sae@映画ソムリエ

年間120本映画館で最新映画見るのが趣味の会社員(ジャンル問わず。ただしホラー除く)。…

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年間120本映画館で最新映画見るのが趣味の会社員(ジャンル問わず。ただしホラー除く)。ネタバレなしでおすすめ映画をご紹介します。Amazonアソシエイトに参加中。

最近の記事

映画感想文「ボブ・マーリー:ONE LOVE」伝説のミュージシャンの36年、コンサート並みに流れる曲が沁みる

楽に疎い。 それでも名前は知ってる。そして、レゲエの人だよね、ということも。 だけど、知らなかった。こんな風な背景から生まれた音楽であることを。やはり偉大な音楽の絵には多くの苦悩があるのか。 政治と宗教。その中でから生まれた魂の叫び。 レゲエミュージシャン、ボブ・マーリー。独立後のジャマイカで、白人の父と黒人の母の間に生まれる。両親はすぐに別れ、母親に引き取られ貧しい暮らしを送る。 幼い頃から聖書に親しみ、当時ジャマイカで流行っていたラスタファリ運動に没頭。 17

    • 映画感想文「祝日」大切に見返したい宝物のような作品。オール富山ロケの風景も心に残る

      誰かの悲しみにそっと寄り添う。 そんな大切なことを忘れていた。 富山県の海沿いの街に住む、中学生の希穂。優しかった父はその優しさ故に亡くなり、母はある日、いなくなった。 一人ぼっちで淡々と暮らす希穂。毎日はただ過ぎて行き、ある日ふと屋上から飛び降りようと試みる。 その時、彼女の腕を掴んだ手。それは彼女の天使だと名乗る見知らぬ女性(岩井堂聖子)だった。 富山県出身の25歳の伊林侑香監督が、富山在住の新人女優、中川聖菜を主演にすえ、富山県で撮影した作品。 予想外に素晴

      • 映画感想文「家出レスラー」なぜか心打つ女子プロレスラーのキャリアストーリー

        なぜか心を打つ作品がある。 演技が上手いわけではない(失礼)。脚本が良いわけではない(失礼)。それなのに、引き込まれた。 引きこもりからの高校中退。ふとしたことからレスラー目指して家出し上京。体力も技術もない落ちこぼれ。だが、不屈の精神と自分らしさの発揮で人気レスラーとなる。そんな本当にあった実話が元になっている。 山口県の田舎町に育ったマユ(平井杏奈)は、ちょっとしたキッカケで引きこもりになり学校に行けなくなった。鬱々とした毎日。だが、ある日誘われて向かったプロレスに

        • 映画感想文「ミッシング」石原さとみがキャリア最高の演技。娘の失踪に苦悩する夫婦の物語

          119分間ずっと、苦悩し泣き叫ぶ石原さとみ。 驚いた。すごい演技だ。本当に渦中の人に見える。6歳の娘が行方不明になった、その母親さおり(石原さとみ)。失踪して3か月、まだなんの手がりもない。 その時、彼女は弟に娘を任せ、推しのコンサートに行っていた。自分を責める。更に、どこからともなくその情報が流れ、SNSには母親失格となじる書き込みが溢れる。段々と精神不安定になっていくさおり。そしてテレビ局の記者(中村倫也)、警察、誰かれ構わずヒステリックに叫び、すがる。 リアルだ。

        映画感想文「ボブ・マーリー:ONE LOVE」伝説のミュージシャンの36年、コンサート並みに流れる曲が沁みる

          映画感想文「ありふれた教室」正義感溢れる新任教師の葛藤を描く。人の数だけ真実はある

          真実は人の数だけある。 そう思ってる。だからこの映画の主人公のカーラの真実を追い求める行動。凄いなーとも思う反面、あーあ、それしちゃうのか、いいことないよなーと何度もため息ついた次第。 ドイツのある学校。中学1年生のクラスを受け持った新任教師のカーラ。生徒思いで仕事熱心。正義感に溢れ、相手が誰でも折れずに自分の正義を貫こうとする。 そんなカーラのクラスの生徒が疑われた。学校で盗難事件が相次ぎ、生徒に嫌疑がかかったのだ。生徒を詰める先輩教師に反発を覚えるカーラ。生徒を守ろ

