年間読書人

その名のとおり、読書が趣味で、守備範囲はかなり広範ですが、主に「文学全般」「宗教」「映…

年間読書人

その名のとおり、読書が趣味で、守備範囲はかなり広範ですが、主に「文学全般」「宗教」「映画」「アニメ」に関連するところ。昔から論争家で、書く文章は、いまどき流行らない、忌憚のない批評文が多い。要は、本音主義でおべんちゃらが大嫌い。ただし論理的です。だからタチが悪いとも言われる。

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〈宇山秀雄殺し〉の 謎を解く : 『宇山日出臣 追悼文集』の密室

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クロード・シャブロル監督 『美しきセルジュ』 : 意外に褒めてもらえない「ヌーヴェル・ヴァーグ」作品の裏事情

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年間読書人
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クリスチャン・タフドルップ監督 『胸騒ぎ』 : 日本人こそが見るべき映画

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サミュエル・R・ディレイニー 『ノヴァ』 : オリエンタリズム的「文学性」の勘違い

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ジャック・リヴェット監督 『王手飛車取り』 : 作品自体を見てもらえない作品

映画評:ジャック・リヴェット監督『王手飛車取り』(1956年・短編フランス映画) 本作は、作品の内容や出来不出来にかかわりなく、「ヌーヴェル・ヴァーグの発火点となっ…

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Kashmir 『てるみな 5』 : 日常のなかの異界へ

書評:Kashmir『てるみな 東京猫耳巡礼記(5)』(楽園コミックス・白泉社) 前の第4巻の刊行が2021年5月だったから、じつに3年ぶりの刊行である。 しかし、「「楽園…

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リンク集 「〈心って何?〉 ロボット・AI系 漫画・アニメ・小説・批評研究書」関連レビュー

【収録作家(作品)】 (ロボット系漫画) 矢寺圭太『ポンコツぽん子』 池辺葵『私にできることのすべて』、村上たかし『ピノ:PINO』 福井健太編『SFマンガ傑作選』 (収…

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リンク集 「漫画(SF・ホラー系)」関連レビュー

【主たる収録作家】 (SF系) 瀬野反人、今井哲也 福井健太編『SFマンガ傑作選』 (収録作家:手塚治虫、松本零士、筒井康隆、萩尾望都、石ノ森章太郎、諸星大二郎、竹宮惠…

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シドニー・ルメット監督 『十二人の怒れる男』 : 理想を信じた時代の「アメリカの良心」

映画評:シドニー・ルメット監督『十二人の怒れる男』(1957年・アメリカ映画) 本作は、子供の頃にテレビで視て感動した「思い出の作品」であり、今でも私の「実写映画の…

年間読書人
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『井上俊之の作画遊蕩』 : アニメーター目線の問題提起とその限界

書評:井上俊之著・高瀬康司編著『井上俊之の作画遊蕩』(KADOKAWA) 本書は、ベテラン人気アニメーター井上俊之による対談集である。対談相手は、新旧のアニメーターを中…

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11日前
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ロジェ・ヴァディム監督 『素直な悪女』 : 女の魅力 と「ヌーヴェル・ヴァーグ」

映画評:ロジェ・ヴァディム監督『素直な悪女』(1956年・フランス映画) 先日、レビューを書いた、SFファンタジー映画『バーバレラ』(1962年)を撮ったロジェ・ヴァディ…

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12日前
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小林秀雄 『戦争について』 : 戦時における「時局迎合と 俗情との結託」

書評:小林秀雄『戦争について』(中公文庫) これまでは「小林秀雄の恥部」として、全集には収められていても、文庫化はされなかった「戦時中の文章」を、セレクトしてま…

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スタンリー・キューブリック監督 『時計じかけのオレンジ』 : 半世紀前の「暴力とエロス」描写

映画評:スタンリー・キューブリック監督『時計じかけのオレンジ』(1972年・アメリカ映画) アンソニー・バージェスの近未来ディストピアSF小説を原作として、スタンリー…

