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じっくりコトコトnote

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(ほぼ)毎日更新している『毎日note』から、じっくりコトコト丁寧に書いたnoteをまとめたマガジンです! どこから読めばいいのかわからないときもこちらから読んでもらえたら。
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#エッセイ

「自分を許す」ことのむずかしさをほどいてくれた、2冊の読書体験

「ひとりで生きていけるようにならなくてはならない」と心の底でずっと思っていました。人に頼れず、なんでも自分でできるようにならなくてはならないと。そしてそれゆえに、人と比べて落ち込んで、劣等感に苛まれる。 そんな自分に気づいて、受け止めて、少しは生きやすくなったと思っていたけれど、その奥にはまだ違う思いがありました。 それは、「今の自分をずっと許せないでいる」ということ。 それに気づくきっかけになったのが、土門蘭さんの『死ぬまで生きる日記』。そして、「許すためにどうしてい

戻ってきた のんちゃん #かくつなぐめぐる

「書くこと」を通じて出会った仲間たちがエッセイでバトンをつなぐマガジン『かく、つなぐ、めぐる。』。10月のキーワードは「宇宙人」と「憂鬱」です。最初と最後の段落にそれぞれの言葉を入れ、11人の"走者"たちが順次記事を公開します。 突如、空からUFOに乗ってやってきた宇宙人に攫われてしまいたい。「遅刻だ遅刻だ」と懐中時計片手に走っていく白ウサギの後を追いかけて、穴の中に落ちていきたい。 頭の中で非現実の世界へ逃走を試みようとも、中学校へと続く通学路から逃れることはできなかっ

恋愛相談ループ #かくつなぐめぐる

あのとき、まるで台風の真ん中にいるみたいだった。巻き起こる暴風雨のせいで、周りで起こっていることが認識できない、聞く耳を持てない状態。逆にわたしが大声をあげても、周りには届かない。 行きつけのカフェ、斜め前のテーブル席で女性2人が向かい合って会話をしている。たぶん大学生くらい。 どうやら、恋愛相談をしているらしい。女性の1人がヒートアップしてきて、そこそこ大きめの声量で話している。心なしか、目が血走っているように見えた。ぼんやりしていると、結構ダイレクトに言葉が耳に入って

8月15日 #かくつなぐめぐる

車の後部座席から降り、夏の強い日差しに目を細める。額から流れる汗を、Tシャツの袖に押し付けた。ファンデーションがつかないことを祈る。 2019年の8月、祖母が旅立って1年経ったころのこと。そのまま、先にゆっくりとお墓に向かって歩いている祖父のあとを追う。その後ろ姿が、なんだか愛しいと思った。彼の隣で、背の低い祖母が一緒に歩いている姿を想像しながら、スマートフォンで写真を撮る。 *** 「例年以上の猛暑日となりそうです」、「今日の熱中症予防を見てみましょう」……テレビの天