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映画感想文「ありふれた教室」正義感溢れる新任教師の葛藤を描く。人の数だけ真実はある

真実は人の数だけある。

そう思ってる。だからこの映画の主人公のカーラの真実を追い求める行動。凄いなーとも思う反面、あーあ、それしちゃうのか、いいことないよなーと何度もため息ついた次第。

ドイツのある学校。中学1年生のクラスを受け持った新任教師のカーラ。生徒思いで仕事熱心。正義感に溢れ、相手が誰でも折れずに自分の正義を貫こうとする。

そんなカーラのクラスの生徒が疑われた。学校で盗難事件が相次ぎ、生徒に嫌疑がかかったのだ。生徒を詰める先輩教師に反発を覚えるカーラ。生徒を守ろうと奮闘する。それでも問題は解決しない。痺れを切らした彼女が仕掛けた罠。それが大きな波紋を呼ぶことになる。

ヒステリックに糾弾する保護者たち。職員室でも教師たちの意見はバラバラ。果ては大人たちの対応に怒りを覚えた生徒たちの反抗。カーラ自身もパニックになる。事態は更に収集つかなくなる方向へ。

いやー、人と人が分かりあうのは難しい。それぞれの背景を経た上での価値観。それを理解しないままに対話してもうまくいかないだろう。

だからそれが不誠実だとはわかってはいても、大抵はやり過ごしたい。そう思う。全力をかけて分かりあわねばという時はある。でも発生頻度は少ない。かつ、分かり合える確率も高くはない。

この映画で思い出したが、むかし社員寮に住んでいたことがある。部屋に鍵はかかるが、かけているのは私を含め、ごく少数だった。「人を信じてないみたいで嫌だから鍵かけない。なんで鍵かけるの?」と同僚に質問されたことがある。

いや、逆だよ。疑いたくないから鍵かけないんだよ。その言葉を飲み込んだ。きっと彼女の正義と私の正義は違うと感じたから。

価値観の一致を人に期待するのは無理だ。自分もそれをされたら不愉快である。ただ価値観を共有しあえることは本当は意味あることだ。喧嘩とか感情的ではなく、普通の会話で意見交換し合う。できればそういう人間関係を増やしたいとは思う。

ドイツの映画祭で各賞を受賞。米国アカデミー賞の国際長編映画賞ノミネート。なるほどと納得のあれこれ考えさせる、秀逸な作品であった。

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