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モニフラ「トランスジェンダーの入浴施設論争」について

2023年4月5日、堀潤モーニングFLAGという番組で「トランスジェンダーの入浴施設論争」が取り上げられた。

ゲストの松岡宗嗣さんによる発言に問題点があったにもかかわらず、以下のように「トランスヘイターは乳がん手術者まで巻き込んでんのか」「トランスヘイト、乳がんまで持ち出してすごいね」などの意見があるようなので事実関係を整理する。


問題発言の該当部分

見逃し配信は4/12で終了してしまったため、書き起こしをしてくださったかたのツイートから、どんな発言がされたのか、問題とされている箇所を引用する。(書き起こしは以下のツイートから始まっています)

(敬称略)
時枝 そうですね、身体のそういった違和感だったりとか、二次成長における体の変化っていうのが、気になる人もいれば気にならない人もいて、その、度合いっていうのは、人それぞれありますよね?ですから、トランスジェンダーだけの話じゃなくて、ホントに性っていうのは、こう『多様』ってことなんですよね。ホントに。男女二分できないものであるっていうところで、あの私も、トランスジェンダーってなんですか?って言われて、一言でやっぱり説明出来ない。まぁ時間をかけて、きちんと説明して、こういう人なんですよってちゃんと言わないと、やっぱりこう皆さん短絡的なものをすごく求めがちなんですよね。こういう人だっていうのを。で、男性は、とか女性は、って言っても一言で語れないですよね。

堀 そうなのよ。

時枝 いろんな多様な方がいるので主語が大きすぎくなっちゃう。

松岡 あのお風呂のところで、例えば、その乳がんで乳房切除した女性とかがなかなか利用しづらかったりとか。(一同うんうん)
やっぱり確かに利用出来ない人とか結構いろいろいますよね。あとタトゥー入ってると入れなかったりとか。

堀 なるほど。

松岡 いろんな問題あると思います。

雑草食いさん(@88jaykay)のツイートより

【前提】トランスや性自認の定義
繰り返しになるが、こういった話題において「トランスジェンダー」や「性自認」の認識が異なると議論が成り立たないので、使われている用語の意味をまず最初に確認しておく。

  1. トランスジェンダー:出生時にわりあてられた性別とは、異なる性自認を持つ人のこと

  2. トランス女性:出生時にわりあてられた性別が男性で、女性の性自認をもつ人
    (※トランス女性は性同一性障害/GID/トランスセクシュアルだけでなく、身体違和がなくて性別適合手術を望まない性自認女性の身体男性も含まれる)

  3. 性自認:ジェンダー・アイデンティティ=自己の属する性別についての認識に関する同一性の有無または程度

松岡宗嗣さんの発言のどこが問題なのか、トランス女性が女湯を利用することについて乳がん患者を引き合いに出すことがいかに不適切なのか、乳がんサバイバー当事者のかたたちによる問題点の指摘をまとめた。

当事者たちによる問題点の指摘や抗議

野良那智さん

#激論サミット 松岡氏はトランス女性が女湯に入ることを正当化するために、女湯には乳がんの手術をした人も入っていると発言したことを謝罪して撤回して下さい。大変デリケートな事を自分の活動の正当化のために引き合いに出したのは酷すぎます。 #ピンクリボン #乳がん

私は手術後の身体のために温泉や公衆浴場に行きたいと思っていました。しかし自分でさえ直視できない手術痕を見たらリラックスしに来ている女湯の皆さんに迷惑がかかると諦めていました。でも、他の全摘した方々が女湯の皆さんは他人の身体をジロジロ見ないし

気づいていても気づかないふりをしてくれて大丈夫だったという報告と、傷痕を見られないようにする方法を教えていただいたり、全摘用の入浴着が可の所を探して温泉に入りたいなぁと思えてきた所でトランス女性達が女湯に侵入し自撮りだけでなく

女湯の女性達の身体をジロジロ見てそれをネットにレポートとして上げているのを知り、気持ちが挫けてしまいました。2度と温泉や公衆浴場に行けません。
女湯の連帯。自然なルール。他人の身体をジロジロ見ない。自分自身の手術前の事を思いだすと、他人の身体をジロジロ見なかったし視界に手術した方がいたらスルーというか見なかったと反応するというか、そういう対応をしていたのを思い出しました。