          映画感想文「ありふれた教室」正義感溢れる新任教師の葛藤を描く。人の数だけ真実はある

          映画感想文「正義の行方」飯塚事件を取り上げたドキュメンタリー映画

          日本の殺人の検挙率は90%。 日本の警察は素晴らしい。それでも、高すぎる数字は不安もある。もしかしたらその陰に誤操作もある可能性がある。 そんなことを考えるドキュメンタリー映画である。 1992年に福岡県でおきた「飯塚事件」について追いかけたNHKのドキュメンタリー番組を映画にしたものである。 子供の殺人事件である。重い。つらい。 既に犯人は死刑を執行されている。それでも弁護士は戦う。当時の報道記者、そして警察。残された家族。それぞれの話は微妙に噛み合わない。 正

          映画感想文「正義の行方」飯塚事件を取り上げたドキュメンタリー映画

          映画感想文「ブレインウォッシュセックス・カメラ・パワー」気迫に満ちた女性監督の語りに気付きあり

          こういう映画を上映する、ヒューマントラストシネマが好きだ。 ニナ・メンケス監督。武闘派な感じのアメリカの女性監督。全く知らなかった。が、映画館でみて、面白そうと軽い気持ちで視聴。 そしたら、とんでもない作品であった。 物語ではなく彼女が映画における男性のまなざしを語るドキュメンタリー。 ヒッチコックやスコセッシ、タランティーノなどの有名監督作品が事例として次々と登場する。そしてなんの忖度もなく、いかに映画などのメディアが「男性のまなざし」に満ちているかをこれでもかとそ

          映画感想文「ブレインウォッシュセックス・カメラ・パワー」気迫に満ちた女性監督の語りに気付きあり

          映画感想文「不死身ラヴァーズ」惜しい。良いのに何かが足りない。という 思いが拭えない

          惜しい。何かが足りない。 人に伝える難しさをしみじみ思う。 「くれなずめ」「ちょっと思い出しただけ」の松井大吾監督作品。前2作も癖強かったが、これまたそれ以上に癖強い作品。 目指したきことはわかる(ような気がする)。感性も素晴らしい。だけどそれをもっと多くの人に伝えるためには間に翻訳者必要だと感じる。 長谷部りの(見上愛)は、子供の頃に出会った甲野じゅん(佐藤寛太)をずっと思い続けてる。 彼が運命の相手だと思い、まるでストーカーのように追いかけ続ける。 でもなぜか

          映画感想文「不死身ラヴァーズ」惜しい。良いのに何かが足りない。という 思いが拭えない

          映画感想文「Ryuichi Sakamoto opus」圧巻の迫力の演奏。遺言をしかと受け止めた

          これは遺言である。 2023年3月に亡くなった坂本龍一氏。彼が亡くなる半年前に力を振り絞って行ったソロコンサートの映像を映画にしたものだ。 新曲も含め、何曲もの彼のピアノ演奏が続く。 今更ながら演奏を聴いて、惜しい人を亡くしたのだと悟る。 映画の構成については、 トークも全くなく。ひたすら彼の演奏が続くというストイックな仕立てである。 しかも時々咳き込んだり、休んだりという体調の悪さかこちらにもわかるシーンが何度か繰り返される。 どうやらこの収録も何回にも分けて行

          映画感想文「Ryuichi Sakamoto opus」圧巻の迫力の演奏。遺言をしかと受け止めた

          映画感想文「恋するプリテンダー」思いがけず良作。何も考えずリラックスして楽しめる

          こういう映画に飢えていた。 と気付いた、ロマンティックコメディ。気楽に映画を楽しみたい人に全力おすすめ。 確かにあらすじ読める。ドキドキもない。しかし予定調和に乗っかり安心してみていられる、安心安全な作品。平日仕事で疲れて帰宅して気分転換に映画でも観るか、って時に向いてる作品。こういうジャンルって手堅いよね、と思う。 なにしろ、男女とも、主人公がほどほどのイケメン、ほどほどの美女なのが良い(実際はどちらも超イケメン、超美女なんだが、ハリウッド基準での頂点ではない)。

          映画感想文「恋するプリテンダー」思いがけず良作。何も考えずリラックスして楽しめる

          映画感想文「人間の境界」ポーランド国境で起きている難民問題を世に問う衝撃作

          衝撃。 こんなことが起きてるなんて知らなかった。 欧州の入り口となる、ポーランド。ベルラーシとの国境は約200キロに渡り、鉄条網が張りめぐらされてる。この国境を目指し、中東やアフリカなど、政情不安定な国から違法に亡命してくる人が後をたたない。 ベルラーシはロシアから戦闘員も受け入れているという。よってベルラーシからの受け入れはポーランド、そして欧州にとって大きな脅威となる。 2021年ポーランド政府は非常事態宣言を発令。国境警備隊が見張り、違法者はベルラーシに送り返さ

