ゲームで旅に出よう!GWお薦めの90分超えフリーノベルゲーム・アドベンチャーゲーム!
前書き
今週末からゴールデンウィークですね!
今年は暑くなるという予報があったり、様々な事情で家で過ごす時間が多い方も少なくないかもしれません。
そこでおうちで過ごすために連休にお薦めの中編~長編のフリーノベルゲーム、アドベンチャーゲームを紹介します!90分以上の作品を集めましたので映画を見るつもりで物語や謎解きに浸ってみてはいかがでしょうか?
この記事では「ゲームでできる旅」をテーマとして
旅行気分を味わえる「空間の旅」
青春時代に戻れる「時間の旅」
じっくりと心に沁みこむ作品に触れる「心の旅」
に分けて紹介します!
【空間の旅】おうちで旅行気分を味わえる作品!
美しい北海道の風景とイケメン、そしてグルメを満喫! 「北限のアルバシリーズ」
北海道美瑛町が舞台の女性向けノベルゲームシリーズです。とはいえ男性でも問題なく楽しめるシリーズです。
ペンションで働くため北海道に移住した女性主人公と町の人々との交流、北海道の風景・グルメ、そして恋を描くノベルゲームシリーズとなっています。各季節ごとに章がありますが、各章はパラレルでつながりはないので好きな章から選んで大丈夫です。好きな季節で遊んでもいいですし、好みのイケメンを選んでもいいでしょう。
本作は優しい空気の中で丁寧にドラマが進むのが特徴です。優しいアルペジオ曲に彩られたゆったりとした時間を重ねるにつれて、主人公とお相手の関係性もドラマの中でゆっくりと育まれていきます。主人公も季節ごとのお相手も、非常に好人物でありながらも抱えているものがあって…という思わず応援したくなるような存在です。なのでその恋が一つの結末を迎えた時には思わず「うんうん」とペンションオーナーのおばあちゃんと共に頷いてしまうでしょう。ちなみに僕はこのおばあちゃん推しです。
主人公が料理人なので北海道の食材を使って料理をするシーンがふんだんにありますがそれが全ておいしそうで、しかも物語の展開にしっかり絡んでくるので感動しながらもお腹が空いてきます。
個人的にはテレビで定期的にある2~3時間のスペシャルドラマを見ているような感覚になる作品です。休日の昼間に再放送で見るドラマに近いゆったりとした時間。休日のテレビってグルメコーナー多かったりしますし、ゴールデンウィークという長い休み期間にゆったりと遊ぶには最適ではないでしょうか?とは言いつつ私もまだ春・夏しか遊べていないのでこのゴールデンウィークに秋の章を実況できればと思っています。
実在するとしか思えない架空の街で捜査して、飲んで、休んで 「マダム・ポプスキンの憂鬱」
架空の街「ローレル」を舞台として、地元の盟主である『マダム・ポプスキン』から40年前の出来事の調査を請け負うところから始まる推理アドベンチャーです。
今作、とにかくこの架空の街が作りこまれています。街がどんな歴史を刻んでいて、産業がどう変化して、その結果どこに何があって、そこには誰がいて…と、実在感がひしひしと伝わってきます。今作を遊べば「このゴールデンウィークはローレルに海外旅行に行ったぞ」と言っても過言でもない…?
実際のゲームプレイは朝・昼・夜の行動を決め、そこで会話やイベントを楽しんでいきます。。行動はかなり自由度が高く、本腰を入れて調査してもいいですし、「ゴールデンウィークに仕事なんかできるか!」と観光したりバーで飲んだりすることもできます。調査個所も多くどこから始めていいか悩むかもしれませんが調査の進捗や現状の目標が極めて分かりやすく整理されていて、適度に悩みながらも楽しく推理や調査ができるでしょう。
そしてこの実在感たっぷりの街に住む登場人物もまた魅力的で、爽やかで、ユーモアがあって、それでいてかっこいい物語が繰り広げられます。特に40年前の真相へ近づく度に「マダム・ポプスキン」の印象がどんどん変わっていくのが非常に面白いストーリーとなっています。
全体に上質という言葉がピッタリな作品です。ゴールデンウィークでちょっとした軽食、あるいは酔っても思考がぶれないならお酒を準備してゆっくり遊んでみるのはいかがでしょうか?