そして高齢の方がいたら気配で体調をそれとなく様子を見たり。
女湯の女性達は乳がんの手術をした人を拒否していません。
女性同士の連帯です。
他人の身体をジロジロ見ない女湯の連帯を悪用しているのは誰?
松岡氏の発言は、あまりにも酷すぎます。
どういう考えで発言したのかの説明と謝罪を求めます。
TokyoMXからも説明してもらいたいです。
乳がんに罹患した方々をなんだと思っているのですか?
酷すぎます。

野良那智さん(@hNW7xLv4NwOcOIn)のツイートより

朝日庵さん【4/15 追記】

【4/15 追記】
朝日庵さんは松岡宗嗣さんの発言に言及しているわけではなく、「乳房切除した人も排除されることのない女湯はトランス女性も排除しない形になるという話」というアライの男性の発言に対しての抗議だが、トランス女性が女湯を利用することに乳がん患者を引き合いに出すことの不適切さを訴えていらしたのでここに載せた。

朝日庵さんが抗議したツイート

なんか知らない間にとんでもない事を言い出してる人がいるわけ?
乳房を切除した人も排除されることのない女湯はトランス女性も排除しない形になる???は???
乳がんで胸を失うつらい手術した女性の事を、一体何だと思ってんだ!?!?
手術してもふつうに女湯入ってるけど?当たり前だろ!!

トランス女性とかデリケートな話だし、自分が理解していない事はツイートしないようにしようと思っていたけど、
女湯云々の話で乳がん手術を受けた女性を引き合いに出すのは違うんじゃないの?

乳がん手術をして入浴しづらいのは、排除されているからじゃない。持論のために持ち出さないでほしい。

乳がんは女性だけじゃなく男性もなる事もあるけど、
圧倒的に女性が多く患う病気で、
女性ホルモンががん増殖に影響するタイプは全体の6~7割と言われている。
私も女性ホルモンが強烈に影響するタイプで女性ホルモンを抑える薬で治療している。

女性ゆえに乳がんになり、胸を切除した辛さがあるんだよ。

朝日庵さん(@asahian222)のツイートより

ハラキリムシさん

@morning_flag
@8bit_HORIJUN
激論サミットでの松岡宗嗣
@ssimtok
の発言に、乳がんサバイバーの一人として強く抗議します。
乳がんの手術跡が気になって銭湯などに入り辛く感じる気持ちを、トランスジェンダーの問題と同列に扱わないでください。
乳ガン患者が乳房を切除しても女であることに変わりはありませんし、女性を自認する男性も男性であることに変わりはありません。女性にも多様な方がいるという事実は、男性も女性になれるということではありません。

ハラキリムシさん(@harakirimushi)のツイートより

このハラキリムシさんのツイートに対して堀潤さんが「取材をさせていただけないでしょうか」と返信し、

ハラキリムシさんは取材をうけることになった。

昨日の取材用に書いて持って行った文章を、自分用のメモを兼ねてスレッドにまとめます。絶対に反省などしないだろうけど松岡宗嗣 .@ssimtok への抗議です。

松岡氏の問題発言が出たのは、トランスジェンダー(TG)の入浴施設利用法について話し合っている時でした。時枝穂氏が「女性も多様、女性を一言で定義することは出来ない」と言った直後に、松岡氏は「そうそう」と同意しながら「乳がんで手術をして銭湯に行き辛くなる人もいる」と付け加えました。

私は乳がんサバイバーとして強い怒りを感じましたが、驚きは感じませんでした。正直「ついにここまで言ったか」「またか」という感触でした。松岡氏が「トランス女性」つまり身体が男性なのに女性を自認する人の女子トイレ利用を繰り返し擁護していることは知っていたし
1月にはプロフィールにTG旗を掲げている無名垢が、フェミニストが乳房切除した女性を女湯から追い出そうとしているというデマをでっちあげていました。(※後述する)

アライを含むTG権利活動家は、心の性の重要性を訴えるために「性別はグラデーション」「身体の性別は無意味」と科学的根拠のないというよりむしろ科学的に否定されている説を唱えて、性分化疾患(DSDs)の患者や乳がん、子宮がんなどで生殖能力を失った人々を例に持ち出します。

