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日本酒に焼酎を混ぜると○○に?「すごいアル添」でアルコール添加体験!(SAKE Street)

日本酒に、焼酎を入れる。
…ちょっと意味がわからないかもしれませんが、この作業、日本酒造りの立派な技術で「アルコール添加」といいます。

純米酒/純米吟醸/純米大吟醸=お米と麹と水だけで作ったお酒
本醸造酒/吟醸酒/普通酒=上を造る過程で「アルコール添加」を行なったもの

なんとなくですが、「純米」がよいもので、「添加」したものは混ぜ物といった印象はあります。日本酒の世界には「酒は純米、燗ならなおよし」といった格言もあるくらいです。

しかし、この「アルコール添加」、香りや味を整える伝統技術。今回、そのアル添(てん)を擬似体験できるお酒があると聞き、SAKE Streetさんに行ってきました。

純米至上主義へのアンチテーゼ「すごいアル添」爆誕

販売店は浅草橋にある日本酒専門店SAKE Street。岩手県の酒蔵「菊の司」さんとSAKE Streetさんがコラボで作ったオリジナル商品だそうです。

SAKE Streetの二戸さんです。手前にある段ボールの中身が、今回の「すごいアル添」です。しばらくの間、これを飛沫防止の壁だと思ってました。

二戸さん「発端は、数ヶ月前にうちの藤田(店主)が『すごいアル添をつくりたい!』といいだしたことです。商品名はつけずにずっと『すごいアル添(仮)』と言って開発を進めていたところ、そのまま商品名になりました」

なぜ「アル添」なのかというと…「日本酒業界にある『純米至上主義』がアル添の日本酒を貶める風潮を感じています。そこに一石を投じたい」という思いがあったのだそうです。

当時の話をいろいろ話してくれる二戸さん。早く飲みたいけど、多分重要なところなのでぐっと我慢。

二戸さん「アル添の日本酒って、『かさ増し』『健康に悪い』のようなネガティブなイメージがあるんですよね。実際、僕が酒販店として接客をしていても『本醸造はちょっと…』という人は本当に多いんです」

でも、アルコール添加はお酒造りの技術のひとつですし、おいしいアル添はたくさんあります。たとえば『十四代本丸』なんかもアル添です。鑑評会の出品酒の7割以上・受賞酒の9割以上が吟醸酒などのアル添です」

本当はこの5倍くらい開発秘話をおしえていただいたのですが…早く飲みたいので割愛します。ここからは「すごいアル添」をとにかく味わいます!

スポイト付き!アルコール添加体験キット「すごいアル添」

実はラベルのグラデーションが3本つながってます

「すごいアル添」の中身
・純米酒(14度)
・アル添酒(17度)
・米焼酎(30度)
・スポイト/計量カップ

「すごいアル添」、なんと3本セットです。
この商品は、純米酒に実際にアルコール(焼酎)添加をすることで、アル添の効果を実感できるという体験型のお酒です!すごい…誰が買うんだろう。

また「アルコール添加」のアルコールって、粗悪なアルコール(ってそもそも何だろう)の印象がありましたが、ちゃんとした「米焼酎」なのですね。はじめて知りました。(アル添のアルコールは、焼酎や、サトウキビなどを主原料とする醸造アルコールらしいです)

まずは「そのままの味」を味わってみる!

同じ色セーターの2人

今回、ラベルデザインを担当された橋村さん(右)も一緒にテイスティングに参加いただきました。コンビニのつまみが並び、一気に宅飲み感が増します。

・純米酒:控えめフルーティー、でも味はボリューミー。ひとくちめからしっかり重みを感じます。おいしいけれど、2杯目以降ペースが落ちそう。

・米焼酎:香りがずばっと鼻に抜けます。アルコールだ。すっきりしているけど、味の膨らみや濃さはさほどないです。

・アル添:……………

めっちゃうまい!!!プロのアル添、めっちゃうまいです!!!

蔵で純米酒に焼酎を足したものがこの「アル添」らしいのですが…びっくりするほどおいしいです。もともと純米酒は、少し華やかで重みがありました。この「アル添」は、味の印象はそのままに、重みが軽減され、すーっとした切れ味に。重いと感じていた部分が消え、バランスがよくなった感じです。

「すごいアル添はすごいんですよ♪」と得意気な二戸さん。

二戸さん「アル添されることで『フルーティーだけどキレがいい』という酒質になります。酒屋の接客でもこういう味をリクエストされることはありますが、純米酒ではなかなかぴったりのお酒を提案できないものです」

自分で「アルコール添加」してみよう

それぞれのお酒を味わったところで、ここから「セルフアル添」にチャレンジ。「すごいアル添」には、ブレンド用のスポイトと、アルコール度数ごとの「添加レシピ」がついています。

