りたいけれど…
さあ春!できたお酒を「百貨店」「地酒店」「スーパー」などさまざまな販路で販売し、お金と名声を獲得する季節です。当然、ゲームですので「早い者勝ち」「酒質によって売れる、売れない」などの条件があります。
ここで最初の誤算が。急いでつくった「熟成酒」が、酒質レベルが伴わずにどこにも売れないことが判明しました。せっかく急いでつくったのに!
夏、資金が底をつく…
先行投資をした分、お酒をおもったより売れなかったのが響きました。
結果、一年がんばってくれた蔵人たちに支払う給料がなくなってしまいました。それに加え、実は私、冬にお酒をつくるための借金をしており…看板商品「最高の杜氏スパークリング」を売っても、まだマイナスだったのです。
このゲームでは、1年が終わった段階で借金が返済できなければその分評価がさがるというルール。よかった、現実じゃなくってよかった。
1年目は我慢の時期。最高の杜氏とみんな(お金なくても頑張ってくれた)のブラックなチームで巻き返しをはかります!
2年目、インフルエンサーを迎え、最高の杜氏が去る
2年目、ここで盛り返したいものです。
資金繰りで凋落した我が蔵の評価を回復させたく、私はさらに借金を重ね「インフルエンサー」を雇うことにしました。ただで蔵の評判があがるって聞いて。
新たに造る酒は…やっぱり「スパークリング」です。打倒「澪」を目標に、愚直なまでにスパークリング日本酒にこだわります。
さらに去年売れなかった熟成酒は、1年の熟成がすすみいい感じに。これで2年目は勝ちにいく!
酒造りの直前、「最高の杜氏」が引き抜かれる
嘘だろう…? 目を疑いました。「引き抜きカード」で、うちの杜氏が突然他のプレーヤーの蔵に移籍してしまったのです。本当の蔵でされたら大問題です。造り手がいなくてつぶれるとかリアルに聞く話ですし、このゲーム怖い。
なんとか借金を返済!
2年目、なんとかお酒を2本売ることができました(販路を確保できなかったスパークリング1本は「廃棄」。悲しい)。借金返済のため「夏」は蔵人を「見学ツアー」にむかわせ、現金を確保します。完全に自転車操業です。
そうして、2年間続いた借金をなんとか返済することができました。
しかし、頼みの綱だった「最高の杜氏」はもういません…。
3年目、「コンサル」を雇う
泣いても笑っても最後の1年。あとがなくなった私は「コンサル」を雇うことに。最後のお金をかけて、勝負にでます。
ラストの勝負は2本。純米大吟醸と純米酒。ここにきてこだわりのスパークリングから撤退です。純米系を一度はつくってみたかった。
ふと隣のプレーヤーを見ると、4つもタンクを運用し、さまざまなお酒を仕込んでいる。……うちの蔵も、本当はああいうのを目指していたはずなのに。
コンサルカード、使えない。
なんと、コンサルカードは発動させるのにお金が必要でした。お金は…もうどこにもない。コンサル…都度お金を取るなんてひどい。
最後の最後、イベントカードの乱発で盛り上がる
最終年とあり、みなさん隠していたイベントカードを次々と切り、場の熱気は急上昇します。
熟成酒専門店・いにしえ酒店の店主は熟成酒戦略一筋。最後の最後に「熟成酒ブーム」のイベントを起こしていました。こういう盛り上がりがゲームの醍醐味なんですね。
「マニアックさ」と「厳しさ」が特徴のゲーム
結果、私の蔵の評価は散々で、ダントツ最下位でした。他の名蔵がどんどんスターになっていくのを眺めながら、自社に残った人材をじっと見つめ続けました。
日本酒の世界は想像以上に厳しかったです。
何をするにもお金がかかるし、せっかくつくっても販路がない、販路をみつけてもライバルの蔵が棚を抑えていたら入る隙間がない。うれなければ給料も払えなくない。翌年の投資ができない。
インフルエンサーやコンサルといったわかりやすいものに飛びつきたくなり(他の人は遠心分離機とかに投資していた)、方針がぶれていく。
まるで、ダメな経営者の見本のような転落劇を味わいました。
酒蔵経営ボードゲーム、想像の数倍難しく、複雑、そしてシビアです。ゲームではあるものの、酒蔵ってこんなにいろいろなこと考えなきゃいけないのかと、改めて驚きました。
また、「火落ち」や「サーマルタンク」「連続蒸米機」など、マニアックな言葉が飛び交うと思わずニヤリとしてしまいます。「日本酒好き同士」で集まると結構夢中になりそうです。
今回の「素面参加」のルールも、やってみて納得。これは飲みながらでは絶対できなさそうです。それほど真剣勝負のボードゲームなのです。
いにしえ酒店さん、楽しい時間ありがとうございました!
もちろん、お酒を飲みます。