そういった背景を知っていたので、松岡氏が乳がん当事者を引き合いに出したのも、当事者への思い遣りではなく、我田引水を狙ってのことだと感じました。
TGと無関係な病気の当事者を唐突に話題にすることで論点をずらし、反論しにくい空気を作ろうとしているのではと感じました。TVではこのような論法を使いこなす人が重宝されていますね。

松岡氏の発言に先だった時枝氏の「女性を一言で定義することは出来ない」という発言も不適切でした。女性を一言で定義するのは簡単です。「人間の雌」です。「雌」とは有性生殖を行う動植物のうち、大きくて数が少ない方の配偶子を作る性です。哺乳類の雌は妊娠し、雄は雌を妊娠させることが出来ます。

病気や加齢によって生殖機能を欠いた雌雄も、雌や雄でなくなったわけでも第三の性になったわけでもありません。損なわれた器官以外は健康な雌や雄と同じです。避妊手術した雌犬が雌でなくなったとか雄になったと考える人はいますか?

時枝氏の発言も、「心の性」の重要性を訴えるために身体の性を無意味だとする彼らの説に誘導するためのものだと感じました。

その発言の直後に松岡氏の「乳房切除で銭湯に行き辛くなる人もいる」という発言がありました。TG、ここでは主に自分の心が女性だと感じる男性、女性になりたいと思っている男性について話し合っている時に、突然乳がんサバイバーという無関係な存在を引き合いに出したのです。

ところで、「トランス男性」つまり自分の心が男性だと感じる女性、男性になりたいと思っている女性の存在は、このような議論では常に後回しにされています。

乳がんの治療では、乳房という女性の身体を象徴するような部位を失い、抗がん剤などで脱毛、閉経も経験します。実際に性別が変わることはありませんが、女でなくなったように感じて悩んだり、そのように揶揄されることもあります
実際は、乳がん手術のために女でなくなったり男になったりすることはありません。
私たちは男になりたくてではなく、がんを治療して生き延びたかったから手術したのです。手術する前もした後も女であることに変わりはありません。

今はあまり気にならなくなりましたが、私も手術直後は胸に残る傷跡が気になって銭湯に行き辛いと感じる時期がありました。
強調しておきたいのは、私たちの気持ちは「銭湯に行き辛い」であって「女湯に入り辛い」ではないという点です。

女湯が嫌だから男湯に入ろうとする乳がんサバイバーが居るとは思えません。
女性になりたくて、服装やメイクで女性に見えるよう工夫している男性は男湯に入り辛い。そこまでは解ります。だからといって女湯に入ろうとするのは理解できないし、乳がんサバイバーを引き合いに出される筋合いはありません。

乳がんサバイバー女性も、女湯で男性と遭遇したら、他の大多数の女性と同様の恐怖を感じるはずです。
実際、私は乳房を失った後より、「心が女性」と主張する男性が女湯に入ってきているという事実を知った今の方が、銭湯に行くことに恐怖を感じています。「行き辛い」を通り越した「恐怖」です。
スレッドはここまでです。公正な報道、誠意ある対応をお願いします
@ssimtok
@morning_flag
@8bit_HORIJUN

ハラキリムシさん(@harakirimushi)のツイートより

※「1月にはプロフィールにTG旗を掲げている無名垢が、フェミニストが乳房切除した女性を女湯から追い出そうとしているというデマをでっちあげていました」は、「そうした結果、乳がんで乳房切除したシス女性が排除されるのであった 女の敵はお前だよ」というツイートと思われる。

さおりさん

乳がん当事者として松岡氏の発言は到底受け入れられません。何重にもグロテスクです。

①乳がんという命に関わる病気の治療のために乳房切除した女性を、入浴施設の男女区分という議論の俎上にのせたこと。傷跡のせいで人目が気になることはあっても、私たちが女性であることは誰も疑っていません。
女湯に入ることに対するためらいを代弁、ましてや主張の補強材料される覚えはありません。

②女性は男性の200倍の乳がん罹患リスクを負うと言われています。毎年9万人の女性が乳がんと診断され、その何倍もの人が検診で引っかかり不安に晒されるような、全世代の女性にとって他人事でない病気です。
当事者や専門家でないのに軽々しく言及してほしくないです。