年間読書人
2週間前
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〈宇山秀雄殺し〉の 謎を解く : 『宇山日出臣 追悼文集』の密室

書評:太田克史編『新本格ミステリはどのようにして生まれてきたのか? 編集者宇山日出臣追悼文集』(星海社) エディターネーム「宇山日出臣」、本名「宇山秀雄」が、「新本格ミステリの仕掛け人」などと呼ばれた名編集者であることについて、ここであらためて説明する必要などないだろう。本書を購読したり、ネットで本書の内容を確認したりするほどの人なら、宇山についてそれなりの予備知識を、あらかじめ持っているはずだからだ。 本書は内容は、次のとおり。 (1)序文(太田克史) (2)編集者・

クロード・シャブロル監督 『美しきセルジュ』 : 意外に褒めてもらえない「ヌーヴェル・ヴァーグ」作品の裏事情

映画評:クロード・シャブロル監督『美しきセルジュ』(1957年・フランス映画) 本作は『ヌーヴェル・ヴァーグの発火点』と呼ばれる作品の「ひとつ」だということは、もうひとつの「発火点」作品である短編作品『王手飛車取り』(ジャック・リヴェット監督)についてのレビューに書いておいた。 本作『美しきセルジュ』と、短編『王手飛車取り』の2作は、同じ監督の作品ではないにもかかわらず、どうして日本では抱き合わせでDVD化されているのかというと、それは両作が、それぞれの監督の作品としての

古田徹也 『謝罪論 謝るとは 何をすることなのか』 : 人の振り見て、わが振り直せ

書評:古田徹也『謝罪論 謝るとは何をすることなのか』(柏書房) 本書の「プロローグ」は、まず「子供に謝罪を教えることの難しさ」という、身近な話題から入る。その「プロローグ」の最初の見出しは「謝ることを、子どもにどう教える?」というものだ。 たしかに、「謝罪」というのは「形式」を伴うものだが、上の子供の事例のように、ただ「形式」さえあれば良いのではない(「形式が整っていなければならない」とも言えるだろう)。つまり、おのずとその「中身」が問われるのだから、当然むずかしい話にな

クリスチャン・タフドルップ監督 『胸騒ぎ』 : 日本人こそが見るべき映画

映画評:クリスチャン・タフドルップ監督『胸騒ぎ』(2022年、デンマーク・オランダ合作映画) 本作を紹介するネットニュースを読んで興味を持った。映画公開前のニュースだったから、ネタバレにならないように注意して書かれたものであり、どんな映画なのか、その正確なところはわからなかった。 だが、旅先で知り合った、デンマーク人夫婦とオランダ人夫婦の「文化的齟齬」か何かを扱ったホラー映画のようで、少なくとも超常現象だの怪物だのを扱った作品ではなく、繊細な心理ホラーのようだと、おおよそそ

サミュエル・R・ディレイニー 『ノヴァ』 : オリエンタリズム的「文学性」の勘違い

書評:サミュエル・R・ディレイニー『ノヴァ』(ハヤカワ文庫) サミュエル・R・ディレイニーが、アメリカにおける「ニュー・ウエーブSF」の代表選手のひとりだということくらいは、ずいぶん前から知っていた。今となっては、40年以上前の話である。 その頃すでに、「ニュー・ウエーブSF」の日本での紹介者として知られ、『季刊NW-SF』という雑誌まで出していたSF作家・山野浩一については、短編をいくつか読んでおり、ファンにもなっていたためだ。 山野の作風が「ニュー・ウエーブSF」を代

