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「センサー付き家電 カセイ1号・2号」

  
先日の『清原愛のGoing 愛 Way』で、朗読された作品です。

よろしくお願いします。

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家電メーカーの研究開発室に所属する秋野は、
新型の自動家事システム「カセイ」シリーズの
開発に余念がなかった。
 
「まさか、帰ってきたら料理が出来てるなんて、
智子の奴、驚くだろうな」
 
新しい家電の試作品は、自宅で使ってみて不具合を見る。
家電メーカーあるあるだ。
妻の智子は最初、
妙に大きい冷蔵庫や人型のロボットを気味悪がったが、
今では「カセイちゃん」などと呼んで可愛がっている。
 
カセイ1号は、見た目はただの冷蔵庫だが、
センサーによって食材を把握してデータ化する。
これにリンクするのが、
炊事用人型ロボット「カセイ2号」だ。
希望のレシピを指示すると、
家にある食材から料理を作ってくれる。
 
今日は「カセイ1号2号」に追加された
新機能の試運転である。
秋野は、会社の研究室から遠隔で、
冷蔵庫にある我が家の食材を確認した。
 
「え~と、まず冷蔵庫にある食材は、
牛肉200グラムに、ハム5枚、牛乳1本。野菜ははいはい。
十分だね。それではいよいよ調味料を見てみるかな・・・」
 
新機能は、「カセイ1号」のセンサー範囲の拡大である。
冷蔵庫の中だけでなく、パントリーやダイニング、
流しの物入れまで精査して、
食材の量から不足している調味料まで把握してくれる。
それらが遠隔で分かれば、「カセイ2号」に
調理の指示を出しても混乱させることは無い。
以前のバージョンでは、調味料不足を見落として
とんでもない味の料理が出来てしまったことがあったが、
もうそんな心配は無くなる。
 
遠隔操作用のパソコン画面には、
秋野家の平面図が示されている
センサーは、冷蔵庫の中身を確かめた後、
パントリーをスキャンして、食材を表示した。
 
「え? パントリーに『肉43㎏』だって。 
そんな大量に肉がある訳ないじゃないか
センサーの故障かな」
 
秋野が見つめる中、『肉43㎏』は、
パントリーの在庫から、流しの在庫に変わった。
 
「ああそうか、これは智子だな。もう帰ってたんだ。
人間まで『肉』として感知するんじゃあ、
センサーの修正が必要だな」
 
秋野はチェックリストに、
人間と食材の識別を行うこと、と書き込み、
モニター画面を観察した。
冷蔵庫の在庫である赤ワインが
流しの在庫に変わるところだった。
 
「あ。冷蔵庫から昨日開けたワインを取り出したな。
一人で飲むつもりか?」
 
画面では『肉43㎏』、つまり妻の表示が、
流しから冷蔵庫、さらには2階の寝室に移動していった。
 
「おやおや。ベッドでお酒ですか?
昼間からいいご身分ですな、奥様」
 
秋野は妻の生活を推理している気分になって微笑んだ。
センサーが『肉43㎏』を追いかけるように
『寝室の食材』という項目を表示した。
 
寝室には『肉65㎏』と表示されている。
 
「何で寝室に肉がそんなにあるんだ?
『肉65㎏』といえばちょうど大人の男くらいだけど」
 
そう言えば今朝、智子は妙に嬉しそうに俺を送り出した。
そして、しつこく帰宅時間を聞いてきたことを
秋野は思い出した」
 
続いて寝室の在庫は、『肉65㎏』に
『肉43㎏』が合わさり、『肉108㎏』に変わった。
 
秋野は、カセイ2号を遠隔操作して、
料理のオーダーを入力した。
 
「料理はハンバーグ。
寝室にある『肉108㎏』を細かくミンチにして
下ごしらえをする」
 
カセイ2号は、内蔵している包丁を取り出し、
静かに寝室に入っていった。
下ごしらえをする為に。
 
 
おわり

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