札幌の街を巡る美しく、不思議でエモい物語 「夕暮俱楽部」
急死した叔母を巡り、彼女が私的に行っていた診療所の閉院を告げるために開いたチャットアプリで過去の患者たちとのやりとりと叔母の事情を知っていくノベルゲームになります。
UI、背景、チャット風のセリフ画面、メニュー脇のちょっとしたメッセージと、とにかく端から端まで凝りに凝ったデザインが素晴らしく、思わず見惚れてしまいます。舞台が私の地元である札幌なこともあり、「ここはあそこを元ネタにしたのかな?」など楽しむことができますし、そうでなくてもこの映像美は必ず楽しめるでしょう。
物語はLINE風のチャットで進みますが、そこで繰り広げられる会話、特に叔母のセリフが非常に比喩や文学的表現に溢れているのが非常に読みごたえがあります。一言一言から優しさと真剣さ、重みを感じられ、そこから叔母や患者の人間性に触れていくことができるでしょう。その豊かさ、そして「これは全て過去のチャットであり、全ては過ぎたことなのだ」という事実と共に夕暮れの雰囲気にぴったりの抒情と切なさを与えてくれます。診療所の閉院を告げる時には過ぎたものがさらに過ぎ去るような、何ともいえない気持ちになるでしょう。そして物語が進むにつれて、話は予想外の方向へ向かいさらに叔母と言う人間に深く触れていくことになります。
一人の人間がそうであるように物語はどこか曖昧で、だからこそ厳しくも優しく、楽しくも切なく、現実と非現実が溶け合うような、不思議で、でもビビッドで、輪郭はぼやけつつはっきりとして、そんな、きっと忘れられない物語となっています。
お洒落で、でもやりごたえたっぷりの謎解き「DISCOLO(U)R」
私はロンドンが好きなのですが、「DISCOLO(U)R」は架空のロンドンを舞台とした謎解きゲームとなっています。探偵である主人公が調査に訪れた洋館からの脱出をめざす2D脱出ゲームです。
謎解きは暗号や探索など、スタンダードな脱出ゲームとなっています。ただ、そこに西洋の洋館という世界観に準じた雰囲気たっぷりのフレイバーが文章、アイテムの一つ一つにまぶされています。そのお洒落さは異国情緒という言葉がピッタリのけれん味と味わいに溢れています。
謎解きは結構骨があり、正直私も何度かつまづいたのですが必要とあればゲーム内で段階を踏んだヒントや答えも見ることができますのでそこは安心して遊んでほしいです。ただ、答えを見て解いた時は本当に悔しかったので、苦痛にならないレベルまでは自分で探索し右往左往しながら考えて解けた時の快感を味わってほしいです。
また、今作というか作者様の作品はいい意味でカッコつけているのが特徴です。謎を解き、洋館の奥へと向かうたびに少しずつ明かされる物語も非常に辛いものでありながら同時に美学を感じさせますし、結末も探偵ものらしくバッチリ決めてくれます。ゴールデンウィークにしっかり謎解きに挑みたいという方には絶対のお薦めです。
【時間の旅】青春時代に帰るような作品!