          映画感想文「人間の境界」ポーランド国境で起きている難民問題を世に問う衝撃作

          映画感想文「ジョン・レノン失われた週末」ジョンと暮らした日々。温かく切ないドキュメンタリー

          そこにあったはずが、いつの間にか消えてしまう。 泣き叫んでも縋っても戻らない。真実だったはずなのに、なぜ? そんな熱情の終焉をほとんどの人が経験しているはずだ。 ジョン・レノンの愛人だった女性メイ・パンが語る失われた週末、彼との1年半の愛の物語。 どうせ売名行為だろうとか、愛人だっただけなのにそこに愛があったと主張するなんてみっともないとか。 観る前はそんな風に思ってた。 だけど、映像と写真で映し出されるジョン・レノンの笑顔はどれも輝いてた。プライベート写真に映る

          映画感想文「ジョン・レノン失われた週末」ジョンと暮らした日々。温かく切ないドキュメンタリー

          映画感想文「パターソン」普通の毎日の幸せに気付く映画

          不思議な映画だ。 平凡な男の普通の日常が綴られてる。 本作は「PERFECT DAYS」のヴィム・ベンダース監督と同じテイスト。ジム・ジャームッシュ監督。最初同じ監督の作品だと混同していたくらいだ。 米国ニュージャージー州のパターソン市に住むバス運転手、市と同じ名前のパターソン(アダム・ドライバー)。 大好きな妻と愛犬と小さな家で暮らす。趣味は詩を作ること。ノートに毎日言葉を紡ぐ。 朝起きる時間から夜寝るまで、ルーチンを繰り返す判で押したような同じタイムスケジュール

          映画感想文「パターソン」普通の毎日の幸せに気付く映画

          映画感想文「無名」アジアの新旧スターを堪能する作品。スタイリッシュだが付いてくのが大変

          スタイリッシュなんだが。 訳の分からない映画だった。 分からない自分を責める。きっと、もっと歴史を真面目に学んでいたら理解できたはずだ。観終わった直後はそう思った。しかし、一周回ってやはりそういう問題ではない。 物語の時系列が何度も行ったり来たりする。クリストファー・ノーラン監督方式。なのだが、ランダムすぎて途中で脱落した。 しかし主演の二人は健闘していた。香港映画華やかなりし頃のスター、トニー・レオン。そして中国の新星、ワン・イーボン。 かなりハードなアクションも

          映画感想文「無名」アジアの新旧スターを堪能する作品。スタイリッシュだが付いてくのが大変

          映画感想文「ミセス・クルナスvs.ジョージ・W・ブッシュ」米軍収容所に5年監禁の息子を取り戻す母の物語

          笑いの配分は難しい。 それをしみじみ思った作品。 実際にあった、大変憤りを感じる事件を扱っている。恐らく、そのシリアスさを笑いで包み込み、それによって広く多くの人が視聴することを狙ったと思われる。が、そのせいで本来訴えたきことのインパクトが弱くなっている。 ドイツのブレーメンに住むトルコ移民のクルナス家。3人兄弟の長男ムラートは旅行先のパキスタンでタリバンの嫌疑をかけられ米軍に捕まってしまう。行き先はキューバのグアンタモナにある収容所。 時は2001年。911の同時多

          映画感想文「ミセス・クルナスvs.ジョージ・W・ブッシュ」米軍収容所に5年監禁の息子を取り戻す母の物語

          映画感想文「青春18×2 君へと続く道」ロードムービーとしても素晴らしい王道ラブストーリー

          こんな思い出、自分にはあるかな。 胸に手を当てて、思わず思い起こすような作品だ。 18歳の時に出会った4つ年上の初恋の人。台湾人の彼が36歳になったいま、彼女の祖国である日本を訪ねるロードムービー。 高校3年生のジミー(シュー・グァンハン)、22歳のバックパッカーのアミ(清原果耶)。主演の二人のフレッシュで的確な演技に引き込まれる。 実際には33歳のシュー・グァンハンが18歳に見える演技をしているのがすごい。その年代ならではの高校生男子のモヤモヤや初々しさを余すことな

          映画感想文「青春18×2 君へと続く道」ロードムービーとしても素晴らしい王道ラブストーリー