ジャック・リヴェット監督 『王手飛車取り』 : 作品自体を見てもらえない作品

映画評:ジャック・リヴェット監督『王手飛車取り』(1956年・短編フランス映画) 本作は、作品の内容や出来不出来にかかわりなく、「ヌーヴェル・ヴァーグの発火点となった作品」として「過大評価」される作品である。 本作を、そうした「背景」なしに、わざわざ見るような人は、少なくとも日本にはいないと、そう断じても良いだろう。そうでなければ、フランスのモノクロ短編映画など、映画研究者以外の誰が見るだろうか。 本作は、作品自体を見ようが見まいが、同じような褒め方しか出来ないような手合い

Kashmir 『てるみな 5』 : 日常のなかの異界へ

書評:Kashmir『てるみな 東京猫耳巡礼記(5)』(楽園コミックス・白泉社) 前の第4巻の刊行が2021年5月だったから、じつに3年ぶりの刊行である。 しかし、「「楽園」web 増刊」への、年に3本平均の不定期連載とは言え、『楽園 Le Paradis』本誌に別作品『ぱらのま』を連載している作者としては、ちょうど良いくらいの執筆ペースなのではないだろうか。 昔の「マンガ週刊誌連載」のような、異常な執筆ペースで、読み切り作品の連載などできるわけもなく、作品の品質を保つに

リンク集 「漫画 (生きづらさ・女の子と男の子・オタク・本好き・カワイイ系)+α」関連レビュー

【主たる収録作家】 (生きづらさ系) 模造クリスタル、藤生、長崎ライチ、平方イコルスン、三島芳治、つくみず 三堂マツリ、春場ねぎ、右腹、若林稔弥、柴、玉川重機 きづきあきら、ニコ・ニコルソン、安野モヨコ、にゃるら 道草晴子、水谷緑、やまだ紫、大白小蟹 (男の子系) 今井哲也、阿部共実、山口つばさ、小畑健&大場つぐみ、山本崇一朗 じゃんぽ〜る西 (本好き系) 施川ユウキ、COCO、久住昌之 (カワイイ系) 遠藤達哉、芹沢俊介(手塚治虫論)、藤井おでこ、西森裕之 小林拓己、赤井さ

リンク集 「異界行系の 漫画・小説・特撮ドラマ+ガロ系漫画」関連レビュー

【主な収録作家】 (漫画家) panpanya、Kashmir、コマツシンヤ、坂月さかな、三堂マツリ (特撮・怪獣系) 佐々木守、南洋一郎、大伴昌司、円谷プロ(円谷英二)、山崎貴、紀里谷和明 (小説家) 平山瑞穂、小田雅久仁、荻原浩、吉村萬壱、中野美代子 スティーブン・ミルハウザー (画家・イラストレーター) 小池結衣、藤田新策 (ガロ系漫画家) やまだ紫、白取千夏雄、近藤聡乃、久住昌之、竹熊健太郎、ハルオサン ○ ○ ○ ・ ・  ○ ○ ○  ○ ○ ○  ○

リンク集 「〈心って何?〉 ロボット・AI系 漫画・アニメ・小説・批評研究書」関連レビュー

【収録作家(作品)】 (ロボット系漫画) 矢寺圭太『ポンコツぽん子』 池辺葵『私にできることのすべて』、村上たかし『ピノ:PINO』 福井健太編『SFマンガ傑作選』 (収録作家:手塚治虫、松本零士、筒井康隆、萩尾望都、石ノ森章太郎、諸星大二郎、竹宮惠子、山田ミネコ、横山光輝、佐藤史生、佐々木淳子、高橋葉介、水樹和佳子、星野之宣) 今井哲也『ぼくらのよあけ』、アニメ映画版『ぼくらのよあけ』(黒川智之監督) (ロボット系アニメ) 今川泰宏監督 『ジャイアントロボ THE ANIM