むせかえるほどに甘酸っぱい「俺はこの夏に決める」
転校してきた主人公が、幼馴染やクラスメイトとの交流を通じて思い出と想いを積み重ね、最後にある「決断」をするというノベルゲームとなっています。
私がよく使う表現なのですが、青春とは「大人になってみればなんてこともない小さな出来事や人間関係が世界の全てに思える時期」だと思っています。今作は細やかで笑いとシリアスの緩急がついたやりとり、そして大事なところではしっかりと尽くされる「言葉」によってそんな青春のむせかえるような甘酸っぱさが立ち上がる作品となっています。話し言葉の延長線上にある文体も「青春」という今作のテーマに合っています。
そして今作は最後に「決断」をします。おそらくみなさんが想像している通りの決断をするのですが、そこに喜びだけではなく選択の「苦味」が描かれているのも非常に良かったです。
登場人物、主人公やヒロイン、誰一人とも単純ないいやつではなく、何か癖や嫌なところもあって、でもだからこそ生身の人間らしさがあって、自分の青春時代を呼び覚ますような匂い立つ感触がありました。「あいつのことなんとなく気になるんだよな…これ、好きってことなのかな」ってなったことがある方は、いやもしかしたらそんな経験がない方もその感触がリフレインしてくるような、そんな一作です。
エンタメの特盛!笑えてちょっとエッチで熱い!「とつげきスパッツァー」
バトル用のスパッツを履くことで発現するスパワーを用いてパフォーマンス対決をする「スパッツバトル」のコーチとなって教え子と共に歩む青春を描いたホビアニ風バカゲー寄りギャルゲーとなっています。
この段階で要素が多いのですが、今作はかつ丼に牛皿とカレーとハンバーグとたこさんウインナーとスパッツを乗っけたかのように、スポコン要素、定番だったりシュールだったりお下劣(誉め言葉)だったりするギャグ、恋愛、性癖、そしてあらゆる角度からのパロディの嵐がこれでもかというほどに押し寄せてきます。個人的に笑いを取るというのは普段の会話でも難しいのにノベルゲームだとさらに困難と思っているので素直に何度も笑えるのは本当にすごいなと感じます。
さらに今作がいいのは単純に要素がデカ盛りになっているのではそれがちゃんとまとまって一つの物語になっていることです。それは例えばキメるべきところはしっかりキメてくれたり、絵のかわいさやかっこよさ、全体のテンポのよさなど、作品としてクオリティが高いことにあると思っています。その積み重ねとして今作はとにかく熱い物語になっていきます。ぜひこのゴールデンウィークにおバカでちょっとエッチで笑えて、でも熱い思い出を彼女たちと作っていただければと思いまスパッツ!
圧倒的な文章と伏線回収で彩られるひと夏の超常現象「回顧、来ぬ」
蚕で有名な山間部の町を舞台に、祭りと女神を巡る怪現象の謎を解き明かす民俗ミステリーと怪異ホラーが合わさったノベルゲームとなっています。
今作はとにかく文章力がとんでもないです。
「回顧、来ぬ」を「かいこ、きぬ(蚕、絹)」と読ませるところから始まり、地の文一つ一つから細やかな文章表現でどんどん情緒を揺さぶっていきます。かといって表現が難しすぎたり、展開が難解になっていることはないのも本当にすごいです。あまりに見事なので本来なら私が大好きな文章をここに書きたいところですがぜひご自身でプレイして味わってもらいたいです。
ストーリーは読み進めていくとどんどん意外な方向に展開し、驚かされます。しかし実はそれらは序盤から巧妙に張り巡らされた伏線の先にあることがほとんどです。「えっそれただのギャグじゃないの!?」「よく考えたらあいつこの段階でこんなこと言ってたじゃん!」と驚かされ、前述の文章そのものの面白さも合わり読み進めていくと本当に止まらなくなっていきます。冗談抜きでここ数年出会ったあらゆるジャンルの物語で最高レベルのストーリーだと思っています。また、映像も美しかったりキッチュだったりチープだったりパロディだったりと様々な表現を取り入れているので飽きることなく最後まで楽しんでいけます。
そして本作を「時間の旅」カテゴリーに入れていることからもわかる通り、今作は少年少女のジュブナイルストーリーでもあります。事態に巻き込まれる中で変化と成長を遂げた姿を見せると、その姿を見守ってきたプレイヤーは「ああ、成長したねぇ」と拍手を送りたくなるでしょう。
【心の旅】初夏の夜に遊びたい心を動かす作品たち
新年度で心が疲れたなら遊んでほしい「うつろぎさぁかす」
この世界の「隙間」にあるサーカスに迷い込んだ主人公の少女が、サーカスの団員との交流を通じて団員たちの心、そして自らの心の真実に触れていくアドベンチャーゲームになっています。途中で謎解きや探索もありますが、多少即死トラップがあるもののこまめにセーブをしていけば詰まることなく進んでいけるでしょう。
かわいらしく美しいけど不気味で不条理さのあるグラフィック、ループするオルゴール調のBGM、セリフや各所に置かれた本の文章のセンスの良さ、その全てから「世界の隙間にある謎のサーカス」という世界観が徹底して表現されていて、その不思議だけど優しい世界にどんどん惹きこまれていきます。
ストーリーが進むごとに団員の正体やその悩み・苦しみ、あるいは主人公の心に寄り添う展開が続きます。そこで開示される悩みや苦しみは私たちが日常で感じるそれに通じるところがかなり多く、まるで自分の悩みに寄り添ってもらうような感じを覚えました。そして真相にたどり着いたとき、深く息を突くような感動と切なさを受けたことを覚えています。新年度が始まり、新しい日々に疲れを感じている方は今作をプレイして心の中に一つ優しいものをもらうというのはいかがでしょうか?
