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五反田「SAKE Story」レポート。旅するように日本酒を味わう、「食メディア」空間

「日本酒と地域」。この組み合わせ、最強だと思います。

高級なお酒も美味しいし、斬新なペアリングもすごい。だけど、どこかの地方でおじいさんが普通に飲んでいるお酒を、土地のつまみでいただくといった体験の方が鮮烈だったりします。

よく、「日本酒は土地の名物と合う」といいますしね(海に近い蔵の日本酒は魚に、山に近い蔵のお酒は山菜に、とか)。

そんな、「土地と日本酒」の奥深い魅力を教えてくれるのが、地酒専門店「SAKE story」です。

「日本を旅する」日本酒専門店

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場所は五反田。ビルの2階という、ややわかりにくい場所にあります。

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店内にあるこの黒板こそ、SAKEstoryの特徴。
3ヶ月単位で「ある地域」にスポットを当て、その土地の日本酒と土地の料理を提案しているのです。ちなみにご主人はもと旅ライターだったそう。

この日は「北陸3県」特集。海産物の美味しい日本海沿いとあり、期待がふくらみます。

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日本酒のメニューはこちら。
こうみると、北陸3県ってすごい。遊穂、手取川、菊姫、天狗舞、満寿泉、羽根屋、梵、そして黒龍と、銘酒ぞろいです。

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「北陸3県」にちなんだおつまみセット。
能登の絹もずく、ほたるいか、ごまどうふ、さばのへしこ、ふぐの卵巣漬け。
繊細かつ、塩味を立たせるところはぐっとくる。ほとんど知りませんが「日本海っぽさ」をしみじみ感じます。どんなタイプの日本酒にも合います。

そして、店員の方の「解説」がまたいいです。
どの地域のどの料理…かはもちろん、その一品をどんな人がつくっていて、どこに魅せられたから今回紹介しているなど、みっちりガイドしてくれます。

この話を聞くのと聞かないのでは、全然おいしさが違います。食べ慣れない食材・メニューだからこそ「耳から入る美味しさ」が非常に強いのです。

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お酒は「銀盤」と「梵」から。梵はとにかくなめらかでおいしい。特に銀盤は渋いです。つまみによってぐっと魅力がもちあがります。

おいしいです。

コロッケにポップコーン!意外だけど美味しい料理

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SAKEstoryを切り盛りするおふたり。
左が店主の橋野さん、右が主に調理をされていた小林さん。同行者によると、タイプの異なるイケメンが仲睦まじくやっている感じがなんともよいのだそうです。

料理は後半、ぐっとSAKEstoryの個性が加わります。

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名物の「すき焼きコロッケ」。かじると中から玉子があふれだします。甘辛で、肉とじゃがいもで、本当にすき焼きみたい。お酒いれる隙もなく食べ切ってしまいました。うまい。

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なんか音がするなーと思って見てみると…ポップコーン!

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実はこちらも人気メニュー。山椒の効いた和風ポップコーンです。
これがやたらうまい。山椒の香りが鮮烈で、ほどよい刺激があり、軽い。お酒がどんどんすすむ味です。見た瞬間、一瞬「ポップコーンかよ」と思った自分が恥ずかしいです。おかわりしたい。

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「るみ子の酒」を飲んでいると、ラベルの由来である「夏子の酒」のコミックを見せてくれました。酒がすすみます。1巻の内容は結構重いです。

ここは日本酒のメディア空間

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石川県の「春心」。今年美味しいと話題のお酒です。トロリとした密度の高い味でした。後半に飲みたいお酒です。

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こちらも石川県の宗玄。能登杜氏発祥の蔵として知られています。

ここで冒頭に戻りますが、「日本酒と地域」って、やっぱり相性がすごいと思います。

水や風土が同じため味わいに共通点があるというのはもちろん、昔から土地の人が親しんできた歴史があるという点も。また、同じ地域ということで歴史的に繋がっていたりすることも面白い。

では、このSAKEstoryがそんな「土地の味を再現する場」かといわれると、またちょっと違うのかなと思います。

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(カニの味噌汁)

土地と日本酒と本当に楽しむのであれば、旅行すればいい。そうじゃなくても、東京には多分各地の専門店があるでしょう。で、ここは「土地」の擬似体験とはまた違う面白さがある、

「語り部の視点」が加わるのが、いいのです。

SAKEstoryというレンズを通して、店主の方が感じる地域の魅力を掘り出し、解釈し、構成したうえで、ひとつの形として楽しませてくれる。

「SAKEstory」というのは、ひとつのメディアだと思うのです。
それもただ旅するだけでは得られない、語り部のいる旅。

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(金山寺味噌を使ったチーズケーキ。しっかり甘くて美味しい、なのに日本酒と合う!そして猫の顔型)

「いいなー、楽しいなー、素敵だな」と、美しい写真や映像の旅番組を見ているかのような満足感がある。そんな文脈のあるお店です。

だって、僕が以前一度だけ富山行ったときは、ダム見て、白海老を食べたくらいでした。なのにもう富山の「氷見糸うどん」(高岡屋本舗)が好きなんですよ。

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ちなみに、熱燗も猫のとっくりでいただけます。そう、SAKEstoryは猫が好き。そこもいいです。

知らない土地のお酒をもっと知りたいと思いつつ、むしろ自分の出身地の特集にも興味がでてきました。生まれ育った土地のことでも知らないものはたくさんありますし、旅人の視点でどんなストーリーを切り取られるのか、おもしろそう。

SAKEstoryさん、ごちそうさまでした。

もちろん、お酒を飲みます。