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ゲーム体験を楽しめる漫画 シャングリラ・フロンティア

すごく好きな小説が、最近漫画化されたので是非読んでみて欲しい。
その名は

シャングリラ・フロンティア
~クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす~

クソゲー愛好家の少年サンラクが、神ゲーを遊びつくしていくという漫画である。

原作小説はコチラ
">マンガはコチラ

内容に触れていくとネタバレを縦横無尽にしてしまいそうなので、
ここでは、なぜこの物語が私の琴線に触れるのかを中心に話したいと思う。

ゲームをすることは、自分でない何者かになった記憶を持つことである。

それは、野球少年になった記憶
プロ野球選手になれるという島に行き
友情を育み、切磋琢磨をしながら実力をつけていってプロに合格した。

それは、パイロットになった記憶。
黄色い機体から逃げ回りながら、
あるいは広域殲滅兵器の間隙を掻い潜りながら、
敵の首脳部を攻め落とし、世界の危機を救った。

それは、圧倒的戦力差をひっくり返した記憶。
多数、多種類の敵に包囲されながら、
攻撃武器の選定、敵出現位置の特定をし、試行回数で乱数に祈りを捧げ…
たった一人で、たまに二人で世界から敵を駆逐した。

それは、勇者を返り討ちにした記憶。
ツルハシを振り回し、食物連鎖の関係にあるモンスターを育み、繁殖させ、強い種族に進化させて…
魔物部屋を作り、たまに偉い人を囮にしながら、世界征服を成し遂げた。

それは、調教師になった記憶。
モンスターを育て、冒険し、時には遊んだりしながら
次の代に、その次の代に能力を継承していき
最終的に世界1位のモンスターを作り上げた。

こうやって一つの物語を終えたあと、
さらに遊びたいとアレンジを加えて様々な体験をした。

モブキャラみたいな12人の兄弟と一緒に、史上最強の軍団と戦った。
中古で性能の低い機体で戦場を蹂躙した。
HPの最大値を上げずにオワタ式プレイで大軍を葬った。
勇者の亡骸を再利用して、黄金色の王様一人で勇者軍団を倒し切った。
一番初めのモンスターでストーリーをクリアした。

あるいは、ゲーム内のエンドコンテンツを遊んでいった。

それは、ダンジョンの奥深くにいる強敵と戦った記憶。

全体回復魔法を使うと全体即死カウンターを使われ負けた。
背後に回るとカウンターをもらって死んだ。
近づくと一定時間行動不能になる場に踏み込んでしまい、なすすべもなく倒された。
40秒ごとに一定時間無敵になって手がつけられなくなった。

全体回復魔法を封印した。
背後に回らないようにした。
行動停止を逆手にとって回避に利用した。
敵の行動が優しくなることを祈った。

傾向を知り、対策をたて、何度も挑戦して、やがて倒した。

私にとって、ゲームをプレイするとは、”体験を楽しむ”ことだった。

このような、ゲームを体験をしていく過程を共有していく漫画。それが、シャングリラ・フロンティアである。
サンラクというプレイヤーが、様々な世界を遊んできた記憶・体験を、一つのゲームに注ぎ込んでいく過程を読ませる物語だ。
そのサンラクの物語を読みながら、貴方自身のゲーム体験の追憶が重なり、貴方だけのシャングリラ・フロンティアの読後感が醸成されていく。そういう素敵な物語だと感じている。

一つのゲームを、いろいろな形で遊び尽くしてきた人なら、きっと楽しく読んでいけると思う。
とくに、システムの穴をつき、新たな攻略法を作りあげたりするタイプの人間には面白く読めるのではなかろうか。

余談…シャングリラ・フロンティアの好きなところ

・VRゲームが実装されたらこうなるよね?というSF味
・TRPGでダイスを振って行動が決まっていくような、安価スレのような、そういうランダム味を感じるうねりあるストーリー展開
・″俺は悪くねぇっ!だって天が誅せよっていったんだ!″と、別ゲーの記憶との混同で美味しく感じられる言葉のセンスの数々
・サンラクという個人のあり方を多面的に眺められるので事実上の人生追体験記
所属する組織…学校、家の中、各種ゲームの中、あるいは人々の噂の中…によって立ち位置やありようが変わる様を小説で味わえる現実VR感
・マガポケ掲示板が、作中掲示板の出張状態に一部なっており、眺めていて楽しい。
ディプスロが現れたのは笑った
・KOTY大賞記事を読んで来た民なら、あー…(ニチャア…)となる様々なクソゲーの設定。

マンガ版シャンフロの良いところ

・鉛筆ネキの顔がよい
・小説では語り尽くせない感情の機微が絵で伝わる
・鉛筆ネキの顔がどの瞬間もキマっているという原作記述再現の作画
・絵と言葉で説得力を高めるマンガとしての強さ

ところで

・取扱説明書が90P
 取説をみないと分からない(見てわかるとは言っていない)パラメータの数々
・Bボタンが決定でAボタンがキャンセル
・兵站の用意から始めないと詰む
 適切なものを持たせないと戦わなくなる
・給与を与えないと兵士が逃亡する
 潤沢な給与にすると財政が死ぬ
・味方を殺す気しかない特訓の数々
・各種バグが盛り沢山
 射程距離がバグっている
 特定の手順を踏むことで集中砲火が可能
の某ゲームはSFの世界線ではどういう判定になるのか、私気になります!

さらに蛇足

難易度理不尽ゲーを体験していると、作中作への親しみが倍増する(気がする)

・素早さのステータスが足らないと行動前に死ぬことが多数
→開幕に全員が麻痺させられて、動けないまま倒される(中盤ボス)

・場の属性を利用して強い攻撃を飛ばしてくる(中盤ボス)
→無属性でしか放てない最強魔法でオーバーキルしてくる(終盤ボス)

・ターン毎にステータスが上昇し、チンタラしてると倒せなくなる(終盤ボス)
・ターン毎に即死率が上昇していき、六連続攻撃でチームが半壊。さらに常時一人が死亡状態であることを強いられる(終盤ボス)

・色々ヤバいラスボス
行動毎に最大HPの2割ダメージを受ける″場″で戦う
3連続魔法攻撃。場の属性がなくなってしまったら全体即死魔法発動
10回連続攻撃→次ターン行動で全体即死攻撃

みたいなゲームを体験しているので、シャングリラ・フロンティアのクソゲーも楽しめそうだなと純粋に思えてしまう。
これからも生えてくるであろう面白ゲームの設定も、本筋と同じくらい楽しみにしている

付録類の感想

本誌1万文字感想
某お兄さんが何であのクランの上位陣にいたのかが非常にスッキリしたし、類は友を呼ぶんだなって…
スタンド使いは惹かれあう…これは世界を超える真理…

単行本付録感想
めっちゃ良いストーリーだった。場面の描写も多く、これ最後に単行本付録小説の漫画化されないかなぁ…絵でこの惨事をみてみたい

エキスパンションパス
人間関係の相関図が広がるんじゃぁ…
あと、一般的な人の一般的な攻略進行のパターンがわかり、サンラクの異常さが…ね?

面白かったら投げ銭お願いしまーす! 投げられたら投げ返す主義です