リンク集 「漫画(SF・ホラー系)」関連レビュー

【主たる収録作家】 (SF系) 瀬野反人、今井哲也 福井健太編『SFマンガ傑作選』 (収録作家:手塚治虫、松本零士、筒井康隆、萩尾望都、石ノ森章太郎、諸星大二郎、竹宮惠子、山田ミネコ、横山光輝、佐藤史生、佐々木淳子、高橋葉介、水樹和佳子、星野之宣) 藤子・F・不二雄、山上たつひこ、山下和美、北村みなみ、山本和音、ごとうにも 魚豊 萩尾望都 〔萩尾望都関連 参考レビュー〕 栗本薫、稲垣足穂、ミッシェル・フーコー (ホラー系) 諸星大二郎、中山昌亮、宮澤ひしを、てぃーろんたろん

シドニー・ルメット監督 『十二人の怒れる男』 : 理想を信じた時代の「アメリカの良心」

映画評:シドニー・ルメット監督『十二人の怒れる男』(1957年・アメリカ映画) 本作は、子供の頃にテレビで視て感動した「思い出の作品」であり、今でも私の「実写映画のオールタイムベスト10」に入る傑作である。 本作の元型となったのは、脚本家レジナルド・ローズの脚本を、1話完結のテレビドラマとして制作したもので、これが大変な評判作となった。ところが、当時のテレビドラマは、実質的に「生放送」の一発放送であり、録画が製作者(テレビ局)サイドには残らなかった。 また、このテレビドラ

『井上俊之の作画遊蕩』 : アニメーター目線の問題提起とその限界

書評:井上俊之著・高瀬康司編著『井上俊之の作画遊蕩』(KADOKAWA) 本書は、ベテラン人気アニメーター井上俊之による対談集である。対談相手は、新旧のアニメーターを中心とした、アニメ制作関係者。 「編著」者の高瀬康司は、「アニメ研究家」とでも呼ぶべき人で、「作品論」ではなく「表現(方法)論」の側面からアニメを研究している人のようだ。 つまり、本書では、井上の対談に立ち合い、その対談記録をまとめる(文章化する)とともに、井上と自身の共通認識としての「現在のアニメ制作現場の

ロジェ・ヴァディム監督 『素直な悪女』 : 女の魅力 と「ヌーヴェル・ヴァーグ」

映画評:ロジェ・ヴァディム監督『素直な悪女』(1956年・フランス映画) 先日、レビューを書いた、SFファンタジー映画『バーバレラ』(1962年)を撮ったロジェ・ヴァディムの、監督デビュー作である。 どうしてこの映画を見たのか、その理由から書いていこう。 私が『バーバレラ』を見たのは、伝説的な「SF映画」としてであり、監督の方にはまったく興味がなかった。だから、『バーバレラ』を見てレビューを書くまでは、私は同作を「アメリカ映画」だとばかり思い込んでもいた。 なにしろ「SF

小林秀雄 『戦争について』 : 戦時における「時局迎合と 俗情との結託」

書評:小林秀雄『戦争について』(中公文庫) これまでは「小林秀雄の恥部」として、全集には収められていても、文庫化はされなかった「戦時中の文章」を、セレクトしてまとめたアンソロジーが本書である。 小林秀雄が、いかに「低レベル」の人間かが、とてもよくわかるので、小林秀雄批判派は無論のこと、擁護派にも必読の一書だ。 それにしても「ひどい」。 一一かく言う「小林秀雄ぎらい」の私でも、わざわざ全集(やその端本)を読むほど小林秀雄批判に熱心ではなかったため、読むのはもっぱら、文庫本に

スタンリー・キューブリック監督 『時計じかけのオレンジ』 : 半世紀前の「暴力とエロス」描写

映画評:スタンリー・キューブリック監督『時計じかけのオレンジ』(1972年・アメリカ映画) アンソニー・バージェスの近未来ディストピアSF小説を原作として、スタンリー・キューブリックが映画化した、1972年の作品。 「名作」の誉高い作品だが、いま見ると、いささか「評判だおれ」。 歴史的な価値は認めるものの、私には「いま見ても、古びることなく素晴らしい作品」だなどとは、歯が浮くから、とうてい言えない。 なにしろ、本作は1972年の作品で、日本では、大阪での最初の万国博覧会