結構くわしいレシピ。中身は購入者特典です
いろいろアル添する2人

この「アルコール添加」面白いです。スポイトで計測しながら加えていくのですが、アルコール度が1度かわると味もがらっと変わります。

たとえば、純米酒からアルコール度が1度高い15度は、味・香ともに増加。ボリューミーな果物のバナナみたいな味が顔を出します。
さらに焼酎をくわえて16度になると、今後はまろやかさと重さが増えて「カスタードクリーム」のような要素も。どんどん味が変わっていきます。

「すごいアル添酒」と「セルフアル添酒」で比べてみる

こちらが発案者であり店主の藤田さん。業務をおえ「先に帰ります」というところを撮影

次は完成品としての「アル添」と自分で混ぜた「セルフアル添」を比べてみます。同じ酒・濃度なのに、味は全然違いました。自分で焼酎を足していったものは「トゲトゲ」しているのです。なぜだ。

二戸さん「セルフで『アル添』したほうは『つぶつぶ』した印象がありますね。焼酎の『前割』のようなものでしょうか。自分でアル添したものでも、実はしばらく置いておくと味が調和しますよ」

細かい度数はおいておいてがんがんいきます

ちなみに、二戸さん、橋村さんの「好みのアル添具合」を聞いてみると…

二戸さん「僕は15度(ちょっと足し)。純米酒のニュアンスが残っていて好きです」

橋村さん「私はハードリカー好きですので、17度(本来のアル添の濃度)。あ、それにさらに焼酎足したのもおいしかったですよ。新しい飲み物感がします」

商品が想定しているアル添より、さらに焼酎を加えてハードアル添することもできるのですね。ここから「すごいアル添」で自由にアル添してみます。

すごいアル添でいろいろ遊んでみる

自由自在にアル添をする橋村さん

すごいアル添遊び①追いアル添

橋村さんに習い、純米酒にどんどん焼酎を足していきます。
アルコール度数17度から、18、19…あれ、結構いけます。舌にぴりつくアルコール感はありつつ、味は崩れません。さらにもう少し…20度になったところで「これは焼酎だ」と脳の認識が変わります。日本酒と焼酎の境界線を知った気分です。

橋村「お酒がすすんでいくと、後半に高アルコールにしたくなるので、そんなときにいいですね。最終的には、純米酒と焼酎が1対1くらいまでいけました」

すごいアル添遊び②別の焼酎でアル添

コンビニで買ってきました

次は、コンビニとかでも手に入る安い焼酎でアル添してみます。チューハイなど「割る」ことの多いこのタイプの焼酎(くわしくいうと連続蒸留の焼酎)。おいしいのか、まずいのか。

……(アルコール1度プラス)あれ?
……(アルコール2度プラス)え、あれ?

違いが、わからないです。

そんなまさかと、やってみる二戸さん

商品の方の「すごいアル添」は、一滴加えるごとに味や香りが変わっていくのに、安い焼酎は変化なし。むしろ、純米の濃さが調和されてさらさら飲める印象です。

二戸さん「……この焼酎は、本当に無味無臭なんでしょうね。度数は増えているのに、飲み口は少し加水したくらいの変化。アルコールのすーっとした香りは立ちますが…」

「高アルコール=飲みにくい」のではないのですね。知らない間にアルコールを増してしまう、恐ろしいのみものです。

もう、スポイト使わず適当に混ぜ始めました

二戸さん「(別の焼酎の添加体験は)ある意味、よかったです。普通の焼酎はただ味が薄くなるだけで、掛け算のようなおもしろさはありません。もしその楽しみがあったら、この商品の意味がなくなるので…」

橋村さん「応用はききそうですよね。買ったお酒が甘くて重いときに、こういう焼酎足してバランスをとったり!」

感想:すごいアル添は、すごかった!

この猪口も持参しました

最後は熱燗。これを「酒は純米、燗ならなおよし」のメッセージ入りお猪口でいただきます。

すごいアル添、楽しいです。もともと「美味しい日本酒」なのですが、焼酎を足していくことで印象がくるくる変わります。混ぜるほどに色がかわる「ねるねるねるね」で遊んでいる(酔いながら)気分を楽しめました。

アル添って、すごい。まんまとそう実感しました。

二戸さん、橋村さん、お話きかせていただきありがとうございました!

おまけ:みんなの「すごいアル添の楽しみ方」

最後に、Twitterで見つけた「すごいアル添」の楽しみ方をいくつか貼ります!

独創的な楽しみ方をされた方、ぜひお教えください!

もちろん、お酒を飲みます。