今年のGWも暑い!そんな夜にぴったりのホラー「神石師」
神石師(じしゃくし)の一族に生まれた少女と霊感の強い刑事のバディが怪奇現象の捜査に向かうことで恐怖や宿命に向き合う心霊ホラーアドベンチャーとなります。
今作、とにかく怖いです……。
フリーゲームの世界においてホラーというのは一大ジャンルですが、声を出したり「やめて…」と言ってしまうほど怖がってしまう作品は珍しいです。okaさんの求める恐怖がどうも私にはツボに入る怖さのようです。パニックホラー的なジャンプスケアなどでの脅かし演出は少ないですが、水の表現や、ちょっとした不安の表現、ゲーム側がこちらを見てくるような演出、なによりあの「音」!あの「音」!細やかで工夫に溢れたホラー表現で心霊ホラー、オカルトホラー、いわばJホラー的な「湿った恐怖」をこれでもかと堪能させてくれます。
ゲームとしては閉鎖空間での謎解きや探索をしつつ、調査や脱出を目指していくことになります。一つの謎や怪異現象を解くのにじっくりと段階を踏む必要があります。その結果として事態の深刻さと心霊を祓ったときの「本当に祓った!」という実感を与えてくれます。二人を交互に操作したりとゲーム性も多様に楽しめますし、非常にやり応えのある作品です。
一方、そんな深刻な事態の中でも登場人物は非常に明るい存在が目立ちます。特に神石師の少女である綾のかわいらしさと、彼女をめぐる結構きつい宿命においても明るさを忘れず立ち向かっていく姿は非常に印象的で、「この事態を彼女と共に打開しなきゃ!」と思わせてくれます。今年も暑いとされるゴールデンウィークの夜に、じっとりとした恐怖で肝を冷やしてみるのはいかがでしょうか。
連休の長い夜にヤンデレ義弟との終われない日々を「赤い糸の解き方.exe」
ヤンデレの義弟に言いくるめられるループから逃れようとするノベルゲームです。
スクリーンショットや「.exe」がつくタイトルからもわかるようにゲームやデジタルコンテンツであることが強烈に意識された演出が非常に特徴的で、ぞくぞくするようなプレイ体験を味わえます。
とにかくループから抜け出すのが大変で、ループの中で試行錯誤していると、プレイヤーである自分自身までループの中に閉じ込められているような感覚を味わってくらくらします。
演出とセリフ、そして間に少しずつ挟まっていく物語で「なぜ義弟はループさせてくるのか?」「彼はなぜヤンデレになったのか」「自分に今何が起きているのか?」がわかり、それにつれて物語はどんどん辛く、救いのないものになります。だからこそ、あらゆる意味でこの状況から抜け出さなければならないと思わされます。ループから抜け出すヒントを見つけた時は嬉しさと、「これ、この先に行って、自分と彼は大丈夫か…?」と思ったことを覚えています。
結果として事情を知ることになってしまうからこそ自分を閉じ込めた存在である義弟にも複雑に絡み合った思いを抱くでしょう。そのヤンデレっぷりも本当に見事なまでのヤンデレっぷりで、かなりきつい表現はあるのですが連休の夜更かしに、深い思い出を共に作りたい方にお薦めです。
後書き
いかがでしたでしょうか?どれも自信を持ってお薦めできる作品ですのでぜひ遊んでみてください!皆様のゴールデンウィークが素晴らしいものになる一助となれば幸いです。
手前味噌ですが紹介した作品には個別レビューを書いているものもあります。よければ読んでいただきさらなる参考としていただければ幸いです。
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