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Mリーガーの一打④その1(11/6第2試合:『軍師』勝又選手の判断)

みなさま、こんにちは!!カザラキです。
半月ほど空いてしまいましたが、今日もMリーグで目を引いた試合をお伝えしたいと思いますのでよろしくお願いします!!

とその前に、11/6(金)のMリーグの翌日、11/7(土)にあった「雀王決定戦」について紹介させていただきたいと思います。というのも、この「雀王」というのは私が所属する日本プロ麻雀協会においての最高タイトルであり、その最終戦がちょうどこの日に行われていたのです。
そしてその最高峰に挑む選手がこちらの方々⇩

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今期からMリーグにも参戦していて、今協会で最も強い男、堀慎吾現雀王
今まで2度雀王になっていて、戦術本も高く評価されている金太賢前雀王
そして前回の雀王決定戦で最後まで堀雀王を追い詰めた矢島亨選手
最後は雀竜位を2度取っていて、前期A2から昇級を決めた吉田基成選手

協会の顔ともいえる実力者たちが4日間20回戦を戦ってきたのですが、19回戦を終えた段階で以下の成績。

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前回と同じく堀選手と矢島選手の争いとなり、最終半荘を前になんと2.2ポイント(=2200点)差の大接戦!!最後は相手より一つでも順位が上になれば勝ちというドキドキの展開となったのですが、そこで天を味方につけたのは…

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雀王初戴冠となる、矢島亨選手!!
最後は嬉しさのあまり涙する場面もあったので、お時間のある方はぜひ最後の一局を下の動画でご覧ください。

と、ここで矢島新雀王について少しいい話を。
実は矢島選手、「やじ研」という研究会を主催していて、そこで新人プロを熱心に指導しているのです。私もこれまで2度ほど参加させてもらったんですが、打牌選択や押し引きについてのアドバイスをいただき、とても勉強になりました。そう、まだ入りたての新人プロにも門戸を開き指導する、そんな懐の広さと熱量が矢島選手にはあるのです!!

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はい、少しMリーグからは離れた話になってしまいましたが、個人的に、矢島選手は近いうちにMリーガーになる選手だと思っているので、ぜひ皆様もチェックしていただければ幸いです!!

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というわけで!Mリーグへと戻ります。GAME START!!

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東1局はヒサト選手の親番。
ドラは2筒で、早速南家のたろう選手が七対子ドラドラの一向聴。アガれそうな単騎+ドラをしっかりと右端に置き、リーヅモチートイドラドラウラウラという長い呪文を唱える準備をしています。

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しかしこちらにも七対子狙いの選手が。
勝又選手もひっそりと七対子を聴牌し、とりあえずのダマ5筒単騎。
そう、単騎待ちというのはなかなか難しいもの。待ち牌を選べる利点はあれど、その枚数がMAX3枚と限られていて、自信のない待ちでリーチをした後で追っかけられたりした日には心臓バクバクもの。
しかし相手の出方を窺うことが得意な『軍師』勝又選手はそんな状況でもしっかり山に残っている牌を見定めながら、虎視眈々と「その時」を待つのです。

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と、そこに2枚切れの白。誰かがツモれば恐らくツモ切られる牌、あるいは誰かが既に安牌として持っている可能性も…。しかし王牌に眠っていればあとは誰かに首を刈られるのを待つだけという絶望的な状況になってしまいます。さあ、皆さんなら何を切る??そしてリーチは??

