見出し画像

「焼酎レジェンド」と「ネオ角打ち」!五反田のすごい酒屋さんへ(内藤商店・桑原商店)

東京・五反田というと「飲み屋さんが多い街」というイメージ。しかし私はこの駅をおりるとき、だいたい「酒屋さん」を目指してやってきます。

今回、五反田にある「すごい酒屋さん」を紹介します!

焼酎のレジェンドに会いに「内藤商店」

画像1

駅から徒歩10分ほど、大正元年創業という有名な酒屋さん「内藤商店」があります。ここ、以前仕事で焼酎の本の仕事に携わった際に「焼酎界のレジェンドのお店」として教えてもらったところです。

まずは、中の棚を見てください。

画像2

(カップ酒の壁)

画像3

(300を超えるという焼酎たち)

画像4

(泡盛もすごい!)

画像5

(もちろん日本酒も!)

と、これらの棚の間をぐるぐる見て回るだけで楽しくなります。人気店らしく、次から次にお客さんがやってきてはお酒を買っていきます。「気になるものがあればいつでも説明しますね」というフランクな感じも素敵です。

画像6

さらに、内藤商店さんの楽しみは「久しぶりにくると新しい商品が増えているところ」にもあります。たとえば写真は日本酒の「天美」。いま話題の新しいブランドです。歴史あるお店なのに、どんどん商品を入れ替えているのです。

店主・東條さんの「若い世代への想い」に背筋が伸びる

画像7

(ご無沙汰しています!)

こちらが、店主の東條さんです。「私の写真?まあいいよ。どうせもうすぐ地獄いくんだからさ、あはははは」と、まだまだご健在です。

「商品を新しくしないと、お客さんが新しい味を発見できないでしょう。これまで扱ってきたお酒がおいしいのは十分わかっているけど、あえて変えていくようにしているんです」

画像8

(ちなみに東條さんは、商品の質問をすると、造り手の考えや味の特徴など、ものすごく丁寧に教えてくださります)

「もうひとつは、酒の世界には、若くて頑張っている人がいっぱいいるんですよ。そういう人をなんとか紹介していきたい。

実は昔はね、私も焼酎の『伝統』を守ろうと思っていたんですよ。100年、200年かけてできた素晴らしい世界だと考えていたので。一度、西酒造(宝山)の西陽一郎社長とぶつかったこともあるんだけどさ、そのとき彼が言ってたんですよ。『昔の人は、昔の時代の飲み手に向けて商品をつくっていた。だから私は、今の若い人にむけた酒をつくって、新しい歴史をつくっていく』ってね。それで考えが変わったんだ」

画像9

たとえば焼酎でも、黒木本店や渡邊酒造場、柳田酒造など、30代〜40代の世代が先頭にたって酒造りに取り組んでいる蔵をしっかりと紹介されています。

画像10

私の好きな「白石酒造」のお酒も、以前「彼はこれからの焼酎界を背負っていく天才だ」とこちらで教えていただきました。

画像11

意外にも人気の日本酒「新政」もプッシュ。佐藤社長との付き合いは長いそうで「彼は日本酒の市場を変えた存在だ」と話します。

画像12

(ちなみに、天井は空です)

「私みたいな80代のおじいさんを応援したってしかたないんだよ。若くて頑張っている人がこれからの世界をつくっていくんだから。あなた(=大久保)も(若い層の一部)だよ、これから社会をつくっていく人を、私は応援するから、いつでも(酒を聞きに)いらっしゃい!」

ちなみに、最近若手のスタッフの方主導でInstagramを始めたそうです。
「これみてやってくる人もいて、おもしろいものだね〜」と東條さん。

路地裏に見つけた日本酒ギャラリー「桑原商店」

画像13

その帰り道、たまたまのぞいた路地の奥に「酒」の看板を発見。

画像14

近寄ってみると、やっぱり「酒」。

画像15

「桑原商店」。酒屋さんのようですので、入ってみます。

画像16

ひらけたスペースに瓶ケースを使ったテーブルが複数あり、奥にはガラスのショーケース。剥き出しの壁と鉄の骨格の棚、インダストリアルな雰囲気です。

画像17

(迎えてくださった先代店主(おそらく))

「うちはもともと100年ほどやっている酒屋です。ここはその倉庫を改装したもの。今は若い甥っ子が社長としてプロデュースしています」

実はここは、現社長がアートの仕事に携わる傍ら、知り合いのクリエーターとともに手がけた「日本酒ギャラリー」&「角打ち(立ち飲み)」&「ワークショップ会場」などを兼ねるスペース(=つまり飲めて遊べる酒屋さん)。現在(2021年7月)は立ち飲みは行っていませんが、常時30-40種類程度を30mlから楽しめるそうです。

画像18

(グルメ雑誌dancyuで「ネオ立ち呑み」として紹介されたそうです)

「若さ」と「意思」を感じる日本酒ラインナップが楽しい

画像19

壁一面のショーケースは3度に保たれた巨大な冷蔵庫。扉がない(店員の方が裏から回って出してくれる)ため温度を一定に保てるそうで、品質管理だけれなく日本酒の「低温自家熟成」にも取り組んでいるそう。

「そのほか、棚やカウンターはDIYで作ったものが多いんですよ。ええ、それはそれは大変でした」

画像20

(角打ちでは大人気だという「ボーミッシェル」と、フランスで醸す日本酒「WAKAZE」)

ショーケースの中はというと…「新しい世代にむけたお酒」が多い印象。

画像21

「日本酒応援団」は、2015年創業。若い日本酒ベンチャーです。

画像22

鈴政宗のおしゃれなラベルの酒も!都内ではあまり目にしないお酒です。

画像23

(熟成酒で知られる達磨政宗は、あえて「新酒」で入荷。お店でじっくり熟成させます)

個人的な楽しみですが、酒屋さんの「ラインナップ」をみるのが好きです。酒蔵との関係や、地元のお客さんの好み、店主のポリシーといった、そのお店がお店である個性が見えるからです。

桑原商店さんの場合は、100年かけて築いてきたセレクトに、WAKAZEのような新しいお酒を意欲的に取り入れ、強く打ち出している。

お酒の傾向が似ているお店は他にもあるとおもいますが、このようなお酒の「濃淡」は、真似のできない魅力だと思うのです。

そのため、「ここのラインナップなんとなく好みだな」と感じられれば、だいたい何を買ってもハズレなしで楽しめます。

画像24

(こだわりの珍味の棚もあります)

今はまだ販売のみですが、角打ち再開したらまたお邪魔し、桑名商店カラーのお酒をいろいろ楽しみたいです。

http://to-plus.jp/

お酒の新しい風が集まる五反田の名酒屋さん

画像25

今回購入したお酒。

(内藤商店)
左:浜娘(赤武酒造)。20代の若き杜氏が率いる蔵の、地元むけ銘柄。
中:旭万年(渡邊酒造場)。渡邊兄弟が、自ら畑を耕し原料から作る焼酎。
(桑原商店)
右:斬 純米吟醸(カネタ玉田酒造店)。初めてみました。現在10代目の蔵元杜氏が腕をふるっているそう。「食中酒に最高ですよ!」という説明をうけて購入。

時代にあわせて革新を続けている日本酒・焼酎の蔵を、販売という最前線で応援している内藤商店さん、桑原商店さん。ともに創業100年以上の老舗の気概と、次の時代を見据えた取り組みが見られ、そしてなによりもすごくお酒好きな空気が素敵でした。

また、近々お邪魔します。五反田の2つの酒屋さん、おすすめです。

もちろん、お酒を飲みます。