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「日本酒×白ごはん」のペアリング実験。白米がすすむ日本酒を探せ!(協力:ごはん同盟)

日本酒はよく「食中酒」といわれます。いろいろなタイプがあるため、だいたいどんな料理にもあいます。そして、そのペアリングの面白さを売りにしているお店もあります。

たまに耳にするのが「日本酒は米からできているから、ごはんの役割をできる」というもの。では「白米と日本酒を合わせるとどうなるのか」。お米のおいしい季節、そんな実験に挑みました。

お米のプロ「ごはん同盟」シライさんに相談

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お米のプロである料理ユニット「ごはん同盟」のシライジュンイチさんに相談してみました。ごはんのプロであるシライさん、もしかしたら日本酒とのペアリングも経験済みかもしれません。

「いや、やったことはないです。試したことがあるのは、おにぎりの具材を変えてお酒とあわせることくらいまで、何かしらの塩味がありました。

…日本酒とあわせるとしたら…甘みを同調させることがいいかもしれません。
お米では品種によって『あっさり』『しっかり』『もっちり』のタイプにわけることができますので、それらを合わせてみるとおもしろそうです」

ごはん同盟さん協力のもと、ペアリング実験を実施することになりました。さらに日本酒のプロであるSAKE Street編集長の二戸さんもゲスト参加。日本酒×お米の最適解を探る実験を行いました。

日本酒はフルーティ・辛口・どっしりの3種

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今回のお酒は「いまでや」さんと「SAKE Street」さんで用意しました。
違いがわかるよう、まったく異なる3タイプです。

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・フルーティー:会津宮泉 「写楽」でおなじみの福島のお酒です。果実のような華やかさ、しっとりしたやさしさが特徴です。

・辛口(すっきり):出雲富士 いわゆる「辛口」日本酒タイプ。甘さがほとんどなく、料理の味をすぱっと切ってくれます。寿司とかに合いそう。

・どっしり:不老泉 フルボディ系、やや熟成もあり。個人的には剣菱や仁井田本家などにも通ずる雰囲気があります。とにかくパワフルでガツンとします。

+日本酒のプロ・二戸さんの日本酒が乱入

これで検証!かと思いきや、同席いただいたSAKE Street編集長の二戸さんが、「お米とのペアリングを狙った」お酒を2本もちこんできました。

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左:笑亀 味噌麹
右:酔右衛門※  7年熟成
※酔=酒与
どちらも、癖が強いタイプです。

二戸さん「『笑亀』は味噌用の麹を使って仕込んだお酒で、旨みが強いのが特徴です。飲んだときに『塩味』っぽい要素を感じられるため、塩むすびのようになるかもしれないとおもいました。酔右衛門には『出汁』のようなニュアンスがあるため、ごはんとあわせたら『出汁茶漬け』のようになるかも…と選びました」

すごいです。プロが素人の実験を荒らしにきてます。

お米は3種類、釜で同時に炊き上げる!

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合わせるお米はこちら
・あっさり:青天の霹靂
・しっかり:つや姫
・もっちり:ミルキークイーン

シライさん「これらを、少し冷めてからくらべます。というのも、炊きたてはどのお米もおいしいもの。落ち着くと味の違いがわかるようになります」

ちなみにお米だけで味見してみたところ
・「青天の霹靂」=あっさりしていて何にでも合いそう
・「つや姫」=もっともオーソドックス。おいしいです。
・「ミルキークイーン」=まるで餅米?もっちりして甘みも旨みも濃いです

いよいよ、お米×お米でできた日本酒のペアリング実験、スタートです!

お米と日本酒のペアリング実験開始

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いよいよ検証開始です。米と日本酒、あわないわけのない親戚同士のペアリング。なぜこれまであまり誰もやっていなかったのかが不思議です。

その相性は……………

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「……」(ジュンイチさん)

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「……」(二戸さん)

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「……」

…なにも、感じません。

二戸さん「フルーティー、すっきりの順番で合わせているのですが、いまのところ『無』です…」

シライさん「『虚無』ですね。一周回って、それはそれでという気もしてきました…」

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(検証シートに書くことが、浮かばない)

基本的に、なにも感じません。

しかし、「濃い味のお酒」では、なかなか面白い組み合わせが見つかりました。ここからは主なペアリング結果を紹介します。

※ちなみにごはん同盟のしらいのりこさんは、ペアリングではなくシンプルに日本酒を楽しんでくれました。

米×米ペアリングでの新発見

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めげずにさまざまな組み合わせを試しました!特徴的な5ポイントを紹介します。

