眠れない夜には異世界のサーカス団員と交流するフリーアドベンチャーゲーム「うつろぎさぁかす」の優しい世界に触れよう
新年度。新しい環境に飛び込んだり今の環境の中でまた頑張っていこうと思ったり、色々ある時期です。私も大きな変化がありましたが、それは次の記事で書きます。
そういう時にちょっと嫌なことや失敗があったりして、夜眠れなくなるなんてこともあるかもしれません。そんな時にプレイしてもらいたいのが今回紹介するフリーゲーム「うつろぎさぁかす」です。
物思いに耽りながら、ほんの少しの救いを与えてくれて、少しの時間自分のネガティブな心を手放させてくれる、ハードだけれども優しい、少しのホラー要素のあるアドベンチャーゲームです。
・あらすじ
・ゲーム内容
シンプルな2Dアドベンチャーです。人と会話をし、ちょっとした謎解きをしながらストーリーを堪能していきます。時間制限イベントなどはないので、自分のペースでゆっくりと物語を進めていけると思います。
エンディングは複数ありますが、その分岐が訪れるのは最終盤ですし、ある方法で注意喚起してくれるので、比較的簡単に全ての分岐を見ることができるでしょう。ただ即死でゲームオーバー(バッドエンドなのでそれも見ておくのがいいでしょう)になる選択肢や収集要素があるので、色々なところで細かくセーブをした方がいいでしょう。
・おすすめポイント①ハードでドライなところもあるけど、だからこそ優しいストーリー
主人公のシホはどこの世界とも違う「隙間」のような場所にある謎の「サーカス」に迷い込んでしまいます。団長のアドバイスにより、記憶を取り戻し、自分の帰るべき場所を思い出すまで、このサーカスで団員と交流をしながら過ごしていくことになります。
しかし、彼女が来てから、サーカス、そして団員には変化が起きます。そしてそれを解決するためにシホが活躍することになります。また、同時にシホは自らの記憶に連なるような夢を見るようになっていきます。
イベントを通じて、団員やシホの内面、それぞれなぜこのサーカスに来たのか、そしてその個性的な姿にはどんな意味があるのかを知っていくことになります。このゲームの最大の魅力はまさにここ!そこで知る団員、そしてシホの姿がとても胸に迫るものであるということだと思っています。
彼らの姿、悩みは、現実の私たちの悩みや苦しみとリンクするところが多く、人によっては本当に「自分と同じだ…」と思うこともあるかもしれません。それゆえに、プレイしていて辛くなる方もいるかと思います。
ただ、ストーリー、あるいはこの「うつろぎさぁかす」という世界それ自体が、ある意味苦しみをある意味ドライに描いているとこもあるけれど、だからこそ優しく包み込む構造になっているのです。
その苦しみを思いっきり、それこそゲーム的なミラクルなどで解決するということではなく、ただ、一時の雨を避ける止まり木のような存在になってくれる。それがこの「うつろぎさぁかす」だと思っています。
もしこのゲームの描写がもっとドライなら人の苦しみに対して真剣に作られていないと見えるでしょうし、もっとウェットなら、逆にゲームの現実のギャップ、つまり「ゲームだからこんな風にうまくいくんだよね」とむしろプレイヤーを冷めさせてしまうかもしれません。
このゲームはそのバランスが非常に巧みだと思っていて、それゆえに、眠れない夜とか、ちょっと物思いに耽りたいときに非常に適しているゲームだと感じます。
・おすすめポイント②徹底的に構築された世界
記事の合間に挟んだスクショを見ていただいてもわかると思うのですが、とにかく世界観の作りこみがすごいです。
異世界にあるサーカス劇場という非常に閉じた空間が完璧に表現されています。ドット絵がとにかく豊かで美しく、優しく、同時に身体的な生々しさや不気味さえも感じさせる世界が表現されていて、ストーリーにさらに没入させてくれますし、それによって作家のメッセージをこちらにより伝えてくれる効果があります。
また、このゲームをプレイしていただいたり、実況を見たりすれば必ず印象に残るのがBGMです。賑やかではないけれど美しく、かわいらしく、優しく、でも怖さも受けるBGMは作者様のTwitterによると自作ということで、このこだわりが世界観構築をさらに徹底してくれています。プレイ中にちょっと手を止めて、温かい飲み物でも飲みながら、BGMを聴いて一息ついてみるのもいい癒しになるでしょう。
・おすすめポイント③隅から隅まで味わい尽くしたくなる「言葉」たち
このゲームのストーリー、そして世界観をさらに彩ってくれるのが、「言葉」です。各々のキャラクターのセリフが、本人のキャラクター性や背景をよく表現しています。プレイしていると心にその世界観が言葉を通じてしみ込んでくるようです。
ゲームのストーリーが進むごとにセリフはどんどん変わっていきますので、時間はかかりますが全てのシーンで、次のイベントに行く前に団員全員と会話するようにするとよりこの作品を楽しめるでしょう。
またこのゲームで印象に残る言葉はセリフにとどまりません。このゲームをプレイするなら、本棚を始めとしたオブジェクトをできる限り調べてほしいのです。前述した世界観をより深めるための文章が各所に散りばめられていて、よりこの世界に没頭できるはずです。
今回、改めて一からプレイしたのですが、「本棚にこういう本が入っているということは、何を表しているんだろう」など考えながらプレイする体験ができていました。そのように思考を巡らせる時間を過ごしているうちに、気づけば悩みを手放す時間を手に入れて、少しスッキリすることができました。
また、実は前半のセリフや細かい文章の中に後半の展開を示唆するものが結構あることに気づいて、そのストーリーテリングや言葉選びの巧みさ、一周目では感じきれなかった感動がありました。プレイする方も、あるいはすでにプレイされていてこの記事を読んでいる方も2周目のプレイをしてみるとより感じることがあると思います!こういう時にこのような短編のゲームは2周目がとても遊びやすいのが魅力ですよね。
・こんな人にお薦め!
・あとがき
プレイしていてゲームの世界にすっと浸れるゲームです。まだまだ話していない魅力があります!たとえば僕は主人公シホのなんともいえないアンニュイな雰囲気がかなり好きですし、他の団員もいいデザインとキャラクターをしています。BGM自作も含めて、これが初制作で二か月で作ったというのは本当に驚くばかりです。本当に改めてプレイできてとてもよかったですね。
もちろんこのゲームのストーリーに関してはできる限りネタバレを避けていますが、本当はネタバレ込みでプレイ済みの人と話してみたいなって強く思います。いつか何らかの形でネタバレ込みの記事なりトークができたら嬉しいですね!
次回のお薦め記事は今話題のインディーゲーム「NEEDY GIRL OVERDOSE」になります!!
まさに絶賛プレイ中ですが、このゲームはやはり自分が書くべきだと強く感じました。多分最近フリーゲームを薦める時に使った形式とは違う、まさに「語り」になるの思いますので、その時までフォローして待っていただければ嬉しいです。
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