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Mリーガーの一打①その2(10/6第1試合:村上選手の守備力と立直判断の難しさ)

皆さんこんにちは。
今日は前回の続き、10/6の第1試合、石橋選手、村上選手、近藤選手、多井選手の対戦カードから、気になる局をピックアップしてお届けいたします。前回は東2局までしかお伝えできませんでしたが、今回は最後まで行きたいと思いますので最後までよろしくお願いします!

さて、まず点棒状況を振り返ると、村上選手がアガリを積み重ねて現在44000点のトップ、次いで31900点の多井選手が2着、石橋選手が3着(20000点)、親の跳満を打った近藤選手が4着(3700点)となっています。
そして東3局、9巡目となった状況がこちら。

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親の近藤選手がダブ東をポンして、捨て牌的にそろそろ聴牌かな?というところでこちらが村上選手の手牌。さて、何を切りましょうか。ちなみに親に対する現物はなく、筋もありません。トップだしそろそろオリたいのですが、完全な安牌がないのであれば3筒くらい押しますか?それともドラの南?あるいはタンヤオに向かう9索?

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ここで村上選手は悩みます。じっくり時間を使って場を見渡し、考えます。この表情を見てください。何ともいい顔をしているじゃありませんか。完全に麻雀に入り込んでいて、首をかしげながらしっかり考えています。そして考え抜いた答えが、、

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なんとここでアガリをほぼあきらめ、守備に徹する打4萬!
もう間に合わないとみて、中途半端に打つのではなく、この手牌の中から最もマシな牌を選び抜きました(見にくいですが、5巡目に2萬が、8巡目に7萬が切られていて、1-4萬は当たりにくい)。そしてその後も手の中から最も安全度の高い牌を抽出していきます。

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どうせ完全な安牌がないのであればオリずに攻めた方がいい、そんな考え方もあるでしょうし、実際それが正解となる局面もあるでしょう。それでもこの局面で村上選手はオリを選択し、この手牌でもワンチャンスの7筒を打ち、結果流局となりました。ちなみにオリ始めた時の近藤選手の手牌がこちら。

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微妙に攻めていれば9索で5800点の放銃となっていたかもしれません。実は村上選手も守備力に定評のある打ち手。決して自分の手牌におぼれず、追いつかなさそう、放銃しそうであれば冷静に最適な一打を探し出す。これぞプロの一打!と言えるでしょう。

さて、続く東3局1本場は石橋選手の先制リーチを近藤選手が追っかけ。安牌に窮した多井選手から近藤選手が7700+300点を和了。

東3局2本場は逆に多井選手が先制リーチをかけていた近藤選手から8000点+600点を和了返し。再び近藤選手がラス落ちとなってしまいました。

東4局は山7枚残りの両面リーチを多井選手がかけるも、最終ツモで聴牌した近藤選手とともに2人聴牌で流局。

そして東4局1本場、引き続きトッププロたちの駆け引きが最高潮に達し、闘牌はジリジリした展開へと向かっていきます(下図)。

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暗槓が一つ入った以外はリーチも仕掛けもなし。だが中盤から一向聴で雀頭を求め、フリテン受けをそのまま残し続けていた村上選手が、ようやく2萬を引いて高め三色同順の満貫聴牌。3筒が2枚切られ、2筒も3枚切られているこの場況、トップ目という点数状況もあって冷静にダマで相手を待ち伏せます。

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これに飛び込んだのが、3900点のチーテンを入れていた石橋選手。ツモってきた2筒をそのまま河に置くと元気な声で村上選手がロン!8000点の和了となりました。村上選手にとっては、安全度と山に残っている可能性のバランスをとりながらもぎ取った満貫で、これで持ち点は約50000点となり、頭一つ抜けた形に。逆に石橋選手は近藤選手とのラス争いに巻き込まれることになりました。

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そしてこれで長い東場はようやく終了。南場に入るころには試合が始まって1時間15分が過ぎていました。一般的な雀荘での半荘が35~40分程度なので、4倍以上もの時間を費やしていることになります。まさに全身全霊を掛けた勝負、一打一打に重みを感じます。

さて、南1局は石橋選手が先制リーチをし、近藤選手も満貫の聴牌を入れたものの、最後は危険牌をつかんで流局。石橋選手の1人聴牌となりました。

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そして南1局1本場。ここでは村上選手が果敢にもドラ2のカンチャンリーチ。他家が攻めてくる前に最後の7筒をツモあがり、更にトップを盤石のものとしました。トップ目でのカンチャンリーチはなかなかかけにくい気持ちもありますが、やはり打点は正義。あと、対面が4巡目に8筒を、親が9筒・7筒を落としていることから7筒が山にいる、あるいはでアガリしやすいことも考えたのだと思います。

さて続く南2局、近藤選手がラス抜けをしようとドラポンをしますが、石橋選手にうまくかわされ、2000点の放銃となりました。

なかなか本手をものにできない近藤選手ですが、次局大物手が転がり込んできます⇩。

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こちらは南3局の近藤選手の手牌、ドラが8萬なのでダマでも18000点という超高打点の手を聴牌!!しかし待ちの7萬は自分で一枚使っていて、ドラ表示牌にも一枚。つまり最高でも2枚しかないのですが、ここではリーチ、あるいはダマのどちらが有利なのでしょうか?あるいは聴牌を崩してアガりやすい形に組み替える選択肢もあるかもしれません。

普段ならダマで待ちつつ手替わりを待つのが定石かと思います。しかし!今回は対面の石橋選手と上家の村上選手がそれぞれ1副露(村上選手が南をポン、その後石橋選手がカン7筒をチー)していて、特に村上選手に関しては聴牌気配が漂っています(実際は2人とも聴牌)。

つまり前回の記事でも少しお伝えしましたが、このままアガりにくい聴牌で進めても逆に相手にアガられてしまう可能性があって、それなら相手を止めるためにリーチを打つのも一策なのですが、さて、近藤選手の選択は!?

