見出し画像

【中学受験】3年生〜6年生まででいつどんな勉強をすればいいか?後編

スポットの学習や現状持つ課題への対策という観点ではなく、3年生〜6年生という長期スパンの立ち回りとしてどうするかという観点から書いている今回の記事ですが、思いの外長くなってしまったので前半と後半に分けることにしました。
今回はその後編として5,6年生で身につけたい知識や姿勢についてまとめていきたいと思います。

5年生で身につけたい国語の力

前回の記事で、僕が学年ごとにそれぞれどのようなコンセプトを置いているかを書きました。それが次の通りです。

3年生 言語世界と生活世界の拡張と連結
4年生 学習の基本姿勢の習慣化
5年生 深い読解能力の育成
6年生 受験に合格する解答力の習得

3年生で言語や活字を身近なものにして、4年生で国語学習の基礎となる姿勢を徹底的に身につける。
その次の段階の5年生で身につける能力として、僕は「自分の世界より広い価値観にアクセスする力」というものを想定しています。

入試では通常の小学6年生では思考しないような論理展開の論説文を読んだり、自分とは遠くかけ離れた境遇にある主人公が登場する物語文を読んだりしなければなりません。
こうしたときに大事になってくる事が、自分の想像を超える世界を知ろうとできる姿勢です。
それを身につけていくのが、僕の中での5年生で最も重要な事柄です。

僕はそれを「深い読解能力の育成」と表現するわけですが、これは①客観視する力、②要約力、③洞察力の3点に分けられると考えています。
これらを1年間かけて養成し、自分の思考、価値観、想像を超える内容に出会った時に、なんとか食らいついて咀嚼し、少しずつ理解しようとする力を養うことが、5年生の目標です。

①に関しては日頃の生活環境の中でも身につく事だと思っています。
この力を生活の中で換言するなら「他者意識」。
家の中ではわがままな暴君でも許されるかもしれませんが、一歩外に出たら常に「その行為は周囲にどう受け止められるか?」を意識しなければならないのが大人です。
この視点を5年生くらいから身につける事ができれば、読解という作業にも非常にポジティブに作用するというのが僕の持論。
そのため、僕は5年生の声の大きさ、言葉選び、会話における主語述語など、授業内での立ち振る舞いに関して姑のごとき小言の数々を意識的に言うようにしています(笑)
「自分のこの発言は教室全体にどういう影響を与え、それにはどういう価値があるのか」を常に考えることは、「筆者のこの主張はどういう意味で、それは全体としてどういう意図から発せられたものなのか」を考える能力に直結すると思うからです。

②の要約力については、6年生になったときに文章を速く読むために必要な基盤を作るイメージです。
昨年の開成中学校の文章量が10000字オーバーであることに象徴されるように、昨今の中学入試は超長文化傾向にあります(ちなみに昨年の京都の公立高校中期選抜の文章量は約2000字です)
もちろん学校によっては短い文章で深い内容理解を求める場合もあるのですが、基本的にSAPIXのマンスリーテスト、四谷の月例・公開・合不合、首都圏模試に五ツ木模試etc...と、どの試験も総じて長文化傾向にあるので、ある程度の読むスピードがないとそもそも実力を測定する事ができない状態になってしまいます。
こうした超長文に対応するために必要なスキルが緩急をつけた読みなのですが、それを身につけるためには要約の練習が有効です。

僕の授業ではこうした緩急のある読み方を身につけるべく、小学5年生から300字ほどの文章を100字にまとめる作業と、1000前後の物語を3分で内容をざっと把握して、本文を見返さずに簡単な設問に答えるというパターンプラクティスの課題を課しています。
こうした教材を通して要約力を身につけるのが2点目。

最後の洞察力に関しては物事をより細かく見る視点です。
日本語は自立語と付属語からなるわけですが、とかく読解が苦手な子は付属語に対する意識が低いように感じられます。
自分の理解力を超える文章に出会った時に必要なのは、それを理解するためにひとつでも多くの作者から与えられた情報を拾おうとする姿勢です。
その姿勢の根本にあるのが洞察力なわけです。