③乳がん治療の過程で多くの人が乳房切除や脱毛など外見の変化を余儀なくされます。「女性でなくなるような気がして辛い」という人もいる。これは乳房や長い髪の毛を女性のシンボルとして捉え、性的対象として刷り込むルッキズムや女性差別があるということの裏返しです。幼少期から常に容姿をジャッジされ、美しくなければという強迫観念に駆られ、それでも何とか折り合いをつけ受け入れてきた自分の外見が、命と引き換えにむしり取られていく苦しみを想像できたなら、このような発言は出なかったと思います。

さおりさん(@SaoriNa14)のツイートより

このように、乳がんサバイバーの方たちが自分たちのつらい経験をあきらかにして、松岡宗嗣さんの発言のどのような点が問題なのか、トランス女性が女湯を利用することについて乳がん患者を引き合いに出すことがいかに不適切なのかを、言葉を尽くして抗議しているのにもかかわらず、それに対してリプライや引用RTで嫌がらせをする人があらわれはじめた。

抗議したサバイバーへのハラスメント

具体的にどんなツイートがされていたのかを紹介する。

涅槃の今日一さん

サバイバーの方に実際に絡んでるわけではないが、あまりの失礼さを諫める人たちに対しても彼はこう反論している。

デリケートな問題を全く関係ない不適切な場面で持ち出された当事者の反論が「言いがかり」にみえる人もいた。

mamegomaさん


いったい誰が乳がん当事者の方たちを侮辱しているのか、この経緯をみて考えて欲しい。


(以下はわたし個人の意見です)

ここ数日、女性でもなく乳がん当事者でもないのにサバイバーの方に対してこうも無神経な発言が繰り返されているので、わたしは大変心苦しくなった。

乳がんサバイバーのかたを思いやる女性同士の連帯が侮辱されてトランスジェンダー入浴施設論争に利用されてるように感じて気分が悪いし、それどころか性自認女性身体男性が堂々と女湯を使えるようになったら、すべての女性たちが女湯を利用しづらくなるのにアライの男性たちはなにをいってるんだろう。

「トランス差別反対」をたてに他のかたを侮辱するような発言を繰り返すことは決してトランス当事者のためにならないと思うのだが。
いったいどちらが「トランスヘイター」なんだか。
もはや「トランスヘイター」とみなした人を叩くことが目的になっているのではないのか?

そもそもの発端になった松岡宗嗣さんは、乳がん患者を引き合いに出したことに対する批判について、まだ何も意見を表明していない。
それなのに不適切な例としてとばっちりのようなかたちで持ち出された乳がんサバイバーのかたたちを先に語らせようとするのは、順番が違うのでは?

トランスジェンダーの入浴施設論争という文脈で、乳がん患者をトランスジェンダーやタトゥーが入っている人と並べて議論の俎上に載せた松岡宗嗣さんの意図をわたしは知りたいと思っている。

【10/28 追記】モーニングショーにおける玉川徹氏の発言について

2023年10月26日、モーニングショーにおいて玉川徹氏は

「例えば女性が入るお風呂に男性の体のまま入ってくると混乱が起きるっていう話があるんですけど、その問題と少数者の方々が手術をしなければ性別変更が認められないっていう問題はトレードオフ(一方を追及するために、もう一方を犠牲にすること)じゃないと思う。お風呂の方は別の対策が取れると思う」

「湯あみ着っていうのがあってですね、認められてる温泉とか増えてきてるんですけど、手術をした跡があったりとか、裸を人に見せたくないっていう人がいて」

と、入浴専用の衣類があることを例示した。

玉川徹氏、性的少数者の“女湯問題”に解決案提示「社会の工夫で乗り越えられる」/芸能/デイリースポーツ online (daily.co.jp)

この発言に対する乳がんサバイバーたちによる問題点の指摘や抗議を以下のTogetterにまとめた。

トランス女性が女湯に入ることに関する議論において、乳がんサバイバーや湯浴み着を引き合いに出すのは、軽率であり例としてふさわしくなく、乳がんサバイバーへの侮辱だと思う。
何度も同じことを繰り返さないでいただきたい。

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