見出し画像

Nomu-Yomu paper 第十号【ログ】

 この内容は2020年1月19日にみやこめっせ(京都)で行われました「文学フリマ京都」にて配布いたしましたフリーペーパー「Nomu-Yomu paper 第十号」の再録となります。

お酒を飲んで本を読んでる人のペーパー Nomu-Yomu paper 第十号

2020.1.19(日)読酌文庫、文学フリマに出店す

 文学フリマに足を運ばれた皆様、初めまして。この度、諸々の趣味が高じて文学フリマにも出店することにした読酌文庫と申します。
 昨年の夏に趣味で書き始めた小説「はなり亭で会いましょう」を一冊にまとめ、文学フリマで発表してみたいなぁ……と思い、九月・十月・十一月と悪戦苦闘しながらエピソードを書き連ね、十二月にはヒィヒィ言いながら編集。そして今日が来ました。
 脱稿するまであんなに苦しんだくせに、時間が過ぎると「二巻はいつ頃出せるようになるだろうか」などと、のんきなことも考えてしまいます……。
 普段は一箱古本市なる、古書販売を主体としたフリーマーケット系イベントに出て(といってもこの活動も始めたのは二〇一八年からなのでまだまだ新参者)こういった読み物ペーパーを発行・配布しております。

2019年の…

 読書系SNSとして読書メーターを利用しているのですが、このSNSには月ごとに読んだ本をまとめるだの、お気に入り本をまとめて展示する本棚機能だのがあります。なので、年末年始休暇のヒマに任せて、二〇一九年のマイベスト本棚を制作。折角なので今回のフリーペーパーではマイベストに選んだ本を十冊紹介してみたいと思います。……スペース足りるかな?

十位……わたし、定時で帰ります。
新潮文庫 朱野帰子 著

画像1

 二〇一九年春にドラマ化もされて話題になりましたね。定時で帰り、お気に入りの中華屋でハッピーアワーを楽しむ主人公。しかし不本意ながらも、チーフを引き受けることになったプロジェクトが、クソ上司のおかげで大炎上&壮絶デスマーチ! 果たして定時で帰れる日は戻ってくるのか。婚約者との生活は大丈夫なのか? プロジェクトは無事に完了するのか。お仕事小説であり、妙齢女性の複雑な恋愛や人間関係事情もあり、昨今取りざたされている働き方についても考えさせられるお話でした。続編も出ているので、こちらも今年読みたいなと思います。

九位……本屋、はじめました。
苦楽堂(ちくま文庫で文庫化) 辻山良雄 著

画像2

 東京にある個人書店「title」を店主が開店するに至った経緯や、目指す店の形。さらには開店するにあたっての事業計画書なども開示した一冊。新刊書店の新規オープンは個人では難しいとされるのですが、やり方次第では可能性があるということも気づかされ、興味深い。大型書店チェーンの存在やネット販売の普及など、個人の街の本屋が減ってきていますが、是非とも魅力ある小さなお店も残ってほしいものですね。

八位……日本酒に恋して
主婦と生活社 千葉麻里絵 著(イラスト目白花子)

画像3

 日本酒普及させ、その楽しさを広める働きをされている千葉麻里絵さんが歩んだ道を漫画化した一冊。行ってみたいお店、飲んでみたい日本酒の銘柄が増えてしまいます。香りや味覚の科学的成分から考えだされた、斬新な酒と肴のペアリング。これまでの常識に囚われない、自由な楽しみ方を提案する千葉さんの想いがビッシリ詰まっています。

七位……上を向いてアルコール
ミシマ社 小田嶋隆 著

画像4

 一見ダジャレのようなタイトルとは裏腹に、アル中になってしまったコラムニストの実録は恐ろしいとしか言いようがありません。……ひとつ前に日本酒プッシュする本を上げているのに何ですが、やはりお酒はほどほどにしないとな……と思うのです。自戒も込めて、心に刻まれた本となりました。

六位……みんな酒場で大きくなった
エルマガジン社 太田和彦 著

画像5

 おいおい、結局酒を飲む本を挙げるのか! という感じなのですが、ほどほどに楽しむならばいいではありませんか!(開き直り!)あちこち居酒屋巡りをしておられる太田氏が、俳優や小説家の方々とサシ呑み対談。実に羨ましい仕事である! 私も気の利いた店で飲み食いしながら対談したエピソードを書いたら本にしてもらえるようにならないかしら……多分無理だろうな。