たとえば四谷大塚の予習シリーズであれば、特に改訂版は(そのあからさまな難関シフトへの是非はともかく)かなり解説がつくりこまれていて、あれを徹底的に読み込むことで深い洞察力が養われると思うのですが、いわゆる他のメジャーどころが扱うテキストの解説では洞察力を身につけるトレーニングにはなりません(うちの教材も含め...笑)。
もちろん、こうした教材を扱う殆どの国語の先生は授業内での説明や補足プリントでこれらの洞察力を鍛える解説をしていますのですが、自主学習で身につけようとするのはなかなか難しい印象です。
8ビットから16ビットへ、16ビットから32ビットへというように、一年かけて少しずつ世界に対する解像度を上げていくのが、5年生で必要な3つ目のスキルという印象です。

6年生で身につけたい国語の力

最後に6年生になるわけですが、夏期講習以降の後半はほとんど入試に適応する力をつけていくことになるので、長期的なスパンでの能力開発という意味で言えばやる事はそれほど多くありません。
ひと言で言えば「問題を解く能力を鍛える」ことに尽きるわけですが、これには①設問要求を読む力②相場感③論理的思考力3点を特に意識します。

①は設問を細部まで理解する力です。
いってしまえば5年生のユニットでも書いた「洞察力」なのですが、6年生では具体的な解法に落とし込むために、設問を読むときに洞察力を用います(ちなみに僕は6年生に入るまで、いわゆる「解き方」というものは一切授業で扱いません)
理由説明なのか内容説明なのか?条件はなんなのか?傍線の主語述語関係は押さえたか?指示語・接続語は明らかにしたか?etc...
こういった設問にちりばめられたヒントをひとつでも多く引き出そうとする姿勢が①です。

②の相場感は空欄補充系の問題を解く際に必要な能力です。
おなじ「○字以内の語句を探せ」でも、自分の頭の中に正解のイメージを持って、さらには本文のどの辺にありそうかを想定しながら探せるかどうかで、一問あたりの処理速度は大きく変わってきます(おそらく今回の合不合で点数が芳しくなかった人は、ここが苦手なのではないでしょうか?)。
その相場感にはa文脈b品詞c周囲の語句などがあるわけですが、同じ「語句を探す」でも「とにかく5字を探さなければ」という漠然と宝探しをする人と、「前半の主張に近く、マイナスなイメージの、名詞を修飾する5字を探さなければ」という相場感を持って答えを探す人では正解に辿り着く速度は当然異なります。
問題に出くわしたとき、こうした想定力を身につけるのが相場感です。

③の論理的思考力は選択問題のスムーズな処理に必要です。
難関校ほど選択肢が長く、それぞれの選択肢の正誤を判断するのが難しい傾向にあります。
また、要素は全て合致していても条件や因果関係が違うという選択肢も、この10年でかなり増えてきました(内容理解をせずに要素だけみて本文に出てきた言葉との比較による"消去法"で選択肢を切る子は間違いなくこれで引っかかります)
こうした問題に対応するために必要なのが論理的思考なのですが、そこにはa相同表現、b対比表現、c因果関係の把握という3点が挙げられます。
僕の授業では、授業の頭でa〜cでできた短文を、2文を1文に、あるいは1文を2文にする練習をして鍛えるようにしていますが、こうした論理的思考力は夏以降の伸びに大きく影響を与えます。

おわりに

こうした力を身につけつつ、直前期にはさらに問題を解く際に実用的な能力を身につけてもらう(僕は5つの武器と表していますが、その話はまた今度書きたいと思います)のですが、長期スパンの国語力という観点では上記のような想定です。
もちろんさまざまな指導がありますし、そのどれもに意図はあると思うので、僕のこの想定が正しいかどうか、何よりこれを読んでいただいている保護者の方のお子さまに合うかどうかはわかりません。
しかし、どこの塾でもこうした長期の想定はあり(多分聞けばお話ししてくれると思います)、だからこそ国語という実感が湧きづらい科目でも振り返ると成長を感じられるようなカリキュラムになっているわけです。
「何をしたらいいか分からない」というお悩みをお持ちの保護者の方に対して、少しでも参考になれば幸いです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?