①フルーティータイプは、お酒の甘みが消える

フルーティーで甘みのある宮泉は、つまみがなくてもおいしいお酒です。しかし、ごはんと合わせると急に日本酒の甘みが消えます。

青天の霹靂(あっさり)は、印象が極限までゼロに。
つや姫(しっかり)では、ごはんの味に統合。
ミルキークィーン(もっちり)では、なんだか半端に似てきて気持ち悪い

ごはん自体が決して味の強いものではないにもかかわらず、そのごはんに印象をもっていかれるのは、不思議を通り越して不気味でした。

すごくいいお酒なのに、ごめんなさい宮泉。

②辛口タイプは、さらに虚無になる

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(おかわり。米×米はすぐにお腹いっぱいになります)

だいたい全部、なにもなくなります。
辛口のお酒は、つまみの味を「切る」のですが、その対象が同じようなニュアンス。味はもちろん違いますが、根底にあるニュアンスが同じなため、切っても切れない、切れたとしても、あとに残るニュアンスが同じという、食中酒殺しになってしまいました。

いいお酒なのに、出雲富士ごめんなさい。

③どっしり日本酒(不老泉)は意外といける!!

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きびしい戦いを強いられる日本酒の中で「どっしり」系の不老泉が大健闘。個性的な味わいがお米のやさしい味を包み込み、意外にもマッチしました。個人的にはミルキークィーンのねっとりした味わいと不老泉の濃厚甘熟さが、結構相性いいように思えました。

ちなみに、シライさんのベストペアリングに選ばれたのが「不老泉(どっしり)×つや姫(しっかり)」でした。

④個性派の笑亀は、ごはんの「おかず」になる

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単独で飲むのはちょっときびしいかも…と思うほど個性の強い「笑亀」。今回もっともお米とあう日本酒でした。持ち込んだ二戸さん、さすがプロです、狙いばっちりです。

二戸さん「笑亀×つやひめ、この組み合わせは永遠にループできる感じがします」

ちなみに私のベストペアリングは、笑亀×ミルキークィーンでした。
それも、お米→お酒の順番ではなく、お酒→お米の順に口にすると「おかず(濃い)→ご飯(受け皿)」のような、理想的な感じ方になります。

すごい、普通においしいです。

⑤つまみは、やっぱりすごい!

日本酒とお米、意外といけるのもある!!と興奮していたころ、しらいのりこさんがスッと出してくれたのがこの「つまみ」。三重県伊勢地方の郷土料理、サメの干物「さめのたれ」です。

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おいしい!!!!酒と、めちゃくちゃ合う。ものすごいおいしいです!!!
興奮するほどおいしいです!!!!

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ジュンイチさん、笑みが溢れる0.5秒前です。

これまで「合わない」烙印を押されてきたフルーティー「宮泉」、すっきり「出雲富士」が、ここで大復活します。フルーティーな膨らみ、飲みやすくもするどい後切れ、いずれもその魅力をいかんなく発揮して進む進む。やっぱすごいお酒です、お米単体とあわないだけで。

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自家製梅干し。しょっぱい昔ながらのおいしいものです。

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完璧です。

梅干し、ごはん、日本酒、すべてが圧倒的に美味しいです。

【まとめ】ごはんに合わせることは可能。しかし、もっといい世界がある

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(ちなみにタイ米をもちこんで炊いてもらいました。合いませんでした…)

日本酒とお米のペアリング、なぜ誰もしないのか。それは「どちらも味(おかず・つまみ)を受け止める役割だから」だと考えます。キャッチャーとキャッチャーのバッテリーみたいで、合わせる意味があまりない、というもの。

それでも、お米・日本酒のいずれかが「おかず」の役割を果たせる場合は、ペアリングの相性はいっきに向上します。

そして、やっぱり酒の肴は、酒の肴になるから酒の肴なんだ、と深く心に刻みました。実際に試してみて、当たり前の言葉に戻ってきました。

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「ごはん同盟」のシライジュンイチさん、しらいのりこさん、こんな実験にご協力いただき、本当にありがとうございました。

日本酒業界の二戸さん、プロのセレクトのおかげで「日本酒×米」の生きる道がかすかながら見えました。これがなければ無言で解散していました。

お米の美味しい季節、日本酒と一緒に(できればつまみもはさんで)楽しんでみてはいかがでしょう。

米×米ペアリング結果まとめ

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もちろん、お酒を飲みます。