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三十八歳。これからなのか?
ある歳上のBL作家の先輩がかけてくれた言葉がある。
「ばきさんはこれからの人じゃない」
申し訳ないながら、私はこの言葉が全く腹落ちしなかった。
これから? 私はもうすっかり「余生」の世界にいるとばかり思っているのに。
しかし人生百年時代。確かに三十八歳というのはまだまだ折り返しにも満たない年齢だ。まあ折り返しの五十歳を過ぎたあとの健康寿命は実に気になるところであるが、確かに三十八歳と
オオカミ陛下の思し召し
カザックに短い秋がやってきた。秋分を過ぎた頃からがくんと気温が下がり、明かり窓からは早くも冬の気配を感じさせる風が吹き込んでいる。枢機院にある自身の執務室で決裁の仕事にあたっていたザハールは、机上の小筆を転がした木枯らしに舌打ちをした。
ザハールは秋が嫌いだ。それは何故かと人に聞かれれば「越冬の準備に忙しく、まるで休む暇がないからだ」と答える。それも理由の一つではあるが、本当の理由ではない。