五位……駒姫 三条河原異聞
新潮文庫 武内涼 著

画像6

 ここに来て歴史小説! 太閤秀吉が天下人として絶対権力を振るった頃……わずか十五歳で秀吉の甥・秀次に嫁いだ最上家の駒姫は、何の運命のいたずらか悲劇に巻き込まれてゆく。悲劇のヒロイン駒姫の堂々とした生き様。彼女を慕い最後まで傍に仕えた侍女おこちゃの審美眼と、許嫁への想い。そして最上家は姫とおこちゃを救出すべく、あらゆる手を尽くすが……秀吉を恐れる他家は悉く最上家と距離を置く。果たして救いの手は届くのか? ラストは涙なくしては読めませんでした。

四位……今日のハチミツ、明日の私
ハルキ文庫 寺地はるな 著

画像7

 ダメな恋人にズルズル付き合ってしまい、何の後ろ盾もない場所に放り出された主人公が、自分にできることを武器に、出会った人たちに助けられながら新しい居場所を作っていく。それでも前を向いて生きろ! そんなメッセージが感じられました。何となく宮下奈都さんの「太陽のパスタ、豆のスープ」に似た何かを感じたのですが……巻末の解説を読んでびっくり! 解説はその宮下さんが書かれていました。小説の設定も、登場人物像も、全く違うんですが、夢見たはずの恋人と一緒に暮らす道を絶たれた主人公が、もがきながらも自分の新しい道を見つけていくところが似ているのかな。

三位……RDG 氷の靴 ガラスの靴
角川文庫 荻原規子 著

画像8

 お気に入りの胸キュン学園和系ファンタジー小説「レッドデータガール」の番外編エピソード集。ニヤニヤが止まらない! 深行が泉水子のことをどう思ってたのかという本編の別視点話もいいし、書き下ろしとなる真響中心のスケート教室エピソードもいい! 本編ではクールでカッコいい才媛だった真響の恋(?)の行方が気になるので、是非とも続編を書いてもらいたい!

二位……京都府警あやかし課の事件簿
PHP文芸文庫 天花寺さやか 著

画像9

 二〇一九年、京都本大賞受賞おめでとうございます。現代の京都を舞台に、神霊や妖怪などが関わる事件の専門部隊「あやかし課」が活躍する痛快活劇。先輩後輩間の恋愛模様もニヤニヤ。私自身、京都に住んでることもあって、舞台となる場所が想像しやすく楽しかった。もしかすると私、塔太郎氏と同じ高校卒かもしれない……。今後、コミカライズやアニメ化などのメディア展開がされないかと注目しております。

一位……京洛の森のアリス
文春文庫 望月麻衣 著

画像10

 あやかし課と迷ったのですが、やはり一位はこちらで……。ちなみにこの作者である望月麻衣さんは「三条寺町のホームズ」で過去に京都本大賞を受賞されています。京都のようだけど京都じゃない。不思議な力が働く京洛に迷い込んだ主人公・ありす。この世界で生きていくために、本当の自分を探すことに。不思議の国のアリスモチーフかと思いきや、それだけに収まらない、和テイストのファンタジー。心からやりたいことをしないと、生きていけない京洛の世界は、恐ろしくもあり、行ってみたくもあり……。シリーズもまだまだ続いている様子なので、二〇二〇年も展開が楽しみです!

2020.1.19 読酌文庫(寝覚の朔)
Twitter:@00dokusyaku00
個人ブログ:月花読酌
読書メーター:ID 363201
書影は版元ドットコムより
また、読酌文庫は一箱古本市のほか、文の里(大阪)にあります「みつばち古書部」にも参加しております

本ペーパーは無料配布しておりますが、無断での複製、転載などはおやめください。
本やお酒にまつわるイベントがありましたら、お知らせいただけると嬉しいです。

果てしない自由の代償として、全て自己責任となる道を選んだ、哀れな化け狸。人里の暮らしは性に合わなかったのだ…。