🔞聖戦

　高校時代、最後の年に１８歳を迎えた。男子にとって１８歳という年齢は特に重大な意味を含んでいる。１８歳になれば、アダルトコーナーへの入館が許される。中学生の頃こんなエピソードがあった。

　中学生の時に近所のレンタルビデオ店に仲間数人で来店した際に、興味本位でアダルトコーナーに入ることになった。黒いカーテン、AV女優の等身大パネル、中でうごめく黒い影、その全てが僕らを黒いカーテンの中へ引き込もうとした。意を決して中に入ろうとした次の瞬間、巡回中の店員に呼び止められ、こっぴどく叱られた記憶がある。周りに戒めるように鳴り響いたその怒号が僕らをトラウマへと引き込んだ。

　それから数年。１８歳の誕生日を迎えて数日後のことだ。意を決して、黒いカーテンの中を練り歩く。そこは正に「未知との遭遇」そのものである。四方八方を裸の多数の女性に囲まれたことが今まで生きてきた１８年間の中にあっただろうか。あまりの衝撃と夢にまで見た裸の女に囲まれる光景。興奮と衝撃の後に押寄せる謎の不安感。むしろ四面楚歌とも感じられるこの状況に対する焦燥感。様々な感情が溢れていく。四方八方、四面楚歌・・・この時、ようやく気付くことが出来た。これは、ハーレムであると。過去の学生生活で恋愛と全く縁のなかった私からすれば、ディズニーランドよりもディズニーランド。夢の国よりも夢の国なのである。限られた空間の中に何万人もの女体がひしめき合う。そこの住人とも言える薄汚いおっさん達を次第に「友」と思うように謎の連帯感さえ感じさせる魔法の空間だ。そして言わずもがな初めての🔞コーナーは興奮の連続であった。家に帰っても興奮冷め止まぬままあの時眼に焼き付けた光景を思い出し寝れない日々が続いた。

　１８歳になるまで画面での鑑賞で現実との隔たりを設けていた。しかし、🔞コーナーに行ってしまったのが末路。もう後戻りは出来なくなってしまった。旅先や出かけた先で次いでにビデオ店に赴くことが日課になってしまった。赴いては、気になる女優の名前とタイトルを覚えて帰って調べて保存して・・・の繰り返しである。ハーレム気分、王様気分を疑似体験出来る僕らの楽園はどんな時でもいつだって私に優しくしてくれた。家に帰っても宿題だの勉強だの待ち受けるのは現実ばかり。楽しむことが悪とされ勉強することが善とされた時期。疲れた体と心を癒してくれる唯一の存在であった。

　しかし、このアダルトコーナーが年々縮小傾向にあることはご存知だろうか。上記で述べたように私のようにこの空間を好む男性は多くいる。利用年齢層はピンキリで成人男性の憩いの場である。アダルトコーナーが好きな男性を好んで好きになる女性はまずいないだろう。そして、アンチアダルトコーナーな女性も少なくない。その為、AVに関して彼女のことを想って「むしろ、嫌いな方かな・・・」なんて適当な嘘をついてしまう男性も多い。

だが、私は男性に胸を張って堂々と「AV(アダルトコーナー)が好きだ」と言ってほしい。アダルトコーナーの縮小は例としてキリスト教でいう教会の、仏教でいう寺の減少・縮小を表している。風紀やコンプライアンスやらがより傾向として強まっていることからこのような縮小傾向が強まっていると考えられる。宗教史において、脅威を感じさせる敵対関係にあるものに対し攻撃し自らを守ってきた歴史がある(例：鎖国時のキリスト教)。そして現在のように様々な宗教や宗派が我々と共に暮らしているのは戦ってきた故の「賜物」である。

しかし、アダルトコーナーに関しては誰も守ろうとしない。あの空間は男性をある種のトランス状態にさせ、中にいる人間との謎の連帯感を感じさせることから、この空間は「神聖な場」と言って良い。日本人の成人男子(２０歳以上)は約５０６２．４万人いるとされている。私たちは男性である以上、性と関わりを絶つことは許されない。その為、アダルトコーナー縮小反対運動を起こすべきである。何故なら、神聖な場を守る為の戦いであるから。つまり、🔞聖戦であるからだ。

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