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近藤選手は約1分20秒、じっくり考え、静かに6筒を縦に置きました。つまりダマです。さてこの選択は吉と出るか、凶と出るか。

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そして次巡、近藤選手がツモってきたのは9萬。再度15秒ほど頭を悩ませ、たどり着いた答えは、、、9萬をツモ切ってのカン7萬リーチ!
しかしその同巡、、。

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近藤選手の現物であった中を多井選手が切るとその中に村上選手がロン!5200点のアガリをものにしたのでした。
一見この結果は必然に見えるのですが、近藤選手にとっては後悔の残る場面だったかもしれません。というのも、あの1巡のダマテンの間に村上選手は8筒から中に単騎待ちを変えていて、もしリーチをしていればトップ目の村上選手が8筒を捨てて中待ちに変えていた可能性は非常に低いのです。
つまり村上選手のアガリは生まれていなかったと言えます。

…と、ここまでリーチ寄りに説明してきましたが、やはり定石ではダマなのではないかと思います。というのも見えているだけでも最高2枚の待ちをリーチしてツモるというのは少々虫のいい話で、リーチを掛けたとしてもせいぜい流局の一人聴牌がいいところだと思います。リーチのみの手ならそれでもいいかもしれませんが、この手は18000点の大物手で、アガリ逃しは非常に痛いのです。

ただそれでも近藤選手が次巡リーチといった理由は、石橋選手が7索をツモ切り、村上選手が8筒を手出しで切ったことで、「おそらく二人とも聴牌あるいはそれに近い状態で、タイムリミットが近づいている」と感じたからなのだと思います。ただそれを感知するセンサーが一巡ずれていた、近藤選手に後悔があるとすればそこなのかなと思います。今まで感性あふれる判断を発揮している近藤選手を見てきましたが、その近藤選手でも麻雀の複雑性の渦の中で正着を選び取ることがいかに困難か、身をもって示してくれたように思います。

そして長い長い半荘もいよいよオーラス。この一局で2時間近く続いた戦いがようやく終局を迎えます。

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南4局。最後の局もまたリーチ判断の難しさを教えてもらうことになるのですが、、まず石橋選手が平和ドラ2を聴牌。したのですが、ここはダマを選択。

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しかし同巡、その近藤選手が聴牌してこちらはリーチ。ダマでアガっても着順は上がらないためこれは当然のリーチですね。

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そしてその近藤選手の捨て牌に6索があるため、石橋選手はこのままダマを続行して他家からのアガリを期待するかと思いきや、なんとツモ切っての追っかけリーチ!
こればかりは解説の渋川プロも「追っかけるんかい!」と突っこみを入れていました。

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そして同順、アガられても着順落ちはしないであろう村上選手が、フリテン聴牌を維持しながら、8筒をツモ切り。そしてその8筒を、、

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近藤選手がロン。トップ村上選手、2着多井選手、3着近藤選手、そして4着石橋選手の順で半荘が終了したのでした。

さて、最後の駆け引きも非常に興味深い内容だったので、また少し掘り下げていきましょう。まずは石橋選手の最初の聴牌ですが、非常に微妙な判断だと思います。というのも点棒状況を見ると4着の近藤選手までが6600点、2着の多井選手までは16600点。多井選手が親なので、この手をリーチしてツモって裏が乗れば3000.6000で2着になれるのですが、絶対に押し返してくる近藤選手が来る前にさくっとアガって3着を保持するのも手だと思います。

しかし近藤選手がリーチをかけた後の石橋選手の追っかけリーチは少し不思議な感覚を持ちました。確かにリーチ者の現物待ちならツモ切り追っかけリーチでも多少出やすくなりますし、リーチ棒が出たため多井選手から満貫直撃でも逆転できるようになりました。ただこのリーチ棒で近藤選手は1300.2600でも逆転可能となり、ダマテンに比べて他家からの出あがりの可能性も格段に落ちてしまいます。そして何より、1巡前はリーチせずに今回はリーチするメリットが、相手を多少混乱させること以外にあまりないと思ったのですが、、、難しいですね。他にも何か意図があるとは思いますが、結果的には逆転となってしまいました。

あと一点、気になるポイントとしては最後の村上選手。オリでもなく、7筒切りのフリテン解消追っかけリーチでもなく、8筒切りのフリテン聴牌ダマという選択。まず「オリ」を選択しなかった理由は、相手が子で振り込んでもトップで終わることができることが最大の理由でしょう。次に「追っかけリーチ」をしない理由は、やはりその後多井選手からの追っかけリーチが来たときに対応したいという点が大きいと思います。こういった理由から最後の放銃となったのですが、下の顔を見ればそれも織り込み済みのようですね。

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インタビューでは東2局で近藤選手に鳴かれた2萬ではなく5萬を切った方がよかったかなと、非常に真面目な一面をのぞかせていましたが、今回はそんな村上選手が積み重ねてきた経験と押し引きの策略が随所に見られた半荘だったかなと思います。改めて、村上選手、おめでとうございます!!

というわけで、初めてのMリーグ観戦記は以上となりますが、いかがだったでしょうか。今回は主に村上選手にスポットを当てて、その一打の意図や意味を掘り下げてきましたが、今後も気になった場面や気になった選手の打ち方など、幅広く取り上げていきたいと思っているので、この記事が面白いと思った方は是非フォローをよろしくお願いいたします!また、「スキ」やサポートなどもしていただければ更なる励みになりますのでよろしくお願いします。それではまた!

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