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アメリカン・ミュージック・ヒストリー第8章(1970年代全般・・・その6)
(7) ロックの肥大化
1970年代も後半に入ると、1,000万枚前後のセールスを記録するアルバムが、フリートウッド・マックの「噂」、ピーター・フランプトンの「カムズ・アライヴ」、スティーヴィー・ワンダー「キー・オブ・ライフ」、イーグルス「ホテルカリフォルニア」「ロングラン」と相次ぎ、1976年から従来のゴールド・ディスクに加えてプラチナ・ディスクが設定されました。因みに最初のプラチナ・レコードは、イーグルスの「グレイテスト・ヒット」でした。
こうした利益率の高いアルバムの高セールスは、レコード会社に莫大な利益をもたらし、かつてない活況を呈することになりましたが、皮肉なことにこの時期以降は、60年代後半から70年代前半にかけてのブルースロック、ハード・ロックやプログレッシヴ・ロック等が急激に衰退し、そうしたミュージシャン達までもが売れるロック路線へと走り、産業ロックと言われる時代に突入していきました。
(8) パンク・ロックの出現
こうして、本来のロック音楽のスピリットが失われていく状況になると、正に「歴史は繰り返す」で現状のロックに反旗を翻す若者達が出てきます。
1977年6月18日、全英ヒットチャートでパンク・ロックのセックス・ピストルズの「ゴッド・セイヴ・ザ・クイーン」が第1位になります。1960年代ビートルズを契機としてロックは、大きく発展していきましたが、前章で触れたとおり原点ともいえる反社会的なメッセージやスピリットが薄れ、産業化しすぎた状況や社会への不満が、音楽シーンを揺さぶりました。
そもそもの発端はニューヨークで60年代のヴェルヴェット・アンダーグラウンドに影響を受けたテレヴィジョン、ラモーンズ、ブロンディ、トーキング・ヘッズ等で、当時のアメリカのキッス、エアロ・スミスやイギリスのクイーン等、ショーアップされたロックが全盛を迎えてきた中で、商業主義にとらわれないアーティスティックで自由な音楽性がロンドンで大きく花開きました。この流れは、瞬く間に全英の若者たちに広がり、セックス・ピストルズに続きクラッシュ、ダムド、ジャムと言った後続のバンドが相次ぎ、シーンを席捲していくことになりました。
*パブ・ロック
イギリスにおけるパンク・ロック爆発の土壌として、忘れてはならないのが、イギリス文化の一つであるパブで、主に労働者階級向けにシンプルなロック等を演奏していた所謂パブ・ロックバンドの存在です。
パブ・ロックの代表的なアーティストとしては、ブリンズリー・シュウォーツ、ドクター・フィールグッド、デイヴ・エドモンズ、ニック・ロウ、そして若きエルヴィス・コステロや後のクラッシュのジョージ・ストラマーも活動していました。
パブ・ロックからパンク・ロックへの流れは、70年代中頃のイギリスでも、プログレやハード・ロックのマンネリ化やイギリス病と言われた経済停滞気が続き、若者の社会的不安が増大していたことも大きな要因であったのではないかと思います。
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