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勝又選手が選んだのは赤5筒切りの白単騎ダマ!!
ドラなしで残り1枚に賭けるのは不利だという理由でしょうか。あるいは今はまだ「その時」ではないと悟ったのでしょうか。今はまだいい待ちを探りながら相手の攻撃にも対処できる手形とします。

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しかしその赤5筒に食いついたのがヒサト選手。素早くポン!して打2筒。そろそろ終盤に差し掛かるところで現状の2シャンテン状態では間に合わないという判断でしょう。2900点の連荘狙い。

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そして2巡後岡田選手も3萬を切って一向聴となるのですが……先ほどからずっと右端にあるのは確か先ほど勝又選手が待ちにしていた白!!
次巡にでも勝又選手が待ちを変えてくれれば助かるのですが…

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ぎゃーーー!ここで勝又選手がタイミングを見計らってのツモ切りリーチ!そして…

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これは仕方ない。岡田選手が直後に切った最後の白が御用となってしまいました。ただ不幸中の幸いとしては、勝又選手のリーチ宣言牌をヒサト選手がチーして一発が消えた事。岡田選手→勝又選手に3200点の放銃。

さて、ここではやはり勝又選手のリーチ判断が面白いですね。なぜしばらくダマで潜んでいながらこの瞬間にリーチと出たのでしょうか。
まず一番大きな理由は親であるヒサト選手の鳴きでしょう。残りの赤牌の居所は不明ですが、鳴いてドラのターツ(特に2筒→1筒の切り順で)を切ったヒサト選手の打点としては2900点~5800点あたりが予想され、「満貫以上ではない可能性が高い=そこまでリスクは高くない」という点が勝又選手を多少攻撃的にさせたのだと思います。他にも「巡目が深くなり当たり牌を掘り起こす可能性が高まった」ことなども理由にあると思いますが、いずれにせよ『軍師』らしさが出た東1局となりました。

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続きまして東2局。こちらは親のたろう選手の手牌ですが、いいですね。發が対子の2シャンテンという手牌ですが、みなさんはここから何を切るでしょうか??

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何となく浮いた2索を切りたくなった方もいるかもしれませんが、やはり1巡目なら高打点の種は置いておきたいですね。ということで123の三色同順の種となる2索は切らずに進めるのが正解。横伸びもある7索をキープしつつ、9筒の対子落としを選択。

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すると3巡目に早くも聴牌。三色同順にはなりませんでしたが、發の出アガリも期待できるためそのままリーチ!!
……しましたが、この局は一人聴牌で流局となりました。

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続く東2局1本場は岡田選手のリーチに対し、親満の聴牌を入れたたろう選手が追っかけリーチするも、宣言牌が当たり牌となり3900点の放銃。
そして東3局はたろう選手にとっては珍しい手なりのリーチに勝又選手が飛び込み、1300点の放銃。

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というわけで横一線の点棒状況で迎えた東4局。ここで大きく点棒が動きます。
まずはたろう選手が4枚目の2筒をポンして、得意の「遠い」ホンイツ仕掛け。アガリも遠いですが、その分しっかり守備力も確保しながら進んでいきます。

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さてその直後、勝又選手に待望の8萬が入るのですが、直前にたろう選手が2筒をポンしていて2筒はありません。普通の場況なら5索を切って両面とリャンカンの一向聴に受けるが普通だと思いますが……この状況でどう打つのがよさそうでしょうか?

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勝又選手の選択は、打3筒!
2筒がなく、たろう選手が筒子のホンイツのため5筒もそこまで期待できる牌ではないことから、思い切って2シャンテン戻しとしたのですが……

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さすが勝又選手、これが大正解!
次巡に最高の6萬を引くと・・

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更に3索も引いて、聴牌。リーチをするかと思いましたが、ここはダマを選択。打点は少し下がりますが、やはりたろう選手の筒子が注目されている以上、ダマっていれば萬子は比較的簡単に切られる牌。更に7萬などの好形変化もあり、出アガリでも7700点なら悪くないでしょう。

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しかしたろう選手もアガる気は十分。西、5筒と鳴いてようやく一向聴。少しプレッシャーをかけるのですが…

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やはりこちらの方が早いですね。
待望のアガリ牌を自分でツモり上げ、一人飛び抜ける4000点オール。南場を前に大きなアドバンテージをものにするのです。

