『従征緬甸日記』⑦

【原文】
二月初六日、至猛域。札営山上、賊兵大集。四面列木寨、囲繞甚密。時師行五月、転戦数千里。兵力已疲、且糧尽馬缺、難与決戦計。惟潰囲而出、始不為所困。将軍密遣人至山下、探有小路、離賊営稍遠、令官兵乗潜行。
【語釈】
・猛域 地名。
・囲繞 まわりを取り囲むこと。
・缺 不足する。
・与 関与する。
・潰囲 「囲みを潰す」と開いて読んだ
【書き下し】
二月初六日、猛域に至る。山上に札営し、賊兵大いに集まる。四面木寨列なり、囲繞すること甚だ密なり。時師行するに五月、数千里を転戦す。兵力已に疲れ、且つ糧尽き馬缺し、決戦の計に与すること難し。惟だ囲を潰して出で、困する所にならざるを始むのみ。将軍密に人を遣わして山下に至らしめ、小路有るを探さしむ。賊営離れ稍遠く、官兵をして乗りて潜行せしむ。
【現代語訳】
二月六日に、猛域に到着した。山上に野営したところ、敵の兵が多く集まってきた。四方は木の砦がつらなり、まわりを取り囲むことが非常に密であった。その頃には行軍して五か月経っており、数千里を転戦してきた。兵の力は既に疲れ、なおかつ兵糧が尽き馬も不足し、決戦の計画に関与することは難しかった。ただ包囲を潰して出て、困窮することにならないようにするだけであった。将軍はひそかに人を派遣して山のふもとに移動させ、小さい路がないか探させた。敵の野営地は離れておりやや遠く、官兵に馬に乗らせて潜行させた。

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