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JTCは「現場の営業の人」がDXビジネス発想に強みがある件

はじめに

筆者は生命保険会社のCDOとして、社内のデジタル戦略や執行支援をする傍ら、顧問先やパートナー企業のDX支援、自治体向けのビジネス発想支援や官公庁のDX推進委員を務めており、日本全体のDX推進や人材育成のあり方を考える活動に携わっている。また、全国でDXを自分ごと化する「DXビジネス発想ワークショップ」を5年以上実施している。

社内向け、社外向け両方にワークショップを実施しているが、弊社の東海地域の支社で現場の営業職に実施したところ、実に面白いアイデアが出てきて興味深かった。ビジネスアイデアには、東海地域地場の商材や体験型消費が多く組み込まれていた。下呂温泉もそうだが、地域でDXビジネス研修をすると、地場商品にオリジナリティがあり差別化された価値が出てきて楽しくなる。これらをふるさと納税返礼品にすると地域支援になるので、DXビジネス教育が活きてくるのだ。


これを受け、筆者は「現場を知っている、商品や観光資源やお客さんを知っている」人にDXビジネスを学んでもらうのが良いと思った。JTC(日本の伝統的大企業)では、本社からDX人材教育というケースが多いが、現場人材を育成してこそ意味があると考え、他の地域支社にも声をかけている最中だ。

顧客接点を持つ人への「DX人材育成」

DXの推進には、デジタル技術に関する知識経験を持つ人材が不可欠だ。しかし、それだけでは十分ではない。DXは単なるIT化ではなく、ビジネスモデルや業務プロセスの変革を伴うため、ビジネスに関する深い理解と現場感覚を持つ人材が求められる。

筆者は、現場の営業職こそDXビジネスに強いと確信した。彼女ら(生命保険の営業は女性が圧倒的に多い)は長年の営業経験から、顧客のニーズや市場の動向を肌で感じ取っており、それをデジタル技術と結び付けることで、新しい価値を生み出すアイデアを出せるということであろう。

現場感覚とデジタル技術の融合

営業職がDXビジネスに強いと思う理由は、現場感覚とビジネスモデルとデジタルの融合にある。彼女らは顧客との対話を通じて、顧客が抱える課題や潜在的なニーズを発見し、それをビジネスモデルとデジタル技術で解決する方法に結びつけやすい環境にある。

例えば、ある営業管理職は、茶作りの魅力を体験型イベントとして提供することを提案し、以下のようなアイデアを思いついた。

①体験型イベント

茶畑で、茶農家の指導のもと、茶摘み体験や茶葉の手揉み体験を提供。参加者は、茶作りの歴史や文化、そして先人の知恵を学ぶ。

②お土産

体験イベントで手揉みした茶葉を使った、オリジナルブレンドの茶葉セットをお土産として販売。パッケージには伝統的な茶作りの工程や、茶農家のこだわりを説明する紙を添える。

③ネット直販とサブスクリプション

体験イベントの参加者に、定期的に茶葉セットを自宅に届けるサブスクリプションサービスを提供。ウェブサイトでは、茶畑の様子や茶農家の方々の日常を紹介するブログを掲載し、購入者が茶葉の生産背景(プロセスエコノミーと呼ばれる)を知ることができる。

このアイデアは、観光資源である茶畑と、茶作りの技術や知恵を活用することで、消費者に特別な体験を提供する。また、お土産販売とサブスクリプションサービスにより、一過性の収益だけでなく、継続的な収益源を確保することができる。地場商品とデジタルと体験型消費を上手く使っている。

この事例から得られる「DX人材の育成方法」

地場営業職の事例から、どのようにしてDX人材を育成していけば良いのかを考えてみよう。ポイントは現場感覚、ビジネスモデルやデジタル技術、多様な人材の融合だ。

1. 現場経験を積ませる

デジタル人材には、現場でのビジネス経験を積ませることが重要だ。営業担当でなくても消費者や顧客と対話を重ねることで、ビジネスの理解が深まり、ビジネスモデルやデジタル技術の活用アイデアが生まれてくる。

2. デジタル技術の教育を行う

現場感覚を持つ人材に、ビジネスモデルやデジタル技術の教育を行うことが必要だ。基礎的なデジタルビジネスモデルやITリテラシー、AI、IoT、ビッグデータなどの最新技術まで、幅広い知識を身に付けさせよう。

3. 多様なバックグラウンドの人材を集める

今回の現場人材と筆者のようなCDOが組み合わさることで新しいものが生まれるベースができる。DX成功には、営業、企画、エンジニアリングなど、多様なバックグラウンドを持つ人材を集めることが効果的だ。異なる視点や経験を持つ人材が協働することで、新しいアイデアが生まれやすくなる。

まとめ

DXビジネス発想には現場感覚とビジネスモデル、デジタル技術の融合が重要である。DX人材の育成には、現場経験を積ませること、ビジネスモデルやデジタル技術の教育を行うこと、多様なバックグラウンドの人材を集めることが有効だ。現場人材にDX人材育成を行えば、現場のニーズに合ったDXを推進でき、現場の主体性が育ち、現場の創意工夫を生かすことができる。

JTCがDXを推進し、グローバルな競争に勝ち残っていくためには、現場人材も巻き込んでDX人材育成に取り組んでいく必要があるだろう。筆者も引き続き、現場の人にDXビジネスアイデアワークショップを実施していくつもりである。なお、最後に現場の受講者の声を紹介しておく。

<受講者の声>

1 楽しい研修でした、ありがとうございました。

2 普段考えることの少ない分野でしたが、意外と自分の生活と関わりが深いんだと気付かされました

3 実際にDXを活用していく難しさと生成AIの優秀さに驚きました

4 身近なものにデジタルが活用されていると意識するようになりました。

5 色んな発想があって、聞いてて楽しくもあり勉強にもなりました。ありがとうございました。

6 もう少し時間を掛けて学びたかったです。

7 普段と違った視点で考察出来た点がとても良かったです

8 あったらいいなと、考えるところに夢があり、皆とのワークも勉強になりました

9 デジタル、DXというと小難しい印象でしたが、グループワークをしながら、調べたり話しながら研修を進めていただいたことで、理解が深まりました

10 普段の生活をより良くすることが できることを知りました。

11 普段の業務とは全く違うことを考えたり、話し合うことは新鮮で良かった。こういった体験をどのように現在の業務に落とし込むかが難しいと感じる

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