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そして続く1本場。まずはヒサト選手が絶好の7筒を引いてリーチ!といくと・・・

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同巡、岡田選手も聴牌。するのですが…ドラ待ちの愚形。2600点は確約されていて、リーチの相手は子。押すか引くか、おそらく麻雀強者の間でも判断が分かれるような手牌ですが……

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岡田選手は聴牌を取ってのダマを選択。
そして次巡、危険牌をツモったところで、南を切ってオリるのですが・・・

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同巡、ヒサト選手がドラをツモ切り!!!結果的に岡田選手がアガリを逃した格好となり、放銃を回避したヒサト選手はオカルト的にアガれそうなところですが…

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はい、その通り1000点.2000点のツモアガリとなるのでした。

さて、ここで気になるポイントと言えば、岡田選手の選択。ドラ待ち愚形の2600点(+裏ドラやツモなど)で子のリーチに対して追っかけリーチと行くべきかどうか。
個人的にはこのくらいが判断の分かれ目ではないかと思います。まずメリットから見ていくと、リーチしたからと言って放銃率が一気に上がるわけでもなく、自分がアガった場合は自分の点棒が増えることに加えて相手のアガリを防ぐことにもつながるからです。
ただデメリットを言えば、まず+αはあるものの、今のところ打点が2600点ということ、あとはドラ待ちということで他家からの出アガリが全く期待できない点でしょう。筋ひっかけになっても出ないですしね。

というわけで今回の判断の是非としては「いいとも悪いとも言えない」という中途半端な結論とはなりましたが、たろう選手もYoutubeでの自戦振り返りで「どっちがいいか微妙」と言っていたので、皆様も「今回より状況が少し良ければリーチ」、「少し悪ければダマ/オリ」という基準で判断していただければいいかなと思います。

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というわけで試合は勝又選手をヒサト選手が追いかける展開で南1局へと進むのです。

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まずはトップの勝又選手がドラ2枚を持っての白仕掛け。ドラをツモるか鳴けるかすればかなり有利となるのですが…

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岡田選手もなかなかの手牌。この手牌からは5萬や5索を切れば一向聴となるのですが、将来の好形を見ての9筒切り。プロであれば当然の一手かもしれませんが、そういった「当たり前の手を当たり前に打つ」ことは意外と難しく、少し他の事に気を取られていたりメンタルがやられていればできないことも多いのです。

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そして5筒をツモってどうするか。ここで岡田選手は河を見渡し…

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打5萬とするのです。ゆっくり高打点を見るなら打8筒も十分ありますが、おそらく対面が6筒を切っていることで7筒待ちも悪くないと思ったのでしょう。そして次巡・・・ 

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4筒を引いて、「次こそは!」と7筒待ちでリーチ!!!

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しかしそれに立ち向かったのが親のヒサト選手。2筒をポンして147萬待ちの聴牌ですが、1萬は役がないためアガれません。はい、麻雀のルールブックにはそう書いているのですが…

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3巡後にツモって来たのは先ほどポンした2筒。リーチが入っている時にカンをすればカンドラの他にカン裏ドラもプレゼントすることになりますが、ここは「魔王」ヒサト選手の判断が光るのです。
「カン!!!!!!!」
してツモって来た牌が…

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アガれる牌ではなかった1萬!!!!
「ツモ!!!!」
そう、麻雀には嶺上開花という役があるのです!!

「リンシャン、ドラ1。1000点オール。」という点数的には地味なアガリではありますが、「麻雀攻めダルマ」との異名も持っているヒサト選手、インパクトは抜群のアガリで勝又選手への追撃態勢を整えるのでした。

と、このあたりでまた時間が無くなってしまったので、続きはまた週末とさせていただきます!次回は「魔王に立ち向かう岡田選手」というテーマで、岡田選手の勝負師としての側面について深く見ていきたいと思っているのでぜひお読みください!!今回もフォローや「スキ」、サポートなどをしていただければありがたく思います。それではまた!

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