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アイドルとのオンライン握手会を通して『感動を売る仕事』こそ現代に必要だと確信した

「あなたの順番は現在10番目です。」

もうすぐ、時が来る。この日のために就活、勉強、バイトと苦難を乗り越え続けてきた。

「あなたの順番は現在5番目です。」

いや、待てよ。本当に存在するのか?俺なんか一般人が会話するなんてあり得るのか?彼女はテレビの向こうにしか存在しないんじゃないのか?

「あなたの順番は現在3番目です。」

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どうしよう。何を話そう。ここまで数ヶ月間ずっと考えてたのに頭が真っ白だ。カメラの角度はこれでいいのか?マイクちゃんと入ってるか?

「あなたの順番は現在2番目です。」

せっかくのチャンスだ。CD3枚分のチケットを使って得た20秒間、最大限楽しもう。いや、俺が楽しませるんだ。絶対覚えてもらおう。

「あなたの順番は現在1番目です。」

あ、ちょっと無理。まじ吐きそう!待て、髪型大丈夫か?なんかダサくね?ん、なんか顔ブサイクじゃね!?だめだ、ちょっと生まれ直してくる!

「あなたの番です!3、2、1、スタート!」

あ、やばい。

「は、初めまして!おのたつと申します…」

て言っても、知らんだろ、俺のこと。

「え、おのたつさん?いつもレター送ってくれるからわかったー!」

刹那。僕の鼓動は急速に速まった。全身を駆け巡る緊張。名前を呼んでもらった高揚感。そして、知ってくれていたという衝撃と感動。僕は座っていた椅子から滑り落ちそうになった。

そうか、俺はこのために。この日のために、生きてきたのか。

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本格的にファンになった頃には、コロナが広がりつつあり握手会は一切開催されていなかった。ライブに行きたくても行けず、せっかくハマれたのに全然活動を応援できなかった。

何度も何度も自分に来た遅すぎるブームを嘆いた。もっと早くハマっておけばと後悔した。その気持ちをnoteの記事にして公開もした。(うまい)

しかしそれと同時に、僕の闘志は燃えていた。このコロナ禍でもなんとかすれば自分のことを知ってもらえるんじゃないか?
闘志とか言ってるが、完全にただのキモいオタクの幻想だ。

最近のアイドルにはメッセージアプリというものがあって、毎月300円で推しからのメッセージを受け取れるのだが、その中に自分からレターを送れる機能もある。

「これしかない。誰よりも面白くて誰よりも印象に残るレターを誰よりも送り続けよう。」

僕の挑戦の日々が始まった。

始めてみると自分の日常の報告をしたり応援メッセージを送ったりするのはとても幸せな時間でめちゃくちゃ楽しい。みんなもぜひやってみてほしい。

あくまで自己満足のためにあるものなのだろう。と最初は思っていた。しかし、万が一本当に読まれているとしたら、なるべく『読みやすく、要点をまとめて、手短に』を意識しなくてはならない。

これは就活のESを書くときよりも注意していたかもしれない。行数。語感の良さ。絵文字。短文の中にも気にすべき点は山ほどある。この点が僕にとって挑戦だった。

またレターには写真も添えることができるのだが、僕は必ず写真も添えるように心がけていた。オタクからクソ長い文章が何通も送られてきたら読む気も失せるだろう。アイドルだって人間だ。

写真と言っても自分の写真を送っていたわけではない。そんなキモいことするわけないだろ。もうすでに、十分にキモいけど。

日常起きた面白いことや感動した場面を写真に収め、笑える文章とともに送るのだ。自分の生活を振り返るきっかけにもなるし、もっと楽しいことをしようと思える。

今年1番頑張ったことかもしれない。きっとTOEICで独学945点を取ったことよりも頑張った、と思う。

ふとこれまで送ったレターの総数を数えたら、今年7月から送り始めて現在70通だった。意外と少ないっすね。

ちなみに、本当にどうでもいいことで、ほんの些細なことだが、このレターを1通送るのには120円かかる。そしてオンラインミーティングは8秒間会話するのに1000円のCDを買う必要がある。

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僕は決してこれを高いと思わないし、むしろ有意義な消費だと感じている。これが今回のテーマ、『自分の中で価値あるものにお金を使おう』というものだ。

『無料』や『低価格』という言葉が溢れかえる現代では、つい何もかもを安価で手に入れようと考えてしまいがちだ。

YouTubeで無料の情報を得られたり、低価格のサブスクで音楽が聴き放題だったり、それが当たり前の時代になっている。

以前とあるアーティストのオンラインライブがあったのだが、そのライブに対し僕の友人が

「YouTubeでライブ配信してくれたらな〜。広告収入で元取れるだろうし、そうしてほしい。」

と言っていた。果たして本当にそうだろうか?

