2023年4月5日、堀潤モーニングFLAGという番組で「トランスジェンダーの入浴施設論争」が取り上げられた。
ゲストの松岡宗嗣さんによる発言に問題点があったにもかかわらず、以下のように「トランスヘイターは乳がん手術者まで巻き込んでんのか」「トランスヘイト、乳がんまで持ち出してすごいね」などの意見があるようなので事実関係を整理する。
問題発言の該当部分
見逃し配信は4/12で終了してしまったため、書き起こしをしてくださったかたのツイートから、どんな発言がされたのか、問題とされている箇所を引用する。(書き起こしは以下のツイートから始まっています)
【前提】トランスや性自認の定義
繰り返しになるが、こういった話題において「トランスジェンダー」や「性自認」の認識が異なると議論が成り立たないので、使われている用語の意味をまず最初に確認しておく。
トランスジェンダー:出生時にわりあてられた性別とは、異なる性自認を持つ人のこと
トランス女性:出生時にわりあてられた性別が男性で、女性の性自認をもつ人
(※トランス女性は性同一性障害/GID/トランスセクシュアルだけでなく、身体違和がなくて性別適合手術を望まない性自認女性の身体男性も含まれる)
性自認:ジェンダー・アイデンティティ=自己の属する性別についての認識に関する同一性の有無または程度
松岡宗嗣さんの発言のどこが問題なのか、トランス女性が女湯を利用することについて乳がん患者を引き合いに出すことがいかに不適切なのか、乳がんサバイバー当事者のかたたちによる問題点の指摘をまとめた。
当事者たちによる問題点の指摘や抗議
野良那智さん
朝日庵さん【4/15 追記】
【4/15 追記】
朝日庵さんは松岡宗嗣さんの発言に言及しているわけではなく、「乳房切除した人も排除されることのない女湯はトランス女性も排除しない形になるという話」というアライの男性の発言に対しての抗議だが、トランス女性が女湯を利用することに乳がん患者を引き合いに出すことの不適切さを訴えていらしたのでここに載せた。
朝日庵さんが抗議したツイート
ハラキリムシさん
このハラキリムシさんのツイートに対して堀潤さんが「取材をさせていただけないでしょうか」と返信し、
ハラキリムシさんは取材をうけることになった。
※「1月にはプロフィールにTG旗を掲げている無名垢が、フェミニストが乳房切除した女性を女湯から追い出そうとしているというデマをでっちあげていました」は、「そうした結果、乳がんで乳房切除したシス女性が排除されるのであった 女の敵はお前だよ」というツイートと思われる。
さおりさん
このように、乳がんサバイバーの方たちが自分たちのつらい経験をあきらかにして、松岡宗嗣さんの発言のどのような点が問題なのか、トランス女性が女湯を利用することについて乳がん患者を引き合いに出すことがいかに不適切なのかを、言葉を尽くして抗議しているのにもかかわらず、それに対してリプライや引用RTで嫌がらせをする人があらわれはじめた。
抗議したサバイバーへのハラスメント
具体的にどんなツイートがされていたのかを紹介する。
涅槃の今日一さん
サバイバーの方に実際に絡んでるわけではないが、あまりの失礼さを諫める人たちに対しても彼はこう反論している。
デリケートな問題を全く関係ない不適切な場面で持ち出された当事者の反論が「言いがかり」にみえる人もいた。
mamegomaさん
いったい誰が乳がん当事者の方たちを侮辱しているのか、この経緯をみて考えて欲しい。
(以下はわたし個人の意見です)
ここ数日、女性でもなく乳がん当事者でもないのにサバイバーの方に対してこうも無神経な発言が繰り返されているので、わたしは大変心苦しくなった。
乳がんサバイバーのかたを思いやる女性同士の連帯が侮辱されてトランスジェンダー入浴施設論争に利用されてるように感じて気分が悪いし、それどころか性自認女性身体男性が堂々と女湯を使えるようになったら、すべての女性たちが女湯を利用しづらくなるのにアライの男性たちはなにをいってるんだろう。
「トランス差別反対」をたてに他のかたを侮辱するような発言を繰り返すことは決してトランス当事者のためにならないと思うのだが。
いったいどちらが「トランスヘイター」なんだか。
もはや「トランスヘイター」とみなした人を叩くことが目的になっているのではないのか?
そもそもの発端になった松岡宗嗣さんは、乳がん患者を引き合いに出したことに対する批判について、まだ何も意見を表明していない。
それなのに不適切な例としてとばっちりのようなかたちで持ち出された乳がんサバイバーのかたたちを先に語らせようとするのは、順番が違うのでは?
トランスジェンダーの入浴施設論争という文脈で、乳がん患者をトランスジェンダーやタトゥーが入っている人と並べて議論の俎上に載せた松岡宗嗣さんの意図をわたしは知りたいと思っている。
【10/28 追記】モーニングショーにおける玉川徹氏の発言について
2023年10月26日、モーニングショーにおいて玉川徹氏は
「例えば女性が入るお風呂に男性の体のまま入ってくると混乱が起きるっていう話があるんですけど、その問題と少数者の方々が手術をしなければ性別変更が認められないっていう問題はトレードオフ(一方を追及するために、もう一方を犠牲にすること)じゃないと思う。お風呂の方は別の対策が取れると思う」
「湯あみ着っていうのがあってですね、認められてる温泉とか増えてきてるんですけど、手術をした跡があったりとか、裸を人に見せたくないっていう人がいて」
と、入浴専用の衣類があることを例示した。
玉川徹氏、性的少数者の“女湯問題”に解決案提示「社会の工夫で乗り越えられる」/芸能/デイリースポーツ online (daily.co.jp)
この発言に対する乳がんサバイバーたちによる問題点の指摘や抗議を以下のTogetterにまとめた。
トランス女性が女湯に入ることに関する議論において、乳がんサバイバーや湯浴み着を引き合いに出すのは、軽率であり例としてふさわしくなく、乳がんサバイバーへの侮辱だと思う。
何度も同じことを繰り返さないでいただきたい。