「こういうのでいい」と言える、日本酒とつまみを求めて。東京・神田のイベントバーへ
タイトルの通りです。
おいしい料理とお酒で溢れかえる飽食の時代、
「こういうのでいい」とつぶやきながら飲みたい夜もやってきます。
そんな時、SNSで次のようなイベントを目にしました。
「こういうのでいい」と言いたい。いくことにしました。
こういうのでいいんだよ居酒屋へ
お店は東京・神田駅にある「エデン神田」。日替わりでイベンターの人がカウンターに立ち営業している「イベントバー」です。
そしてこの日の営業が、あきとさん主催の「こういうのでいいんだよ居酒屋」というわけです。
駅からお店に向かう道中からすでに「こういうのでいい」を感じたくてうずうずしていました。早速カウンターに座ります。
「よければどうぞ。オリジナルのチロルチョコです」といただきました。聞くと「バレンタインに合わせて作ったものの余り」とのこと。
こういうのでいいんですよ。
「余り」くらいが、肩肘はらなくって。
この日のメニューは、日本酒5種類(ひとりで持ってこられる限界だったそう)と、これでいいんだよおつまみが10数種類。普段なら、日本酒のお店では「刺身」などを頼みがちですが、それは「ハレ」すぎます。今日はもっと「ケ」のつまみがほしいのです。
厳選に厳選した5つの「こういうのでいい」を堪能していきます。
こういうのでいい①板わさ
板わさです。
かまぼこはスーパーでよく見る、ピンクと白の普通のかまぼこ。提供は紙皿です。味は、普通です。
……こういうのでいいんです。
日本酒は岩手の紫宙(しそら)。お酒の方は企画者のあきとさんが「自分の好きなお酒」という視点でセレクトしたものとあり、「こういうの」を遥かに超えています。おいしい、きれいです。
しかし、提供はプラカップ。「ワンオペで洗う時間がないので…」とのことですが、いいんですこれです。
こういうのでいい②しゅうまい
続いてはしゅうまいです。皮と肉という組み合わせは餃子と同じなのに、なぜかしゅうまいの方がランク上に感じられる、などとりとめもなく考えながらいただきます。
練り辛子で鼻がツンとなる。わかっていても多めにつけてしまいます。
すごいです、本当に「こういうのでいい」が連続でやってきます。
こういうのでいい③ポテトサラダ
こういうのでいい、の原点かつ到達点のようなつまみです。
最近では、いぶりがっこやフライドオニオンやチーズなどを加えた「こだわり系ポテサラ」が居酒屋さんを席巻していますが、このポテサラは「ごく普通のポテサラ」。これはいいです。
お酒は「五橋」(山口)。赤色酵母をつかった「ピンク色」の日本酒です。
こういうのでいい④冷やっこ
注文すると、冷蔵庫から豆腐のパックを取り出し、どんと紙皿の上に。大量の鰹節を醤油でいただきます。
これがいいんです。茶色と白でできてるものはおいしいんです。
お酒は「千代むすび」(鳥取)。つまみが「こういうのでいい」分、お酒の上品さが際立ちます。そもそもお酒に合う「珍味」などは、お酒の綺麗さを際立たせるためにあるのかもしれません。
こういうのでいい⑤味噌汁
隣に座った人の「汁で酒を飲みたい」という注文方法に惹かれ、「〆」に頼むことの多い味噌汁をオーダー。ポットでお湯をわかし、素を溶かして完成。「アオサ」入りです。
お酒は「神渡」(長野)。さらさらとやわらかい飲み口ですが、今日の中では一番「辛口」に分類されるものです。
これでいい。熱い味噌汁と冷たい日本酒を交互にいただきます。温度の差って結構いいつまみ(口が変化して楽しい)になることに気付かされます。
味噌汁の提供は紙皿のため、早く飲まないと皿がふにゃふにゃになっていきます。これもこれでいいんです。
こういうのでいい夜もある
お店のBGMは昭和の名曲(70・80・90年代ヒット集)。
「これでいい」というのは「昔、貧乏だったとき」のような郷愁とセットで出てくることがありますが、そのためか古い曲がとてもよく合います。
実際には、自分で板わさだけで飲んだりしたことは、ほとんど記憶にありません。それでも「これだよこれ、これでいいんだよ」を知ったふうな楽しい気持ちになるのが不思議です。
「これでいい」は、ドラマや映画、小説の中の光景のように、自分にとってはフィクションの世界なのかもしれません。わざわざ「これでいい」を欲しがるのは、憧れの世界を擬似体験する、娯楽のひとつなんだな、と思いながら味わいました。
こういうのでいいんだよ。堪能しました。ごちそうさまでした。
もちろん、お酒を飲みます。