確かに運営側の収益としてはそれでも成り立つかもしれない。しかし問題はそこではないと思う。

自分が応援している人、グループの活動を応援するためにすらお金を惜しむようになってしまっていることが問題なのだ。これは現代社会に蔓延する病気だと思う。

僕はそのアーティストのライブを見るために金を払うのには全く躊躇はなかった。むしろしばらくライブに参加できていなかったため、ようやく本当の意味で応援できるんだ、と喜んでチケットを買った。

もしそのライブが無料で見れるものだったら得られないような感動もきっとあった。『お値段以上』の価値が確かにそこに存在した。

バンドやアイドル、芸術家の活動とは『感動を売る仕事』であり、生活必需品じゃないし、形に残るものでもない。でもそれを通して僕たちの中には感動や記憶が残り、他では絶対に得られない経験ができる。

このコロナ禍や長く続く不況によって人々の財布の口は固く閉じてしまっている。財布の口が硬いのは悪いことではないが、自分の中で価値のあるものにまで金を使わなくなってしまうのは問題だ。

倹約家であると同時に悪い意味の『ケチ』にもなる。

何もかもが当たり前のように安価で手に入ってしまう現代では、どうしても商品やサービスの『努力』や『時間』の存在を忘れてしまう。本来僕たちが払う対価とは、そのようなものに感謝するためにあるはずだ。

そんなことを、アイドルとのオンラインミーティングで感じさせられた。『感動を売る仕事』には目に見えない価値がある。

何かに価値を見出したなら、それに感謝し、相応の対価を支払う。本来売り手と買い手、送り手と受け手は平等なのだ。商売とはお互いが幸せになるものだ。

僕は「本当に価値のあるものにはしっかりお金を使おう」と決意してから、自分のお金の使い方を本当によく考えるようになった。

歩いた方が得か、電車を使って無駄な時間を省く方が得か。自炊した方が得か、買ってきた方が得か。全てその時々でその天秤の傾きは変わる。だからどんな時も考え続けることが大切だ。

お金を使う時、「そこに費用と同等、またはそれ以上の価値はあるか?」と意識するだけで視野は一気に広がる。そして『感動を売る仕事』などの世の中に溢れる『本当の価値』に気付けるのだと思う。

また自分の中で価値の基準を持つことも有効だ。僕の中では『レター代』の120円が価値を推し量る物差しになっている。言ってみればオタク為替だ。キモいね。

しばらくは固定相場制だけどな。ガハハハ

決して「オタクになれ」と言っているわけではない。自分の中に価値の基準があるといろいろ便利になる。値段とその中身のバランスを考えるようになり、付き合いで行く興味のない飲み会を断れたり、費用対効果が超絶高いサービスを見つけられたりする。

人生はやりたいことだけやってても時間もお金も足りないものなのだから、やりたくないことや不要なものに無駄遣いする余裕は1ミリもない。

高い税金や高いスマホ料金は「仕方ないものだ」と諦め、惰性で払い続ける人もいる。少し自分で考えてみればiDeCoやつみたてNISA、格安SIMや楽天モバイルなど、少しでも得できる道はたくさん広がっているのに。

日本人には貧乏だと嘆く割には何も考えていない人が多すぎる、と僕は思う。考えよう。投票に行こう。給料明細を見よう。税金を知ろう。学ぼう。考え続けよう。

僕も「銀行に預金する価値ってなんだろう?」「コンビニで飲み物買う価値はどんなものだ?」「これを今買うべき理由はなんだ?逆に買わない方がいい理由はなんだ?」など、常識だと思っていたことにも疑問を抱いて考えられるようになった。

僕もまだまだ賢いお金の使い方ができているとは言えない。だからこそ、とにかく自分の頭で考えてみる。これが現代人全員に必要なものだと思う。

まさかアイドルのオンラインミーティングからこんなことを考えさせられるとはな。本当に偉大だな。さて、今日もレター送っちゃおうかな!うーん、最高!

皆様、良いお年を。

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