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小学4年生向け!心情の間接描写特訓ドリル(理論篇)

小学4年生の保護者の方と入塾面談等をしていると、「うちの子、登場人物の気持ちが答えられなくて...」なんて相談をよく受けます。
心情を問われた時に書けないということの原因はいくつかありますが、4年生の前半の時期でこの悩みを持っている生徒さんに圧倒的に多いのが、間接描写から心情を捉えるのが苦手というパターン。
例えば「バタンと音を立てて扉を閉めて出ていった」という表現に線が引かれていたとして、その時の心情がわからない、或いは「バタンと音を立てて扉を閉める気持ち。」のように、行動+〜気持ち。」でまとめてしまうという形です。
あくまで主観ですが、こういうタイプの子は「国語は本文に答えがある」と習ってきて、なまじ3年生くらいまでは国語がそこそこ取れていた子に多いように思います。

4年生で物語文が苦手になる理由

なぜ3年生までは点数が取れていたのに4年生から下がってしまうのか?
僕はこの原因は2つあると思っています。
ひとつは模試の出題比率の原因です。
もちろん全ての模試がそうだというわけではありませんが、いくつかの模試では、3年生まではそれ以降と比べて圧倒的に知識分野が多いということがあります。
そのため、読解力というよりはキチンと知識を身につけられているかが大事になってくる。
4年生になってこうした模試から読解メインになったために点数が落ちてしまう。
それほど大きな要因とは言えないにしろ、こうした要因も小さくないように思います。

ふたつ目は4年生からは心情の間接描写が増えてくるという問題です。
3年生までに扱う物語文は、「うれしい」「楽しい」というように、圧倒的に心情が直接書かれている事が多かった。
それが4年生になると行動から心情を読み取らなければならない場合が増えてきます。
これが原因で急に物語文が苦手になるというパターンです。
(因みに3年生前半と後半で物語文が苦手になった子は、事象と心情を結びつけるのが苦手な可能性があります。)

難易度別!?文章の作りの違いの分析


例えば、似たような場面でも次のようにすると難易度が上がっていきます。

難易度A(小学3年生前半)
「ありがとう」
「あっ、そんなお礼なんて言われる程のことじゃないよ。」
そう言いながら、僕はメグから「ありがとう」と言われて嬉しくなった。

難易度B(小学3年生後半)
「ありがとう」
「あっ、そんなお礼なんて言われる程のことじゃないよ。」
そう言いながらも僕は嬉しくてたまらなかった。

難易度C(小学4年生前半)
「ありがとう」
「あっ、そんなお礼なんて言われる程のことじゃないよ。」
そう言いながら、雄太の口元は思わず緩んだ。

いかがでしょうか?
それぞれシチュエーションは同じですが、その後の書かれ方が異なります。
難易度Aでは、最後の文が【きっかけ+心情の直接描写】で構成されていました。
したがって、ここを書き出せば心情の説明になります。
それに対して難易度Bの場合、最後の文が【心情の直接描写】ではあるものの、きっかけは描かれていません。そのため、二文前の【「ありがとう」と言われた】というきっかけを抽出して、自分で繋ぎ合わせなければなりません。
一要素を抽出する事ができない子は、ここでつまずきがちです。
(ここでつまずく子は、①きっかけと心情を別々に抜き出して、②一つに繋げるというトレーニングが効果的です。)
さらに難易度Cになってくると、今度は心情が【口元が思わず緩んだ】という間接描写から捉えなければなりません。
その上で、その心情のきっかけとなった部分を見つけ出し、繋がるという作業が必要になる。
この、①心情を客観的に類推するという作業と②きっかけと心情を論理的に結ぶという2つの作業が重なるのが心情の間接描写を問う問題。
こうした思考の処理過程がまだその子の中にインストールされていないために、この手の問題が解けなくなるわけです。
しかも、「本文に答えがある」なんて言われれば、とにかく本文の中から「書き出せばマルになる」答えを探そうとしてしまいます。
でも、間接描写はそこから自分の頭の中で適する心情を導かなければならないので、どれだけ探したところで答えは無いわけです。
(それどころか、「ある」と思って答えを探すうちは絶対に答えに辿り着けません)
これが僕が考える間接描写が苦手な子の理由です。
そして、こうした間接描写は4年生になると急激に増えてくる。
だからこそ、4年生になって急に解けなくなったという状態が発生するのだというのが僕の考えです。
因みに余談ですが、難易度Cからさらに問題を難しくしようとすれば、①きっかけが離れているor②間接描写を抽象的にするというパターンがあります。

難易度D①(きっかけが離れたパターン)
「ありがとう」
「えっ、なんのこと?」
「あの、昨日の...」
「ああ、あの事か。そんなの気にしなくていいよ。ちょうど通りがかっただけだし、時間もたまたま空いていたし、帰り道も同じ方向だったからさ。」
「偶然でもなんでもいいよ。私道に迷っていて本当に不安だったんだ。そんな時ユウタ君が声をかけてくれて、本当にホッとしたんだ。」
「よせよ。ほんとお礼なんて言われる程のことじゃないんだ。」
そう言いながらもユウタの口元は思わず緩んでいた。

難易度D②(間接描写の抽象度が高いパターン)
「ありがとう」
「あっ、そんなお礼なんて言われる程のことじゃないよ。」
ユウタはメグににやけた顔を見られないように慌ててキャップを目深に被った。

心情の間接描写が読み取れるようになるために

どうでしょう?少しだけ難しく感じませんか?
さらに難しくしたければ、D①とD②を組み合わせれば良いわけです(入試問題はだいたいそういう難易度です)

心情描写が苦手、あるいは急に物語文が苦手になったということは漠然とわかっても、なかなか言葉にする機会は無いように思います。
この辺を明らかにした上で問題に向き合うと、ゆっくりとですが確実に成績に繋がって行くはずです。
この記事がそうした言語化のきっかけとなれば幸いですし、もしここに課題があったと思った方は、次の記事で簡単なパターンプラクティスを作っていますので、試していただけたらと思います。

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